SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

第156回 ワクチン「優先接種対象外」から一転した訪問介護従事者

第156回 ワクチン「優先接種対象外」から一転した訪問介護従事者

 厚生労働省は訪問介護等、訪問系介護サービスへの従事者を新型コロナウイルスワクチンの優先接種対象から外していた姿勢を一転し、自治体の判断で一般の人より早く接種出来るように改めた。

 要介護高齢者への感染防止の観点から、既に優先対象としていた施設系介護サービス従事者と足並みをそろえた格好だ。

 土壇場での方針転換に対して、介護団体からは「無理があるのは早くから分かっていたはず」との批判も出ている。

 医療機関と同一敷地内にある介護医療院や介護老人保健施設の職員らは「医療従事者等」としてワクチン接種が優先され、その次に高齢者施設で働く人も一般の人より少し早かった。ところが、訪問系サービスの従事者は優先接種対象から漏れていた。

 2月17日の衆院予算委員会で、立憲民主党の尾辻かな子氏から理由を問われた田村憲久厚労相は「介護施設ならクラスターが起きてもサービスを続ける必要がある」と強調する一方で、訪問系に関しては「事業者を変える等、別の方法もとれる」と説明していた。尾辻氏は「訪問介護は人が全然いない」と追及したが、同省は看護師ら専門職による同行訪問への費用補助等を打ち出すにとどまっていた。

 同省は2月5日の段階で訪問系の事業者に関し、コロナに感染した要介護高齢者の自宅等に引き続き通う事を求める通知を出した。入院病床の逼迫により、要介護者でも自宅療養せざるを得ない感染者がなかなか減らないためだ。

 それが2月末、約4000万人分のワクチンを6月末までに自治体へ配送出来るとの見通しが立った事で空気は変わる。

 厚労省には訪問系の事業者から「対応出来ない」との声が寄せられていた事もあり、訪問系に従事する人も優先接種の対象にする事にした。方針転換の背景について厚労省幹部は、ワクチンにメドがついた事に加え「ヘルパーらの人手不足が深刻な事も理由の1つだ」と話す。

 しかし、訪問系の事業者からは評価とともに複雑な声も漏れる。国は訪問系を軽視し、介護報酬を下げる等してきたからだ。

 訪問系は零細で経営基盤がもろい事業所も多い。東京商工リサーチによると、2020年の老人福祉・介護事業の倒産件数は118件に達し、17年と19年(111件)を上回って過去最高になった。

 業種別では訪問介護事業が56件(47・4%)と最も多い。深刻なヘルパー不足による影響とみられる。

 昨年春、陽性となった50代の女性ヘルパーは悩んだ末、仕事を辞めた。「偏見にさらされた事がきつかったし、利用者さんや事業所にかけた迷惑を考えると、とても続けられなかった」と話す。

 新たな優先接種対象には、訪問系に加えデイケア等通所施設の職員も加わりそうだ。

 ただし、訪問・通所とも優先接種者は「市町村が介護サービスの継続が必要と判断し、かつ本人と介護事業所が感染した高齢者に直接接する形でサービスを提供する意向を示した場合」等に限られる。

 各事業所は条件に該当する職員数を自治体に登録する仕組みだが、ワクチン不足に加え、接種を担う医師や看護師確保に追われる自治体も多い中、スムーズに接種が進む保証はない。
優先接種対象外

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top