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未来の会

第174回 政界サーチ SNS時代と野党の在り方

第174回 政界サーチ SNS時代と野党の在り方

政治家女子48党(旧NHK党)のガーシー元参院議員が除名された。4年間登院しなかった故・田中角栄・元首相が除名されなかったケースを引き合いに処分が適正ではないとSNSの一部で擁護の声も有るが、「国会に一度も出ない人を血税で養う必要は無い」というのが国民の大半の声だろう。

 民主政治は多様な担い手を前提としているが、議会に出ないというのは逸脱が過ぎるだろう。ただ、ガーシー元参院議員を生み出した背景には日本の政界が抱える普遍的な問題も有る。既成政党が国民に飽きられ、支持を減らしているという現実だ。

ビュー・デモクラシーの虚実

 選挙直前に党首の座を巡る内紛に見舞われ、締まりの無い政女48党だが、政治学者の間では、既存の政治や権威に抗議して注目を集めるプロテスト・パーティー(抗議政党)として注目されている。SNS時代に乗り、既得権益を批判する事でPV(ページ・ビュー)を稼ぐ、「ビュー・デモクラシー」の申し子だからだ。主張の是非は関係無く、有権者にクリックされる事で、その存在を高める党容は確かに特異である。一連の政女48党騒動は、旧来の政党感覚からすれば「みっともない」の一言だが、党の存在感はむしろ高まったとの分析すら有るのだ。 

 野党幹部がこんな事を言っている。

 「ネットで目立てば勝ちという可笑しな現象が政界にも広がって来た。最初は一過性のものだろうと高を括っていたが、既存の組織を持たず、有権者とネットで直に繋がって支持を得る手法は政界に革新をもたらしつつある。裏を返せば、既存の野党が有権者の受け皿になり得ていないという現実に行き当たる。ガーシー騒動の中で、再認識したのは、支持団体を通じて民意を吸い上げる既成政党の機能と魅力の減衰だった」

 日本の政治は20世紀型を引き摺っていると指摘される。「保守と革新」「右と左」という2分がその典型で、有権者も又、農協や青年会議所、宗教団体、労働組合等に所属し、いずれかの勢力にブロック化されて来た。しかし、時代の変遷と共にその振り分けは意味を失いつつある。働き方が多様化し、いずれにも属さない有権者が増えた為だ。ブロックに所属しなければ情報が入らないから、いずれにも所属しない階層の政治的受け皿が必要になった。

 ネットはその格好のツールだった。ネットで直接、有権者の気持ちを代弁する政党はこうして生み出された。当然、既成団体の構成員は減少して行く。なんでも屋、つまり包括政党を自認する自民党は手を替え品を替えやり繰りして来たが、労働組合依存の旧社会党系及び民社党系は衰退、分裂・党名変更を繰り返して縮小を余儀なくされた。強い組織力を誇った共産党は自民党の牙城の農協に食い込む等勢力維持に努めて来たが、衰退に歯止めは掛からず、現在に至っている。

 共産党の正式名称は「日本共産党」である。結党は1922年7月で昨年、結党100周年を迎えた。現存する政党で最古の歴史を持つ。ご存じの方も多いだろうが、世界の共産党の中でも極めて独特なので要点を紹介しよう。

 先ずは、ソ連(ロシア)や中国とは一線を画した事が挙げられる。戦後、アジア唯一の先進国になった日本の現状を踏まえ、宮本顕治・書記長(当時)が、先進国でありながら社会主義革命ではなく民族主義革命を目指す独自の綱領を採用したからだ。61年の事だった。この綱領を踏まえ、先ず、当時米国に妥協的だったソ連と衝突し、続いて武装闘争を求めた中国共産党ともぶつかって、自主独立路線を確立する。

 専門家の間で「宮本路線」と呼ばれる独自の方針は、民族民主革命を平和的手段で実現する事を目指し、国際共産主義運動の内部で自主独立路線を取って、大衆的な党組織の建設と国会等での議席拡大を図るものだった。これが、現在の共産党のベースになっている。

〝ポスト志位〟と共産党の行方

さて、その歴史有る共産党で、20年以上もトップを務める志位和夫・委員長(68)の後継問題が浮上している。志位委員長は不破哲三・前委員長の後継として、2000年に就任した。在任期間はもちろん過去最長だ。

 事の発端は、今年1月、党員でジャーナリストの松竹伸幸氏が『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文藝春秋)を刊行した事だった。松竹氏は同書で「党首公選制の採用」を打ち出した。記者会見では、在任期間が22年にわたる志位委員長について「国民の常識からかけ離れていると言わざるを得ない」と指摘し、ネットの話題をさらった。

 共産党は2月初め、松竹氏を除名処分にした。この辺の素早さは、他国の共産党と同様である。これに、朝日新聞や毎日新聞など大手新聞社が「国民を遠ざける異論封じ」「時代にそぐわぬ異論封じ」等と異を唱えた。志位委員長ら幹部は新聞社の名を挙げて、「あまりに不見識」「憲法上の結社の自由に鑑みて、見識を欠いている」と猛烈に反発した。統一地方選を控えた大事な時期だったとは言え、内政干渉に口を尖らせる様は、隣国の共産党を思わせ、国民の間に「やっぱり、共産党は時代錯誤じゃないの」との疑念が広がった。

 共産党幹部が語る。

 「一連の批判が痛かったのは間違いない。注目される事が少なく、危機管理の感覚が鈍っていた。少なくとも松竹氏をスピード除名したのは失策だろう。宮本さんが示した『大衆的な党組織』の意味を再認識する必要が有る。共産党には現実に即して柔軟に対応して来た部分と、他国の共産勢力と同様に頑なに譲らない硬質な部分が共存している。時代を見据え、変える勇気も必要だ」

 不破前委員長の周辺から委員長交代の情報が流れ出しのは一連の騒動の直後だった。共産党は今年1月に予定していた党大会を延期している。統一地方選に備える為、ベテランの志位委員長で乗り切ろうと決めたのだが、地方選が終わり、「ポスト志位」の動きが現実味を帯びて来た。

 共産党幹部によると、思い切った若返り策として、山添拓・政策副委員長(38)の起用が浮上している。東大卒のエリートで不破前委員長の秘蔵っ子らしい。30歳もの若返りは画期的だが、内部には時期尚早の意見も有り、小池晃・書記局長(62)や田村智子・副委員長(57)の起用も取り沙汰されている。小池書記局長はメディアで馴染みが深いし、田村副委員長なら女性初という話題性が有る。

 党員の高齢化が進み、集票力が衰退している現状を打破するのは容易ではないが、欧州では格差是正や気候変動等に鋭敏な「Z世代」等がジェネレーション・レフトとして注目され、新たな担い手になりつつあるという。

 衰えたとは言え、共産党は党員数28万人とされ、党機関紙「赤旗」を含め、他野党とは比べ様の無い組織の強さを持ち合わせている。党勢回復には「大衆的な組織」の再構築に向け、党首公選の導入を含めた党改革や、次世代を担うリーダー選出が求められよう。早ければ来年とも目される党大会に向け、その動きが注目される。

 

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