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未来の会

弱体化が著しい連合に未来は有るか

弱体化が著しい連合に未来は有るか

再任・芳野会長の手腕が問われる2期目に

日本最大の労働組合の中央組織「日本労働組合総連合会(連合)」の第18回定期大会が10月5〜6日に開かれ、芳野友子・会長の再任が決まった。野党第1党の立憲民主党と政権に擦り寄る国民民主党の支援を掲げる一方、芳野氏は自民党と近過ぎる距離感が組織内で問題視される事もしばしばだ。分裂リスクを抱えながら、2期目も難しい舵取りを迫られる。

 定期大会で再任が決まった直後の挨拶を聞けば、芳野氏の人となりがよく分かる。芳野氏は関係者に謝意を述べた後、「2年前に会長に選出された際、多くの皆様は不安で、不安で、不安だった事と思います」と切り出した。「その一方で、これまで一緒に活動を続けて来た女性役員の中には涙を流して喜んで下さった方も居ると聞いています。私はガラスの天井を突き破るチャンスを逃してはならないと覚悟を決めたと話をさせて頂いた。(中略)チャンスが来た時の答えはイエスか、はいしか無い、絶対に断らない事を約束して来た」と続けた。

 その上で「今日ここに多くの男性役員の皆様が居る。是非女性達に勇気を持って声掛けを頂きたい。そして、女性達にチャンスを与えて頂きたいし、失敗するチャンスも与えて頂きたい」と呼び掛けたのだ。賃上げや困窮者支援など運動方針に触れる事無く、自身が重きを置く「ジェンダー平等」について挨拶の大部分を費やした。

 マスコミでは自民党幹部との密会ばかりが取り上げられているが、芳野氏の真骨頂はジェンダー平等の推進である。専業主婦を優遇する年金の「第3号被保険者制度」の廃止を打ち上げたのも、その一環だ。新役員の女性割合は4割を超えており、男性中心の連合を根本から変革するのが大きな狙いだ。

 一方で、賃上げ等政策の実現も果たさなければならない。連合は旧社会党を支持した総評と旧民社党系の同盟の流れを汲む民間労組が合流し、1989年に日本最大の労組組織として結成された。現在の支援政党が立憲民主党と国民民主党に分かれる中、物価高で大幅賃上げの実現等の為に頼ったのが、自民党だった。

自民への擦り寄りは「両刃の剣」

 特に、芳野氏は就任直後から自民党の麻生太郎・副総裁や小渕優子・組織運動本部長(当時、現・選対委員長)らと会談する等、政府・自民党への接近を図った。昨年4月には、自民党政務調査会の会合に芳野氏が参加し、「政策実現の為、是非自民党にも力を貸して頂きたい」と訴えた程だ。

 岸田文雄・首相も物価高で国民が苦しむ中、賃上げを主導しなければ政権を維持出来ない。連合と協調関係になるのはある意味必然だった。ある大手メディア記者は「もともと芳野氏と小渕氏はジェンダー関係のイベントで同席した事が切っ掛けで親交が深まった」と明かす。

 岸田首相は現職首相として07年の福田康夫氏以来16年振りに連合の定期大会に出席し、来賓として挨拶した。首相は「今年の春闘では賃上げ率は3・58%、中小企業に於いても3・23%と、30年振りの高水準となりました。又、最低賃金も過去最高の引き上げ幅で、全国平均1004円となり、1000円超えを達成しました。ここに至る連合の皆様の多大な尽力に敬意を表し、申し上げます」とアピール。

 「賃上げ、そして人への投資による経済の好循環を実現し、『明日は今日よりも良くなる』と実感出来る日本経済として行く為、引き続き皆様方とコミュニケーションを密に取りながら、全力で取り組んで参りますので、今後共ご協力頂きます様、宜しくお願い申し上げます」と締め括り、連合との友好関係を強調した。

 芳野氏が何処まで計算ずくかは分からないが、こうした戦法は両刃の剣でもある。政権内には国民民主党を自公連立政権に加えようとする動きが有るからだ。これが表面化したのが、国民民主党の副代表を務めた矢田稚子・元参院議員の首相補佐官への就任だ。

 矢田氏は10月7日付の日本経済新聞で就任の経緯について語っている。それによれば、9月11日に官邸から勤務先のパナソニック経由で補佐官就任への打診があり、「一睡もできずに考えて12日朝に会社へ返事した」という事だ。

 一方で、矢田氏の首相補佐官起用は首相官邸側の労組票切り崩しの意図が有る。大阪を中心にパナソニック労組の票を当て込んだもので、特に日本維新の会が躍進する関西で自民党候補の後押しをする狙いが有る。大手メディアの政治部デスクは「裏で暗躍したのが麻生副総裁だと言われている」と明かす。毎日新聞の報道によれば、自民党内では矢田氏を25年参院選の比例代表に擁立する案も浮上しているという。

 連合への切り崩しが進んで行けば、連合の解体を招き兼ねない。元々保守的な思想が強い民間労組と、憲法改正や原発に反対する官公労とでは政策的に異なる点が多かった。政権交代という旗印のみが推進力になっていたが、今や亀裂を覆い隠す事は難しくなって来ている。約340万人の組合員を抱える民間労組は国民民主党を支援し、立憲民主党を支援する官公労と股割きだ。

 こうした状況を見透かすかの様に、組合員数は減少の一途を辿る。組合員数のピークは1990年の808万人だが、現在は699万人まで減少している。この1年で4万5000人ほど減っているというから深刻だ。目標としている1000万人には程遠い。

 ある民間労組の組合員は「ユニオンショップだから加入しているだけで、組合から恩恵を感じる事は少ない。選挙もハガキで頼まれているから入れているだけ」と無気力感が漂う。

 芳野氏は続投が決まった後に開いた記者会見で組合員数の減少に触れ、「連合としては最重要課題と思っている。非正規雇用労働者の正規化を図りながら、企業の中で組合化を進め、定年退職者も合わせて組合化をする」と述べたが、具体性に乏しい。

組合員減少で岐路に立つ連合

更に、政府与党との関係性も問われ、「政府・与党との距離が近いという風には私自身は思っていませんで、これ迄と変わらないと思っています。社会的な対話がとても重要で、今まで通り政府に対しても、主要政党に対しても連合の政策を実現して行く事は是々非々(発言ママ)でという事も有る。これ迄と同じ様に要請行動を行いながら連合の政策実現に向けて積極的に働き掛けはして行きたい」と語ったが、ジェンダー平等と比べ、今一つ危機感の伝わらない記者会見となった。

 危機感の無さは連合自体も同様だ。再選が通例とされるものの、芳野氏への不満は内部で高まっているにも拘らず、名乗り上げる対抗馬は誰も居なかった。連合内で最大規模の産別労組「UAゼンセン」会長で連合の会長代行を兼ねる松浦昭彦氏が有力候補の1人と目されたが、早々に辞退し、雌雄は決した。

 労組関係者は「前回は誰も居ない中、女性候補という事で芳野氏に白羽の矢を立てた以上、今回はいくら批判が有っても中途半端に下ろす訳には行かない事情が有った。連合内にも芳野氏を引き摺り下ろす程のパワーも残っていない」と指摘する。

 凋落の一途を辿る連合だが、今回の定期大会で反転攻勢の兆しは見出せず、むしろ迷走振りをより鮮明に映し出す形となった。芳野氏の任期は2年。その間に挙行される衆院選の結果は連合の行く末も左右しそうだ。

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