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未来の会

第217回 厚労省ウォッチング
「人口戦略」に慄く「外国人頼み」の年金制度

第217回 厚労省ウォッチング「人口戦略」に慄く「外国人頼み」の年金制度

高市早苗政権の外国人受け入れに関するスタンスが厚生労働省年金局を身構えさせている。岸田文雄政権時代の2024年に同省が実施した年金財政検証は「外国人頼み」で年金制度を維持出来る、との結果だったのに、現政権は外国人受け入れに否定的な政策を打ち出すと見做されているからだ。

 年金財政検証は5年に1度、経済状況や出生数等を踏まえ、日本の公的年金制度が概ね100年に亘って安定的に運営出来るかを見通す、言わば年金の定期健康診断だ。このままでは年金制度を維持出来ないと判断された場合は保険料アップや給付カットを検討する。厚生年金の所得代替率(現役世代の手取額に占めるモデル世帯の年金受給額の割合、24年度は61・2%)が、法律で約束した50%を維持出来るか否かをチェックする役割を果たす。

 出生数のみならず、外国人の受け入れ数に関しては、直近の24年の検証でも「国立社会保障・人口問題研究所」が23年に公表した日本の将来推計人口をベースとしている。今後、年間16万4000人の入国超過が続き、70年には人口の10%超が外国人(939万人)になるとの見立てだ。19年の財政検証では、年間の入国超過を7万人と見ていたが、実績は22年が19万1000人、23年は24万人と想定を大きく上回っている。

 24年検証の見通しでは、今後年間の入国超過が16万4000人で推移すると、所得代替率は57年度でも50・4%を維持出来るという。減る一方の日本人に代わり、流入した外国人が年金保険料を負担してくれる事を前提としている。但し、入国超過が6万9000人に止まる見立ての場合、所得代替率は62年度に47・7%迄低下する。

 年金制度を将来に亘って維持出来るという見通しは、勿論外国人の増加だけでなく女性や高齢者の就労が進む事も前提条件の1つだ。人口推計は過去5年の実績値を元に弾いており、恣意的に外国人の数を多く見積もった訳でもない。それでも出生率の向上が見込めない少子化社会が進む中、財政検証の公表時に、年金局内では「結果的に外国人の増加に年金財政は助けられた」(幹部)との声が聞かれた。

 だが、近年は欧州同様、日本国内でも一部で外国人排斥の論調が勢い付いている。自由民主党・日本維新の会の連立政権である高市政権は、外国人受け入れ数の目標等〝量的マネジメントを含めた〟「人口戦略」を26年度中に策定すると連立合意書に盛り込んでいる。外国人の受け入れに関してルール遵守を徹底し、違法行為や社会保障制度等の悪用への対応強化を目指しており、外国人の総数を抑制していく方針が透けて見える。

 政権の姿勢に対し、厚労省年金局長経験者は「外国の方も年金を支えている事を国民に広く知って頂く努力が必要だ」と話すものの、政権の方針次第では、外国人の数が増え続けていく事を前提とした検証結果を信用していいのか、との疑問が出てくる。厚労相の諮問機関、社会保障審議会年金部会の中にも「外国人の流入数は出生率同様、不確実要素だ」と指摘する委員はいる。

 厚生年金の場合、滞日期間がそう長くなければ、日本と社会保障協定を結んでいない国の出身者は、帰国時に企業の保険料負担分が反映されない「脱退一時金」で精算するケースが多い。出より入りが多く、年金財政にはプラスに働く傾向が有る。一方、協定締結国の出身者は企業負担分も含めた年金受給に繋がる例が多い。一口に外国人と言っても、出身国によって年金財政に与える影響は異なる。こうした要素は年金財政検証に反映されていない。

 とは言え、所得代替率50%を維持出来るか否かについては外国人の数に左右されるのが現状だ。厚労省年金局の面々は26年度中に出すという高市政権の「人口戦略」を、気を揉みながら待っている。

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