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未来の会

コロナ禍で大幅に増加している「早期・希望退職」

コロナ禍で大幅に増加している「早期・希望退職」
「働き方の見直し」も拍車を掛けている

新型コロナウイルス感染症による雇用の影響がじわりと出始めている。

 政府が公表する失業率等の雇用統計では大きな変動はみられないものの、東京商工リサーチ社の調べによれば、2020年に早期・希望退職を実施した上場企業は93社に上った。

 19年の35社から大幅に増加しており、リーマンショック直後の09年に記録した191社に及ばないものの、それに次ぐ高水準となった。コロナ禍に加え、デジタル化や定年延長等制度の見直しによる影響が後押ししているとみられる。

 募集人員は判明した80社で1万8635人を数えた。直近の決算で51社が赤字と、コロナによる業績悪化で「赤字リストラ」に踏み切っている事がうかがえる。

 退職金の割り増し等で一時的に経費がかさむが、将来的な人件費の抑制に繋がるとして実施に踏み切る企業は多い。

自動車・電気機器は米中摩擦も影響

 業種別にみると、アパレル・繊維業が18社で最多。自動車関連業と電気機器業がそれぞれ11社、居酒屋チェーン等外食業と小売業がそれぞれ7社、旅行関連業、広告関連業が各2社、ウェディング業と人材紹介業も1社ずつ確認されている。

 アパレルや外食、旅行関連の各業界はコロナによる業績不振が大きく影響しているとみられ、自動車関連や電気機器は米中摩擦の影響もありそうだ。

 過去の拡大路線から構造改革を目指す三菱自動車は、昨年11月中旬から下旬に希望退職を募集し、550人の募集人員を大幅に上回る654人が応じた。

 対象は20年度末時点で45歳以上の管理職や一般社員が対象。同社の従業員は約1万4000人で5%程度に上り、割増退職金等72億円の特別損失を計上する。

 コロナの影響で内視鏡事業等が減益に苦しむオリンパスは、国内で募集した早期退職制度に844人の応募があった。

 2月1〜19日に本社と国内子会社の従業員を対象に950人程度を募集したところ、本社の間接部門から約300人、内視鏡など医療事業が約200人、残りは販売や生産を行う関連子会社から応募があった。通常の退職金に加え、特別支援金を支給し、約120億円の費用を決算に計上する。

 コロナで不振に陥る紳士服の青山商事も、昨年12月から今年2月まで募集した希望退職に609人が応募した。40歳以上63歳未満で勤続5年以上の正社員と無期契約社員が対象で、対象となる約4000人の1割に当たる約400人を募集していたが、大幅に上回った。同社はコロナの影響もあり、全店の約2割にあたる160店を閉店する他、売り場面積を縮小する等、業績が悪化している。退職金を割り増すため、約40億円の特別損失を計上する。

 国内新築住宅市場の縮小などに苦しむ住宅設備大手のリクシルは、1月に募集した希望退職で965人が応募した。募集人員の1200人を下回ったものの、1000人近くが応募した。40歳以上で勤続10年以上の正社員が対象だった。特別退職金などの費用として約136億円を計上するという。

 この他、武田薬品工業やカシオ計算機、リーガル、ポプラ、NHK、三陽商会、タムロン、藤田観光、曙ブレーキ、デサント、リケン、KNT-CTホールディングス等で早期・希望退職を実施している。

 20年平均の完全失業率は2・8%で、前年と比べると0・4ポイント悪化しているものの、大きな変動はない。

 完全失業者は29万人増加し、191万人に上った。統計的には有効求人倍率の方がはっきりと影響が出ているが、これも分かりにくい。20年平均は1・18倍で、前年から0・42ポイント低下した。これは、オイルショックの影響が残る1974、75年に次ぐ過去3番目の大きさという。

見かけ以上に雇用悪化している懸念

 政権幹部らは「雇用調整助成金の拡充等施策の効果が現れており、雇用は持ちこたえている」と評価するが、コロナによる外出自粛等の動きにより、求職する人が減っている可能性が高く、見かけ以上に雇用が悪化しているとみられる。

 早期・希望退職に踏み切る企業が多いのは、こうしたコロナによる悪影響の他、デジタル化や定年延長等の制度の見直し、今後の経済見通し等が大きく影響しているとみられる。

 厚生労働省の幹部は、デジタル化の進展に着目し、「コロナでテレワークが進み、デジタル化も一気に進んだ。日本の企業に務める中高年は年功序列で給与が高い割に、デジタル化の波についていけていない。自分で学んでくれればいいがそうもいかず、再教育するにしてもコストが掛かる。企業からすればこうした中高年は今後、お荷物になりかねず、早期・希望退職の対象になりやすい」と指摘する。

 4月に施行される改正高年齢者雇用安定法の影響もある。これまで企業に課している65歳までの就業確保を、定年延長や継続雇用、定年制の廃止等により70歳まで引き上げる事を求める内容だ。あくまで努力義務だが、定年を引き上げる等といった対応を検討する企業は増えている。

 経済界関係者は「少子高齢化の進展で優秀な人材の囲い込みが始まる中、中高年の段階で選別が始まっている。その結果、早期・希望退職を募る企業が増えているのではないか」とみる。

 働き方の見直しも拍車を掛けている。政府は同一労働同一賃金を推進しており、日本企業が旧来から採用してきた終身雇用や年功序列をはじめとする「メンバーシップ型雇用」から、業務内容に応じて待遇や人材配置を定める「ジョブ型雇用」への切り替えが進む。こうした切り替えに伴い、余剰人員が発生している可能性もある。

 更に、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は3月5日の参院予算委委員会で、新型コロナの終息時期を問われ、季節性インフルエンザと同等の病気と認識されるまで「2〜3年」掛かるとの見通しを示した。

 コロナの流行と経済成長は今の時代だと大きな関連を持っているため、しばらく急速な経済回復は見込めない。そもそも日本は「低成長」を続けており、コロナの流行を踏まえなくても「今後もこうしたトレンドが続くだろう」(政府関係者)との見方が大勢を占めていた。

 こうした経済を取り巻く状況も、企業が早期・希望退職に踏み切る動向に拍車を掛けているとみられる。

 21年に入って早期・希望退職を募る企業は前年よりも早いペースで増えているという。日本の法制度上、安易に解雇が難しい以上、今後もこうした早期・希望退職は増えていくとみられている。

 日本の雇用市場の流動化が叫ばれて久しいが、戦後の急成長を支えてきた「年功序列」や「終身雇用」は、もはや「死語」になりつつあると言えるだろう。

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