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第61回 問題山積みで株主総会を逃げ切る武田役員

第61回 問題山積みで株主総会を逃げ切る武田役員
虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
問題山積みで株主総会を逃げ切る武田役員

 厚生労働省による「処分」の余震は今も続いている。ARBブロプレスの臨床試験「CASEJ」で誇大広告があったとして武田薬品工業が6月に医薬品医療機器法(薬機法)に基づく行政処分を受けた。このことについてはすでに前号で詳報している。

 これを受け、日本製薬工業協会(製薬協)は7月2日、武田会長・長谷川閑史の協会副会長としての役職を解いたと発表した。

 製薬協の処分は重い順に「除名」「会員資格停止」「役職解任」「役職停止」「厳重注意」の五つがある。解任は会員企業の除名、会員資格停止に次ぐ重い処分である。

 製薬協は昨年4月から武田を役職停止処分にしてきた。理事長の伍藤忠春は理事会後の記者会見で次のような説明を披露した。

 「これまで厚労省による処分の推移を見守っていたが、薬機法違反の処分が出されたことを加味して総合的に処分審査会で審議し、役職解任が適当との決定になった」

 製薬協では後任副会長は置かない方針。長谷川が担ってきた職務の軽重が如実に現れた対応といえる。6月1日現在、製薬協には15の常設委員会が設置されている。このうち、五つの委員会に武田出身の委員長がいる。製薬協専務理事・川原章が会見で述べたところによると、今回の処分は製薬協副会長職を失うだけにとどまる。委員会構成員の身分に影響はないという。

 「各委員会の委員長は正副会長会社でなければ就けないということではない。各委員会で一番、委員会を率いていくのに見識のある方を互選で選出している。今回は特にそこまでの影響はないということ」(川原)

 製薬協はしょせん業界団体。この程度の認識で運営されているのは周知の事実でもある。

実効性が担保されい「新体制」
 武田の談話も一応紹介しておこう。

 「今回の製薬協の処分をに受け止め、本件により、患者の皆さまや医療関係者の皆さまをはじめ、関係する全ての方々に心配をお掛けしていることを心よりおわび申し上げる」──。何を読み取ればいいのだろう。

 処分を受け、7月13日、武田も新たなアクションを見せた。再発防止に向けた改善計画を開示したのだ。8月から実施する。

 ▽医療関係者向けの薬の広告を出す際、適法性をチェックする社内の審査委員に外部の弁護士を加え、営業部門の職員は排除する。

 ▽審査体制が整うまでは医療用医薬品広告の作成を停止する。

 報道によれば、武田の広告審査会は現在8人で構成し、営業部門の社員も委員に名を連ねている。新体制では委員長を医師が務める。営業から完全に独立させることを「目玉」としたいようだ。以前に出してきた広告も継続して使うべきかどうかをあらためて判断。審査委員や広告作成者に対して法令や業界の自主基準の教育訓練をしていくらしい。

 だが、武田は息のかかった弁護士事務所に「第三者機関」を丸投げした「前科」がある。新体制がどこまで機能を確保できるかは極めて疑わしいといわざるを得ない。

外国CFOが総会直
 「処分後」をめぐる動きの直前、6月26日、武田は定時株主総会を開催した。長谷川はこの席で謝罪を余儀なくされている。

 総会直前に議案修正を迫られたからだ。武田が昨年9月、初めて最高財務責任者(CFO)に据えたフランソワ・ロジェが6月26日、辞任した。前代未聞の事態である。

 ロジェは「人材のグローバル化」をお題目とする長谷川が鳴り物入りで招請したご仁。欧州の製薬や食品、通信会社の財務責任者などを歴任し、昨年6月に取締役に就任。

 2017年度までに1200億円のコストを削減するという「プロジェクトサミット」のかじ取りを一手に担ってきた。財務部門をグローバルに統合する職務にあって、会計、財務、税務、IT、購買、保険・リスク管理のグローバルリーダーが世界中をカバーする機構をつくり上げている。武田社長のクリストフ・ウェバーが経営強化のために結成した外国人中心の「直属幹部チーム」にも加えられた。取締役就任から1年足らずでスイスの食品大手ネスレの引き抜きに応じ、財務統括職に「栄転」を果たしたわけだ。

 ロジェを含む取締役の選任議案を武田は提示済みだった。直前になって議案を修正するのは恥の上塗りともいえる事態だろう。

 ここで注目すべき点がある。前号でも指摘した武田の役員報酬の異様な高騰ぶりだ。国内製薬企業と比較しても突出している。

 ロジェの昨年度の役員報酬は3億円を超える。前出のプロジェクトでは開始後2年の途上にあって620億円をカットする実績を挙げてはいる。だが、職務を途中で投げ出した人間をで処遇する必要はあるのか。

 他の役員も軒並み高額報酬を得ている。

 ▽山田忠孝(チーフメディカル&サイエンティフィックオフィサー、退任)9億800万円▽フランク・モリッヒ(チーフコンテンツオフィサー、退任)8億900万円▽クリストフ・ウェバー(社長兼最高執行責任者〔現最高経営責任者〕)5億700万円▽長谷川閑史(会長)2億7700万円──。

 武田の株主総会に話を戻そう。創業家やOBの発言を機に「荒れた」昨年とは一変。会の進行事態はスムーズに進んだといえる。

 だが、武田の現況は「シャンシャン」で済ませられる水準をとうに逸脱している。広告をめぐる事件での処分とその余波は前述の通り。一方、昨年度決算は上場来初の赤字となった。米国での糖尿病治療薬「アクトス」訴訟の和解金計上の影響だ。さらにロジェ退任騒動まで巻き起こった。度重なる大型企業買収で社内の枢要な部門は外国人幹部に掌握されてしまっている。長谷川と意見を異にする生え抜きの日本人社員はほぼ放逐されてしまっている。残ったプロパー社員も何にやる気を見出せばいいか分からない状態だ。

 株主総会で長谷川の取締役再任への賛成率は80・15%にとどまった。

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