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未来の会

亀田クリニックの「アート・イン・ホスピタル」

亀田クリニックの「アート・イン・ホスピタル」
そのコンセプト、ハード、ソフトを亀田院長が語る

日本初の独立型大型診療所として1995年に開院した医療法人鉄蕉会亀田クリニック(千葉県鴨川市)。患者の心身に優しい環境や空間をつくる「アート・イン・ホスピタル」を日本で初めて導入した医療機関でもある。亀田省吾院長に導入のいきさつや現況を聞いた。

 鉄蕉会は亀田総合病院や亀田クリニック、亀田リハビリテーション病院などからなる「亀田メディカルセンター」を中心に南房総全体を1次医療圏として地域医療に貢献するとともに、全国的な競争力を持つ医療機関として高度先進医療を提供している。亀田メディカルセンターは89年、米国の病院コンサルタントや病院設計の専門家を交え、ハードウエアや人員、システムに関する中長期の総合的事業計画(マスタープラン)を策定した。

 マスタープランを踏まえ、亀田院長は「医療の高度化や高齢化の進行により、医療を急性期医療と長期療養に分けていかないと効率が悪くなった。また、入院医療から通院医療へシフトしていかなければいけない中、地域全体の医療コーディネートをする役割として独立型大型診療所である亀田クリニックを作ることになった」と話す。地域の医療機関同士の情報共有の手段として、世界初の統合医療情報(電子カルテ)システムも開発した。

 亀田クリニックは患者第一の視点から「帰りは笑顔で」をキャッチコピーに掲げ、コンセプトとして①最適な医療を②快適な空間で③お気軽に——の3つを定めた。「快適な空間」づくりの一環として「アート・イン・ホスピタル」に取り組むことになった。

 ちょうどマスタープランを策定した89年、国連「世界文化発展の10年(UN World Decade for Cultural Development)1988-1997」の活動の一環として、ユネスコ(UNESCO)を本部に「Arts in Hospital国際会議」が発足した。亀田クリニックは、同会議の会員でスウェーデン織りの作家、アナグリウス・ケイ子氏のプロデュースで「アート・イン・ホスピタル」を院内に導入。亀田クリニック自体も開院時の95年には日本で唯一の医療機関として同会議の会員になった。

 亀田クリニックはホテルのような外観で、ロビーは広々として明るく、迷っている人には案内係がすぐ対応している。また、スカイライトを採ったアトリウム(吹き抜け)を中心に回廊を採用。フロアごとのインテリアデザインとカラーにより、患者や家族は現在地を確認しやすい。病室はトイレと風呂付きの個室で、目の前には海が広がり、ヒーリングアートがさりげなく飾られている。

 亀田院長は「とんがった高価な物を飾るのではなく、皆がほのぼのする物、触りたくなる物をアートとして置いてある。触って壊れてしまったら、直せばいいじゃないか、持って行ってしまったら、また作ればいいじゃないかというコンセプト。アートとひと口で言っても、絵画だけではなく、物づくりや音楽もある。クリニックではアートセラピーやミュージックセラピーなどアートを取り入れた治療にも挑戦している」と話す。

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