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未来の会

「医師の働き方」の実態と改善策を考える

「医師の働き方」の実態と改善策を考える
医師・健康を守り、

政府が通常国会最大の重要法案と位置付ける働き方改革関連法案。その一つ、労働基準法改正案には時間外労働への上限規制を導入する。医師には同法施行後5年の猶予期間があるが、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(座長=岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は2月末にまとめた「中間的な論点整理」と「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」で、他職種への業務移管(タスク・シフティング)、医師の労働時間管理、36協定の自己点検など、医療機関が現状でも取り組める対策を示した。

 このような中、全国保険医団体連合会が3月15日、衆議院第2議員会館内で「医師の働き方を考える国会内集会」を開いた。最初に登壇した住江憲勇会長は「過労死・過労自殺を生み出す勤務環境の改善を最優先とし、現場の実態を踏まえた『医師の働き方改革』を求めます」という国会議員に送付する要望書を公表。具体的には①長時間労働の是正、労基法に基づく労働環境整備に、政府・厚労省として全力を尽くすこと②必要医師数が確保されるまで計画的に医師養成を行うこと、診療報酬を拡充すること③現場の医師の要望を踏まえつつも、安易な業務移管とならないよう特に注意を払うこと④有識者検討会のメンバーに勤務医労働者を補充・追加すること──の4項目を要望した。

 続いて、ゲストとして参加した日本医学会連合労働環境検討委員会委員の本田宏・NPO法人医療制度研究会副理事長が「実効性ある具体的対策導入・実施の時」と題して講演。業務移管の具体的な方法として「フィジシャン・アシスタント(PA)」の医療現場への導入を提案した。PAとは一定レベルの診断や治療ができる医療補助職のこと。米国や英国では以前からある資格で、日本では厚労省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(座長=渋谷健司・東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)が2017年4月に報告書の中で創設を提言している。ナース・プラクティショナー(NP:診療看護師)と似た職種だが、NPは看護職がスキルアップしてなれるのに対し、PAは看護職ではない職種からもなれる資格なので、看護職のさらなる業務負担増大を回避できる。本田氏は「PAを分かりやすく言えば、数年の経験を積み精通した研修医のイメージ」と話す。

 全国医師ユニオンの植山直人代表は「『勤務医労働実態調査2017』から見える勤務医の働き方の現状と改善への道」のテーマで登壇。同調査の結果を基に医師の勤務の実態を報告。

 交代制勤務については「なし」が83.8%と、12年の調査の結果と比べてもほとんど改善されていなかった。休日に関しては、1カ月に1日も休みが取れていない医師が約1割いた。労働基準法が定める4週間に4日以上の休みを取っていない医師も約3割おり、「健康面からも医療安全の面からも大きな問題」と植山氏。当直明け後も約8割の医師が通常勤務を行っていた。当直明けの連続勤務により、約8割の医師が集中力・判断力の低下を、約7割が診療上のミスの増加を指摘。約4割が健康に不安を持ち、約6割が最近職場を辞めたいと感じていると回答。また、医師の診療科の偏在に労働環境が関係しているとの回答が9割以上にのぼった。

 改善してほしい事としては「完全休日を増やす」がトップ。また、改善に有効な方法としては「医師数の増員」「無駄な業務を減らす」「クラークなどの医療補助職の増員」がベスト3に挙がった。

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