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未来の会

「医療広告規制」下での情報発信

「医療広告規制」下での情報発信
ルールを押さえた上で自院のブランド構築に繋げる

6月1日、医療機関のウェブサイトで虚偽や誇大な広告を罰則付きで禁止する改正医療法が施行された。それに伴い、新たな「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」も施行された。発端となったのは、美容医療の消費者トラブルの増加で、患者を保護することを目的にした規制である。

 昨今はスマートフォンの普及などもあり、日本ではインターネットの人口普及率は83%を超え(総務省)、ウェブサイトなしの情報発信は考えにくい。かようにウェブサイトを通じた発信は、病院のマーケティングはもちろん、患者の利便性のためにも有用なツールである。

 医療広告の近年の歴史を振り返ってみよう。

 2012年6月に、厚生労働省「医療情報の提供のあり方等に関する検討会」が、報告書を発表した。この検討会は、2006年小泉政権下の医療制度改革で、2008年に発足した。

 医療界は一般に排他的で、情報公開には熱心でない印象があり、患者側からは公開を求める声が根強い。小泉改革の柱の一つが情報提供であり、それを促進することで市場における競争原理が働き、医療の質と共に効率も高まるのではないかというのが、その趣旨だった。

 2009年の民主党への政権交代後も、2011年には検討会が再開された。

 検討会には、二つの目的があった。まず、医療機能情報の提供について、患者に対して医療提供者のパフォーマンス、それも可能であれば質についての情報を提供して、より良い医療が選択できるよう支援する方策を探ること。もう一つが、医療に関する広告をどう規制すべきかを検討することだ。

 医療法の「広告」とは、「不特定多数の者に知らせるもの」とされ、一般的に考えられる広告媒体を利用するものは原則禁止された。しかし、医療機関のホームページについては、通常は「患者自らが情報を得るためにアクセスするもの」と解釈され、一般に医療法の広告規制の対象にならないとされた。

 広告規制については、利用者保護の原則の下に、現行のポジティブリスト方式を引き続き採用した。ポジティブリスト方式とは、医療に関する広告は原則禁止という前提の下、広告可能な事項を規定する方式である。医師名、診療科名、提供される医療の内容などが、限定的に認められた事項となっており、違反には罰則規定が設けられた。

 明らかに悪質な物は犯罪行為として処罰の対象だが、一歩手前のグレーゾーンのものをどうするべきかが課題となっていた。

保険診療であっても過大広告は規制対象 

 これに伴い、医療機関のホームページ作成のためのガイドラインが作成された。これらの狙いは、インプラントや美容整形など、主として自由診療の規制が中心だったが、保険診療であっても過大広告はあり得るので、対象に含められた。

 総務省によれば、日本でインターネットを利用している人の数は、2015年末に1億46万人。人口普及率では83.0%。 国民の約10人に8人が使っている。

 13〜59歳までは9割以上の人が利用しているが、70歳以上になると利用している人は半分程度になる。とは言っても、家族などが医療情報を得て、高齢者の医療機関の選択に繋げることもある。

 横浜市健康福祉局「横浜市民の医療に関する意識調査」(2012年)によれば、長期の療養を受ける医療機関を選ぶための情報の入手方法としては、「かかりつけ医・最初に受診した医療機関に聞く」(62.0%)がトップだが、「家族・友人・知人に聞く」(49.1%)に次いで、「インターネットで調べる」(48.7%)があり、「雑誌、専門情報誌、書籍(ランキング本など)で調べる」(7.0%)に比べてはるかに多かった。

 また、医療機関を選ぶにあたって知りたい事は何か、という問いでは、「医療機関の対応可能な疾患・治療法」(40.4%)、「自宅・職場などからの距離や交通の便」(39.6%)、「医療機関・医師の治療実績(治癒率、手術件数など)」(36.2%)、「家族や知人など周囲の人からの評判」(27.7%)、「医療機関の設備(医療機器など)」(14.7%)が続いた。

 患者は、治療実績などアウトカムについての情報を欲していることがある。先の検討会の際も、消費者側の委員から「医療の質に直結するアウトカムを載せてほしい」という意見があったが、時期尚早でもあり、プロセスを中心に情報提供することに決まった経緯がある。

ガイドラインのポイントは誘引性と特定性 

 さて、今回の「医療広告ガイドライン」は、患者や地域住民などの利用者向けの広告を対象としたもので、それ以外は対象にならない。例えば、職員募集ページ、地域連携のための医療機関向けのページなどは、ガイドラインの規制は受けない。

 ポイントは、誘引性、特定性の2点を満たした場合に、広告に該当するものと判断されることだ。

 誘引性とは、患者の受診などを誘引する意図があることを指す。また、特定性とは、医業もしくは歯科医業を提供する者の氏名もしくは名称または病院若しくは診療所の名称が特定可能であることである。

 すなわち、特定の医療機関への誘引を目的としたものが、規制対象となるということである。医療機関のウェブサイトのみならず、インターネット上のバナー広告やリスティング広告(例えば「がん治療」で検索した際にスポンサーとして表示されるもの)、また、記事風広告(費用を負担して記事の掲載を依頼することにより患者等を誘引)などは、全て規制に含められる。

 体験談も、医療機関が広告料などの費用負担などの便宜を図って掲載を依頼している場合は、広告となる。SNSの個人のページや第三者が運営するいわゆる口コミサイトなどへの体験談の掲載は、誘引性がなければ広告とは見なさない。

 そして、虚偽広告、比較優良広告(他の病院または診療所と比較して優良である旨の広告)、誇大広告は禁止される。

 医療機関からの情報発信を躊躇する声も聞かれる。しかし、情報提供の流れは、医療機関のマーケティングにおいても必定である。自院の情報発信はルールを押さえて、ブランド構築に繋げるべきものだ。

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