SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

「実親探し」が法廷闘争に至った理由

「実親探し」が法廷闘争に至った理由
「実親探し」が法廷闘争に至った理由

 東京都立墨田産院(閉院)で出生直後に他の新生児と取り違えられた63歳の男性が11月、実親と連絡を取れるか等の調査を都に求める訴えを起こした。46歳の時、DNA鑑定で実親と思っていた親が他人である事が分かったとして、男性は既に1度、東京都を相手取り裁判を起こしている。今回2度目の提訴となった理由は何にか。そこには男性の前に立ちふさがる「個人情報」の壁があった。

 全国紙記者によると、「誰から生まれたのか、自分のルーツを知りたい」と訴えるのは、東京都足立区に住む自営業、江蔵智さんだ。提訴に当たり、初めて名前や顔を明かして会見に臨んだ。「この顔を見て、親や親戚が気付いてくれるかもしれない」と考えての事だ。

 江蔵さんは39歳の時に母親の血液型を知り、実の親子ならあり得ない組み合わせである事に気付いた。その後、DNA鑑定を行い、親と血縁関係が無い事が確認された。幼い頃から親に似ていないと言われて育ったが、父の血も母の血も流れていないと知った時は「頭が真っ白になった」と言う。

 産院は既に閉院しており、江蔵さんは2004年、東京都を相手取り提訴。06年に東京高裁で取り違えが認定され、都に2000万円の賠償金支払いが命じられた。しかし、都は実親が誰かの調査については拒否。担当職員は「取り違えられた相手の生活を乱す可能性がある」等と説明したと言う。取り違えが認められても、「個人情報」を盾に、江蔵さんが血縁上の親を探す事は出来なかった。

 ならば再び法廷で、と考えた江蔵さんだが、自分の父母を知る「出自を知る権利」の法的な位置付けが不明瞭な日本で、権利が個人情報保護に勝ると認められるか、裁判の行方は不透明だ。江蔵さん側は、都には法律上の親に取り違えの事実を伝え、連絡先を交換する気持ちが有るか確認してもらいたいと求める。その結果、連絡を取る気が無いと言われる恐れもあるが、それでも自分のルーツを知りたい思いが勝った。63歳の江蔵さんにとって、親探しに残されている時間はもう長くないのだ。

癌検診もエンタメも「巣ごもり」続く高齢者

 全国の癌診療連携拠点病院等で20年に新たに癌と診断された人は、19年と比べて6万人減った事が、国立がん研究センターの集計で分かった。癌の診断数が減ったのは07年の集計開始以来初めてで、専門家は「実際に新規の患者が減った訳では無く、新型コロナウイルスの影響で受診控えが起き、発見されていないだけと考えられる」と危機感を募らせる。

 癌治療の基本は「早期発見、早期治療」。しかし、コロナで自治体の癌検診が中止されたり病院や検診の受診を控えたりする動きが起きた。早期発見が出来なければ、見つかった時には進行してしまっていて、治療も難しくなる。

 コロナ前は、「病院で高齢者同士が、互いに元気かと尋ね合っている」というジョークのような話もよく聞かれたが、そうした光景は今どうなっているのか。

 「医療機関の性質や種類によって差はあるだろうが、高齢者の巣ごもり傾向は続いている」と話すのは都内の内科クリニック医師だ。第5波が収束し、街に人が溢れる光景も戻って来たが、その中心は若年層だ。ある演劇関係者も「ジャニーズ等、若い人に人気のタレントが出る舞台の客足は戻ったが、歌舞伎や伝統芸能等、高齢層が多かった舞台の客足は戻っていない」と明かす。

 日本の人口構成は高齢者が多い逆ピラミッドで、給与が低く抑えられている若年層より高齢層の方が消費も多い。その高齢層の巣ごもり長期化は、癌等の病気の発見を遅らせるだけでなく、フレイルの進行にも繋がり、経済の面からも健康の面からも新たなリスクである。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top
Translate »