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第102回 労働政策めぐり官邸・塩崎氏・厚労官僚が三つどもえ

第102回 労働政策めぐり官邸・塩崎氏・厚労官僚が三つどもえ

厚生労働省は来年度、労働関係部局の組織を大幅に再編する。職業能力開発局など2局を廃止し、「雇用環境・均等局(仮称)」を新設することが柱で、安倍政権が掲げる「働き方改革」の推進を狙いとしている。しかし、労働関連を中心に、首相官邸が同省の頭越しに政策を進めていることへの焦りも透けて見える。

 廃止=▽職業能力開発局▽雇用均等・児童家庭局

 新設=▽人材開発局▽雇用環境・均等局▽子ども家庭局

 「まだ内密に願います」。8月23日午後、そうクギを刺して厚労省が自民党厚生族幹部に配った組織再編案のペーパーは、瞬く間にマスコミに伝わった。取材に追われた同省幹部は「公表しないで、と言ったのに。資料は回収すればよかった」と不満を口にしながらも、表情はにこやかだった。

 新組織となる予定の雇用環境・均等局は、安倍晋三首相が力を入れる同一労働・同一賃金の推進、長時間労働の是正などを手掛ける。さらに、今の労働基準局が担当している労働者の安全確保や、職業安定局が担ってきた再就職支援などの業務も受け持つ。また、新設の人材開発局は若者の就労支援をし、子ども家庭局は保育全般を所管する。いずれも安倍政権が最大の課題と位置付ける働き方改革や、子育て支援を推進することが目的だ。

 ただ、今回の組織再編には、厚労省の別の本音もにじむ。

 「最低賃金の過去最大の引き上げは官邸が主導した。子育て支援では内閣官房に官僚を集め、働き方改革では、加藤(勝信)さんという担当大臣を置いた。なぜだ、という思いは正直ある」。厚労省幹部は悔しげに語る。参院選でなりをひそめていた厚労省分割案について、提言した自民党の小泉進次郎農林部会長らが諦めていないことも不安材料だという。

 官邸が厚労省外しに走る一因は、同省が労働政策の決定の場として労働政策審議会(労政審)を重視していることにある。労使と有識者が同数の労政審は、労使の合意がないと話が進まず、首相周辺は「時間ばかり食う」とぼやく。実際、官邸は9月2日に働き方改革の実動部隊となる「働き方改革実現推進室」を内閣官房に設置し、室長には警察庁出身の杉田和博官房副長官を据えた。近く、安倍首相を議長とする有識者会議も発足させる。こちらは使用者側2人に対し、労働側1人。残りは閣僚8人と5人の有識者で、官邸主導で進むことが明白だ。

 「加藤担当相の仕事は本来、俺の仕事」。そう考える塩崎恭久厚労相は、官邸に対抗すべく組織改革や長時間労働の見直しを手掛ける有識者会議の設置などを矢継ぎ早に打ち出している。厚労官僚とタッグを組み、組織防衛に乗り出した格好だ。

 それでも、塩崎氏と厚労官僚が思い描く政策にはズレがある。官僚側は労働者保護に重きを置くのに対し、塩崎氏は解雇をしやすくするための規制緩和など、企業寄りの成長路線も重視しているのだ。

 一方で、加藤担当相は「今回は働き手の側に立った改革だ」との考えをにじませており、官邸、塩崎氏、厚労官僚3者の立場は複雑に入り組んでいる。

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