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国のガバナンスを強化し コロナ抑え込むために「法改正」を

国のガバナンスを強化し コロナ抑え込むために「法改正」を
塩崎 恭久(しおざき・やすひさ)1950年大阪府池田市生まれ。75年東京大学教養学部教養学科アメリカ科卒業。日本銀行入行。82年ハーバード大学行政学大学院修了(行政学修士)。93年衆議院議員初当選。95年参議院議員当選。97年大蔵政務次官。2000年衆議院議員当選(以後7回連続当選)。04年衆議院法務委員長。05年外務副大臣。06年内閣官房長官・拉致問題担当大臣。14年(〜17年)厚生労働大臣。現在、自民党の党・政治制度改革実行本部長、データヘルス推進特命委員長。

日本のコロナ対策がうまく進まなかったのは、国家のガバナンスが弱い点にある、と塩崎氏は指摘する。指揮命令系統を明確にして国が司令塔となって国民を守れるようにする事。公衆衛生と地域医療の関係を改める事。医療に関わるデータを一元化する事。これらを実現するために法改正をすべきとの提言に対し、国会の動きはあまりにも鈍かった。新型コロナに感染した自宅療養者が医療にかかれず亡くなるような状態は、何としても改善しなければならない。そのために何が必要なのか、語って頂いた。

——コロナ対応には法改正が必要と提言しています。

塩崎 昨年6月に自民党の行革推進本部で8つの提言を行っているのですが、その中に「大規模感染症流行時の国家ガバナンス」に関する提言があります。どうしてこの提言を行ったかと言うと、コロナ対応で国家としてのガバナンスが全く利いていなかったからです。安倍晋三総理が「PCR検査を増やします」と言っても、それが実現せず、一国の総理が、目詰まりが起きていたと言わざるを得なかった。そういった事が随所で見られました。一国の総理が言っても動かないという事態に、何というガバナンスなのかと思ったわけです。

——検査を増やせなかったのも法律に問題が?

塩崎 大体どこの国でも、いつでもどこでも何度でも無料でPCR検査が受けられます。日本だけですね、PCR検査をしばしば条件を付して駄目だと言っているのは。中国はクラスターが発生すると何百万人もの検査を数日で行ってしまいます。社会主義国だから出来ると言う人もいますが、オーストラリアやニュージーランドは感染者1人当たりの検査数が非常に多い。社会主義国でなくても出来るのです。日本で検査が進まないのは、正当な感染の疑いがある人にしか検査が出来ないと感染症法に書いてあるからです。無症状の人を対象にしたスクリーニング検査が出来ないわけです。しかし、新型コロナは無症状の人から感染する事が分かっています。当然、無症状の人を検査しなければならないのですが、日本の感染症法ではそれが出来ないようになっていて、現在もそのままです。変えるように言ったのですが、2月の感染症法の改正でもそれはやっていません。

——提言には「大規模感染症流行時の国、地方公共団体の責務」「国の指揮命令権、緊急時の直接執行」等も入っていたのですね。

塩崎 我々の提言していない事は決めたけれど、大事な提言については殆どやって頂いていない。しかし、菅総理は4月23日の3回目の緊急事態宣言の際に、コロナ感染者の入院受け入れについて、病院に対してお願いベースでしか出来ない事を初めて認めました。きちんと行うためには法律を変える必要があるわけですが、残念ながら、ここで菅総理は「落ち着いたら」やると言うに止まりました。普通の国であれば、昨年3月頃までには法律を改正しているでしょう。しかし、ここにきてこれについては政府関係者が落ち着く前にやる、と言っているので、骨太の方針に入るでしょう。しかし、今国会ですぐに改正するのが有事の対応であって、骨太に書いてスケジュール通りにやりましょう、というのは平時の発想だと思います。早くても来年の通常国会成立でしょうから、改正出来ても4月か5月。1年先です。

自宅療養中の死亡は防げる

——感染症法はどこが問題なのですか。

塩崎 日本の感染症法は明治30年以来の仕組みとして知事が感染を抑え込む仕組みになっています。コレラとかチフスは、ある限られた地域で感染が起きて、そこを抑え込んでしまえば終わるからです。ところが、新型コロナは非常に感染力が強くて世界中に広がります。しかも、症状が出ないまま感染させる初めての感染症です。その事は昨年2月頃から分かっていたのに、未だにそれに対応出来る法律になっていません。

——それにより問題が生じている?

塩崎 例えば、自宅療養中にお亡くなりになる方が後を絶ちません。こうした事が起こるのは、いつも診てもらっているかかりつけ医がいるのに、PCR検査で陽性と判明した途端、保健所の健康観察の対象となって、かかりつけ医との関係が遮断されてしまうからです。病気と判明した事で、地域医療からはがされてしまうわけです。CTを撮れば悪化している事が分かるのに、CTすら撮ってもらえず、気づかないまま悪化して死亡している方もおられます。高齢者施設のクラスターでも、医療に繋がらないまま多くの方が亡くなっています。こうした事態を防ぐには、保健所中心の「公衆衛生」とかかりつけ医など「地域医療」の有機的一体化が必要なのです。本来、陽性者は全員隔離し、医療の監視下におくべきです。当面、全ての自宅療養者が往診やオンライン診療を確実に受けられるようにすべきです。

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