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未来の会

日医と病院団体の間で生じた「損税」を巡る温度差

日医と病院団体の間で生じた「損税」を巡る温度差
今後の消費増税の有無に対する〝読み〟にも相違が

2019年度予算案と税制が固まったことを受け、10月の消費税率10%への引き上げに伴う控除対象外消費税(損税)問題の解消に一定のメドが付いた。従来通りの診療報酬の引き上げに加え、「地域医療介護総合確保基金」への積み増しなどで対応したからだ。日本医師会(日医)は「損税問題は解決した」としているが、補填不足が顕著な病院団体などからは不満の声も漏↘れ、改めて団体間での「温度差」が浮き彫りになった。

 医療機関などの仕入れには消費税がかかるが、医療サービスは非課税なので患者や利用者から消費税を取れない。このため、10月の消費税率10%への引き上げに向けて、医療機関などの「持ち出し」の補填の方法は19年度予算編成の焦点だった。

 最終的に、診療報酬を0・41%(国費200億円程度)、介護報酬は0・39%(同50億円程度)、障害福祉サービス等報酬も0・44%(同30億円程度)をそれぞれ引き上げる方針が決まった。診療報酬の改定率の内訳は、医科が0・48%、歯科0・57%、調剤は0・12%となり、それぞれ引き上げられる。医療サービスでは、初診料や再診料などを数円から数十円程度増やせることになる。

 ただ、これだけでは補填不足が明らかだという医療界の主張に配慮し、厚労省は施設整備が目的の「地域医療介護総合確保基金」を医療分として100億円、介護分100億円の計200億円を積み増した。さらに、電子カルテ標準化などに使える「医療ICT化促進基金」を創設し、300億円を手当てした。

 この政府方針に対し、関係団体の温度差が浮き彫りになったのは、日本医師会館で三師会と四病院団体協議会(四病協)が開いた2018年12月19日の記者会見でのことだ。まずは、日医の横倉義武会長は「緻密な配分と定期的な検証による控除対象外消費税への対応だった。現時点で医療にかかる消費税問題は解決した」と評価。さらに、二つの基金への対応を取り上げ、「法人税非課税の医療機関も、医療ICT化促進基金を医療機関におけるオンライン資格確認や電子カルテ標準化などに活用できる。また、地域医療介護総合確保基金の積み増しによって、地域医療構想の実現に向けて、建物などにおいて活用できるようになる」と説明した。

 日本薬剤師会の山本信夫会長は「医療は非課税という原則の中では、一定の解決をみたと理解している。診療報酬の基本診療料の配点を精緻化する、補填状況を継続的に検証し、必要に応じて見直す対応についても大変感謝している」と同調した。日本歯科医師会(日歯)の牧野利彦副会長も「三師会と四病協が8月に発表した提言は実現しなかったが、中医協で合意された診療報酬による緻密な補填、特別償却制度などにより、現行の非課税制度の下では、課題への対応ができたと受け止めている」と同様に評価し、三師会で足並みをそろえた形になった。

今後課税の検討を求める病院団体

 これに対し、一定の距離を保ったのが、同席した四病協の幹部達だった。全日本病院協会の猪口雄二会長は「中医協の医療機関などにおける消費税負担に関する分科会で、文書化はされていないが、診療報酬による補填での対応には限界がある、と発表されている。今後の医療における消費税問題は課税も含めて、新たな視点で議論を進めていくことができればと思う」と釘を刺した。

 日本精神科病院協会の長瀬輝諠副会長も「他の病院団体と同様、日本医師会が今回の税制改正大綱の対応で、大変な努力をされたことはありがたい。大変評価している。ただ、診療報酬での対応には限界がある。今後は、課税の方向も考えなければならないだろう」と今後の対応に向けて注文を付けた。

 こうした温度差が余計に浮き彫りになるのは、日歯の牧野副会長が会見でも言及した18年8月の提言案があったからだ。提言案は、三師会と四病協が初めて合意して公表したもので、診療報酬で補填する従来の方法に加え、医療機関ごとの申告により過不足に個別対応するという内容である。

 具体的には、個別の医療機関ごとに「診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額(消費税補填額)」と、「負担した控除対象外仕入れ税額(医薬品・特定保険医療材料を除く)」を比較し、申告によって補填の過不足を充足するという仕組みだった。この提言案は最終的に採用されなかったが、病院側にとって補填不足を解消するには都合の良い案だったといえる。

 しかし、この提言案は、厚労省側にとって「これまで意見集約できなかった医療界がようやく提言をまとめることができた」(省幹部)という意味合いでしかなく、窓口役を務める日医・横倉会長の交渉力を高める「道具」にすぎなかったといえる。開業医の会員が多い日医側にとっても、病院団体ほどの力は入っていなかった。

永田町では「増税は当面ない」が常識化

 こうした状況下で、通称「横倉基金」とも言われる地域医療介護総合確保基金の積み増しなどの「落としどころ」が当初から描かれていた。事実、ある厚労省幹部も「提言案の実現は不可能だ。補填については、横倉基金での対応を考えているが、財源や規模については財務省と相談しないといけない」と一部で当初から明らかにしていたからだ。

 では、抜本的な解決は望めないのか。病院団体関係者は、今後の消費増税と絡めて「課税化」に言及している。ここが、日医サイドや自民党など永田町界隈の関係者との「読み」に違いが現れている。つまり、消費増税は当面ない、との考えが永田町界隈では「常識化」しつつあるのだ。特に、安倍晋三首相は消費増税を2度にわたって延期するほどの「消費税嫌い」で知られている。横倉会長は安倍首相とは蜜月関係で知られ、今年1月5日に山口市で開かれた新年互礼会に三師会会長が顔をそろえたほどだ。安倍首相の意向を忖度しているに違いない。財務省内でも10月の消費増税すら延期されるのではとの疑念が渦巻いている。

 さらに、年頭からアメリカのアップル社が中国経済の減速を理由に大幅な業績の下方修正を迫られている「アップル・ショック」で株安が広がるなど、今後、世界経済は不透明な状況に陥っていく可能性が高い。安倍首相でなくても、新たな消費増税に踏み切るには相当な覚悟が必要だろう。

 次期政権をうかがう自民党の石破茂・元幹事長の派閥内でさえ、10%超の消費増税ではない新たな財源確保策が検討されているという。さらなる消費増税はない、とみるのが界隈では大勢を占めている。つまり、新たな消費増税がない以上、抜本解決は必要ない、という結論に達する。

 今回の消費増税対応策は、こうした状況を総合的に勘案した結果から練り上げられたものとみるのが、正しい見方ではないだろうか。

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