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未来の会

総選挙の自民党圧勝で「サナエノミクス」本格的始動へ

総選挙の自民党圧勝で「サナエノミクス」本格的始動へ

唯一のストッパーは金融市場、消費減税は既定路線へ

今年2月に行われた第51回衆議院議員総選挙は、通常国会の冒頭での解散に批判は有ったものの、高市早苗首相率いる自民党は圧勝、政権基盤は盤石なものとなった。自民と維新の連立政権は、参議院で過半数に達していないながらも、衆議院では自民単独で再可決に必要な3分の2以上の議席を占めており、伯仲だった今迄と違って、政策を進め易くなったのである。総選挙後の株高が示す様に、「サナエノミクス」と称される経済政策に対する期待が大きいが、これらが実現する事によって、日本経済はどうなっていくのか探ってみよう。

与党圧勝によって高市政権の政策実現性が高まる

今回の総選挙について高市首相は「高市早苗が内閣総理大臣で良いのか」を問う選挙と強調して臨んだ。「政権選択選挙」として解散、信を問うた結果、政権が安定するだけの勢力を築いたのは、就任後に掲げていた政策が信認された事に他ならない。政権は自信を持って政策を遂行する筈だ。そして、信認された形となった根本の政策は、昨年11月に閣議決定された総合経済対策である。

最初に3つの柱からなる同政策の内、第1に掲げた柱は、「生活の安全保障・物価高への対応」だ。ガソリン暫定税率の廃止検討が注目を集めたが、食料品高騰に対する施策、上昇する電気・ガス料金補助といった家計の負担軽減を目的にしたもので、具体的な数値として一般会計から8兆9000億円、減税で2兆7000億円を示した。

第2に掲げたのは「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」で、AI、半導体、量子技術、防衛関連など17の戦略分野に重点的な投資を行うというもの。日本の成長力をアップさせる目的で、株式市場ではこれらの関連銘柄を物色する動きが活発化し、日経平均は最高値を更新している。ここでは一般会計で6兆4000億円、特別会計で8000億円を投じるという。これに「防衛力と外交力の強化」として一般会計で1兆7000億円が第3の柱として加わり、予備費等を含め、所謂真水の総額は21兆3000億円を見込んでいる。

高市政権は圧倒的な国民からの支持をバックにした事で、与野党の勢力伯仲によって、モノによっては進行が難航すると思われた分野も含め、これら3本の柱はスムーズに進む事になったのである。高市首相の解散に踏み切った事に対する本当の心内は分からないながらも、選挙の結果は政策の実現性を高めたのは揺るぎない事実だ。

個人消費の底上げから26年度GDPは約+1%に

それでは、これらが景気全般に具体的にどれだけの好影響を及ぼしてくるのだろうか。既に、株式市場では効果を先回りする形で日経平均が史上最高値を更新し続ける動きとなっているが、日本経済の多くは内需に支えられているだけに、その根本に在る家計、個人消費の上向きが注目点となる。

具体額がはっきりした政策で見てみると、ガソリン税絡みでは、ガソリン1L当たり25・1円分の減税換算で、1世帯当たりの年間負担軽減額は5393円程度になるという。又、電気・ガス補助金については、冬の3カ月に月額約2000円、計約6000円程度の補助が見込まれ、これらを合計して年間約1万1000円の負担軽減と試算される。

更に、所得税の減税が納税者1人当たり2万〜4万円、重点支援地方交付金として、プレミアム商品券、マイナポイント、おこめ券などの支援(各自治体で地域事情等を考慮して支給方法が異なる)が加わり、これら物価高対策によって個人消費の底上げが期待出来る状況となってきた。

去る2月16日に内閣府が公表した25年10〜12月期の実質GDP1次速報値は、前期比+0・1%(年率換算+0・2%)と2四半期振りのプラス成長になり回復に転じたが、「サナエノミクス」の効果も有って今後もGDPはプラス基調となるとの見方が支配的だ。26年度のGDP予測を見ても、内閣府と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが+0・9%、野村證券が+1・0%とそれぞれ1%程度のプラスと予測している。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、マイナス0・2%となる外需のダウンを内需(+1・1%と試算)がカバーするという。インバウンド需要(統計上は輸出にカウント)など対中関係悪化やトランプ関税等の影響を補う以上の効果が見込まれているのである。

政策進行でカギを握るのは金利等のマーケット動向

さてそうなると、これら政策がどこ迄実行出来るかに関心が移るが、「数」という武器を手にした事で、先述した通り実現性が高まったのは言う迄も無い。だが一方で「参議院は与党で過半数に達していない」という声も聞かれる。実際、首相指名選挙に於いて、高市首相は1回目の投票で過半数を獲得していない。参議院で少数与党であるのは紛れも無い事実なのだ。

しかし、それも自民単独で衆議院の3分の2以上の議席を獲得した事で憂いが無くなった。法案が参議院で否決されても衆議院で再可決出来る様になったのである。では、高市首相を止めるものは無いのか?──目下、唯一のストッパーになり得るとされるのが、株式、債券(金利)、為替(円相場)等のマーケットの状況だ。

市場の動きを軽く見てはいけない。22年には英国で、トラス政権が出した高インフレ下に於ける大規模財政出動が市場で懸念され、株価、ポンド、国債がいずれも暴落、このトリプル安によってトラス首相は退陣に追い込まれた経緯が有る。

高市首相が標榜する「責任ある積極財政」は、世界標準的な「積極財政」の理論を取り入れつつも、現実的な規律を維持する事を意味しており、野放図な財政出動はしないという事。財政の裏付けが無い事業は行わないと明言している為、サナエノミクスがトラスショックの様な暴落を引き起こす事は無いとの見方が多い。

しかし、識者の多くが懸念する様に、ここから公約に示した現在8%の食料品の消費税率を2年間ゼロにする消費減税は、財源に大きな穴を空けるのも事実だ。2年間という期間限定であるものの、市場の試算では15兆円規模の税収減が見込まれ、それによって国債価格下落/金利上昇、円への信認が薄れて円安が進行するといったシナリオが読まれるのも自然だろう。その結果、円安による輸入価格上昇が続き物価高は止まらない事態となる──減税議論を進める間に、こうした状況に追い込まれる可能性も有る。

先を見据えた人事で方向性が明確、ぶれずに実行!

現時点では、財政出動による景気浮揚期待から株価は上昇する一方、為替相場は円高、円安の何れかに急激な振れを示す様子は無い。最も警戒される金利動向にしても、高止まりはしているものの、比較的落ち着いている状況だ。今後は減税議論が活発化するにつれ、金利の動向があらゆる角度から注目される様になる。総選挙後の動向で市場の関心を集めたのが、2月25日に内示された日銀の審議委員人事だ。この人事について高市首相は、財務省や日銀の関係者に一切相談する事はせず、積極財政政策に理解を示す2人の人物を選出した。この内の1人は、過度な積極財政論者と財政規律派から警戒されるリフレ論者とされている。

高市首相が進めた人事が金融市場で注目を集めたのはこれが初めてではない。就任直後に、自民党税調のボスで財政規律派の旗頭とも言っていい宮沢洋一氏を会長退任に追い込み、主計官経験者の片山さつき氏を財務大臣に就任させた。その後の経済政策がどの様に動いたかは周知の通り。食品消費税減税など宮沢氏が税調会長のままだったら、選挙公約に掲げる事など出来なかったかも知れない。

今回の日銀人事についても、先を見据えたものであると容易に想像が出来る。計算し尽しているとさえ思える高市首相は、ぶれる事は無いだろう。金融市場が激変しない限り、消費減税を始めとする施策は、規定のコースになったと言えそうである。

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