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厚労省人事ウォッチング 第52回 引き続き厚労省内で存在感を放つ大坪審議官

厚労省人事ウォッチング 第52回 引き続き厚労省内で存在感を放つ大坪審議官

 昨年10月の岸田文雄政権発足後、影響力が低下すると思われた厚生労働省の大坪寛子・大臣官房審議官だが、引き続き「存在感」を発揮している。「後ろ盾」とされた和泉洋人首相補佐官や杉田和博官房副長官が退任したものの、新型コロナワクチン接種の前倒し等で省内の主導権を握っているからだ。背景には「使える医系技官の少なさ」(政府関係者)という事情が影響していそうだ。

 以前に本欄でも紹介しているが、大坪氏の経歴を改めて振り返りたい。大坪氏は1992年に東京慈恵会医科大を卒業後、同大付属病院の輸血部・造血細胞センター勤務等を経て、2008年に医系技官として入省した。医政局総務課医療安全推進室長や内閣官房健康・医療戦略室参事官等を歴任し、19年7月から大臣官房審議官を務めている。直近は子ども家庭・少子化対策・災害対策担当だったが、昨年9月の幹部人事で、医政・医薬品等産業振興・精神保健医療担当に「昇格」した。医療提供体制を司る医政局のみならず、ワクチン接種を担う健康局の他、老健局や保険局にも目配せをする立場になっており、「医系技官の審議官としては筆頭格」(厚労省幹部)となった。

 入省から順調に出世している大坪氏だが、その源泉となったのは和泉補佐官の存在が大きい。週刊誌報道で妻子有る和泉補佐官と京都で密会して不倫関係に有るのではないかと疑われる程の「親密さ」を発揮し、自身のキャリアを築いて来た。20年夏の幹部人事で子ども家庭担当を命じられ、新型コロナ担当から外された時には、和泉補佐官や杉田副長官に災害対策担当も付け加えてもら↘︎えるように「直訴」し、新型コロナ対策にも関われるようになった。

 こうした「人脈」や「行動力」に加え、説明能力の高さにも定評が有る。自民党の部会等に呼ばれても、議員の質問や要望にきちんと答えられない幹部が多い中、「大坪氏は理路整然と説明し、議員が求める回答をしている事が多い」(自民党厚労族秘書)と評判だ。議員会館の議員事務所にも頻繁に顔を出し、「医系技官には珍しく腰の軽いタイ↖︎プで、特に有事に強い印象だ」(メディア関係者)という声も有る。

 「外部」からの評判は良いが、身内とも言える官僚からの評価は分かれる。ある若手官僚は「無理難題は言わないし、指示も明確。一緒に働きやすい」と話せば、行政職の中堅キャリアも「ちゃんとコミュニケーションを取れない医系技官が多い中、大坪さんの説明は分かりやすい」と評判だ。一方、ある幹部は「合わない人間には厳しい所も有り、全て上手くいっている訳ではない」と釘を刺す。他省庁の中堅も「情報を隠したがる傾向が有り、連携が取れない。利害関係の有る人間しか目が行かないのでは」と訝しがる。

 とは言え、後藤茂之厚労相との関係も良好とされ、省内での基盤は確固たるものとしている。説明能力に乏しい医系技官が多い中、その力量でのし上がってきたとも言える大坪氏。「爺殺しの異名は伊達ではない」(厚労官僚)との「陰口」も叩かれ、有力な後ろ盾を失いながらも、今も省内で独特の存在感を放っている。

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