
2024年度における実施状況
2026年1月29日に、厚生労働省保険局医療指導監査室は、「令和6年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」を公表した。概況は次のとおりである。
| <指導・監査等の実施件数> | |
| 個別指導 | 2494件 (対前年度比 1030件増) |
| 新規個別指導 | 5989件 (対前年度比 587件減) |
| 適時調査 | 2729件 (対前年度比 19件減) |
| 監査 | 34件 (対前年度比 12件減) |
個別指導の実施件数が前年度対比で70%増ということが目立つ。単純比較でも、全体で412件増えている。
| <取消等の状況> | ||
| 保険医療機関等 | 23件 (対前年度比 2件増) | |
| (内訳) | 指定取消 | 9件 (対前年度比 1件増) |
| 指定取消 相当 | 14件 (対前年度比 1件増) | |
| 保険医等 | 18人 (対前年度比 4人増) | |
| (内訳) | 指定取消 | 17人 (対前年度比 4人増) |
| 指定取消 相当 | 1人 (対前年度比 増減なし) | |
特徴として、 「保険医療機関等の指定取消処分 (指定取消相当を含む)の原因 (不正内容)を見ると、架空請求、付増請求、振替請求、二重請求、その他の請求など不正の内容は多岐にわたっている」「指定取消処分(指定取消相当を含む) に係る端緒としては、保険者、医療機関従事者、医療費通知に基づく被保険者等からの情報提供が20件と指定取消処分 (指定取消相当を含む) の件数の大半を占めている」といった点や、いわゆる内部告発などの情報提供を端緒とした指定取消が、23件中20件ということが挙げられる。 また、指定取消件数(指定取消相当を含む)が全体で10%近く増加 しているのも特徴だと言えよう。
返還金額は、前年度対比全体ではやはり約5%増えている。適時調査が約9億円減少したのも、たまたまに過ぎないと言えよう。そうすると、適時調査も増え続けていると評価できそうである。
| <返還金額> | ||
| 保険医療機関等から 返還を求めた額 | 約48億5000万円 (対前年度比 約2億3000万円増) | |
| (内訳) | 指導による 返還分 | 約17億3000万円 (対前年度比 約3億7000万円増) |
| 指定取消 相当 | 適時調査による 返還分 約23億円 (対前年度比 約9億円減) | |
| 監査による 返還分 | 約8億3000万円 (対前年度比 約7億5千万円増) | |
取消等に係る主な事例
医療指導監査室がピックアップした「保険医療機関等の取消等に係る主な事例」は、典型的な取消例であるので、重要ポイントを理解するのに役に立つ。「医科」で「病院」の事例を下記に示す。
A総合病院 【25年2月8日指定取消相当】
② 不正の区分
虚偽の届出(返還金額6億8003万円)
③ 不正の内容等
1.監査に至った経緯
A総合病院が行った一般病棟入院基本料7対1の施設基準の届出について、病棟に勤務していない看護職員が病棟に勤務しているとして届出を行っているとの情報提供が関東信越厚生局千葉事務所にあった。 個別指導及び適時調査を実施したところ、一般病棟入院基本料の施設基準の届出に添付されている看護職員の勤務実績に、病棟に勤務していない看護職員が病棟に勤務したとして記載されていることが確認され、事実と異なる届出を行って診療報酬を不正に請求していたことが強く疑われたため、個別指導及び適時調査を中止し、監査要綱第3の2(不正または著しい不当の疑い)に該当するものとして19年6月12日から23年7月19日まで計21日間 の監査を実施した。
2.監査結果
請求できない一般病棟入院基本料7対1の診療報酬を不正に請求していた。
3. 処分等
25年2月8日 保険医療機関の指定取消相当
不正・不当請求と返還金額の定義・例
不正請求に該当すれば、たとえそれが1件であっても指定取消に直結することがありうる。不正請求または不当請求に該当すれば、少なくとも自主返還の対象にはなってしまう。 医療指導監査室による定義と例は次のようなものである(「令和6年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況 」の「用語解説」より抜粋)ので、十分に留意しておくべきであろう。
診療報酬(調剤報酬を含む。以下同じ。)の請求のうち、詐欺や不法行為に当たるもの。 架空請求、付増醋求、振替請求、二重請求、その他の請求に区分される。
①架空請求:実際に診療(調剤を含む。以下同じ。)を行っていない者につき診療をしたごとく請求すること。診療が継続している者であっても当該診療月に診療行為がないにもかかわらず請求を行った場合、当該診療月分については架空請求となる。
②付増請求:診療行為の回数(日数)、数量、内容等を実際に行ったものより多く請求すること。
③振替請求:実際に行った診療内容を保険点数の高い他の診療内容に振り替えて請求すること。
④二重請求:自費診療を行って患者から費用を受領しているにもかかわらず、保険でも診療報酬を請求すること。
⑤その他の請求 :
a)医師数、看護師数等が医療法の標準数を満たしていないにもかかわらず、入院基本料を減額せずに請求した場合
b)入院患者数の平均が基準以上であるにもかかわらず、入院基本料を減額せずに請求した場
c)施設基準の要件を満たしていないにもかかわらず、虚偽の届出を行った場合
d)保険診療と認められないものを請求した場合(患者の依頼のない往診、健康診断、無診察投薬、自己診療等) 等。
(2)不当請求
診療報酬の請求のうち、 算定要件を満たしていない等、 その妥当性を欠くもの。
例:「指導の要点」を診療録 (カルテ) に記載することを条件に算定が認められている診療報酬について、 カルテに指導の要点を記載していない。
(3)返還金額
個別指導、 新規個別指導、適時調査又は監査の結果、不正又は不当な請求が確認された場合に、同様の請求の有無について保険医療機関等において全患者等を自主点検のうえ、返還金関係書類として地方厚生(支)局に提出した金額。
※本資料における返還金額は、指導に関するものであれば、24年度及び23年度以前に個別指導又は新規個別指導を行ったもののうち、 保険医療機関等が実施した自主点検結果について、24年度中に地方厚生(支)局において返還金関係書類を保険者に通知したもの。
今後の動向
以上のところからして、個別指導・監査・ 適時調査は、引き続き質的に厳しく量的に増えていくことと思われる。カルテ記載と施設基準については変わらず、負担が軽減されずに推移するものと予想されよう。 その他に付加すべきことと言えば、集団的個別指導が24年度は1万5506件と前年度対比で約50%増となったことである。診療報酬請求の質量共の引き締めが強化されていると見ざるをえない。
また、「訪問看護ステーションの指導実施状況の推移」として、24年度が個別指導24件と前年度比20%増となった。ただ、これはいくつかの「訪問看護ステーション」で発覚した不祥事という特殊事情によるものであろう。ここしばらくは、特殊事情が解決するまで、この増加傾向は続くものと思われる。


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