
Prix Galien(ガリエン賞)は「創薬のノーベル賞」と呼ばれ、画期的な医薬品や医療技術の開発を表彰する国際的に権威ある賞である。The Galien Foundation(ガリエン財団)は2009年に設立され、ガリエン賞の国際展開と医療イノベーションの評価基盤作りを担ってきた。25年11月21日、その日本支部「日本ガリエン財団」が遂に設立された。これは日本が国際的な創薬ネットワークの中核に繋がる節目である。設立を機に来日した、ガリエン財団会長ブルーノ・コーエン氏に直接話を聞いた。
——ガリエン賞を設立された経緯と目的をお聞かせ下さい。
コーエン Prix Galien(ガリエン賞)は、その名を「薬学の父」と称される古代ローマの医学者ガレノスに由来し、1970年にフランスの薬剤師ローラン・メールによって設立されました。当初の目的は、医学に対する国民の懐疑心が強かった時代に、医学の科学的水準を向上させる事でした。時を経て、この賞はイノベーションへの信頼を象徴する世界的なシンボルへと進化を遂げました。現在では、ライフサイエンス分野全体を横断する、権威有る賞として広く認められ、「創薬のノーベル賞」と称される様になりました。この進化に大きな影響を与えたのが、ノーベル平和賞受賞者であり、ホロコースト生存者でもあった人道思想家、故エリ・ヴィーゼル教授(ガリエン財団名誉創設会長)です。教授の「科学は常に人類に奉仕すべきである」という言葉は、ガリエン賞の使命の根幹を成しています。
——ノーベル賞とガリエン賞は、評価対象や評価基準がどの様に違うのでしょう。
コーエン これらの賞は、互いを補完する関係に在りますが、視点が異なります。ノーベル賞が主として個人の画期的な科学的発見を顕彰するのに対し、ガリエン賞は、発見や技術が社会に実装され、患者に届ける迄の集団的且つ学際的な努力を顕彰します。私はガリエン賞を、「科学が実際に人類の役に立った証」を示す賞だと考えています。
——授賞式はどの様に行われていますか?
コーエン 受賞式は、各国で毎年、或いは隔年で行われています。例えば、2024年11月にニューヨーク自然史博物館で開催された「Prix Galien USA」では、最優秀バイオテクノロジー製品賞、医薬品賞、希少疾病医薬品賞、医療技術賞、デジタルヘルス賞、起業育成投資機関賞、スタートアップ賞の7部門が表彰され、その選考委員会には3名のノーベル賞受賞者を始め、学界のトップリーダー達が名を連ねています。又、授賞式は単なる授与の場に留まらず、受賞者・ノミネーター・審査員・世界の主要製薬会社の役員や研究陣、グローバル保健機関の関係者等が一堂に会し、医療イノベーションを巡る対話や、国際的な交流が行われるプラットフォームにもなっています。
コーエン会長が描く、世界とアジアの発展戦略
——コーエン会長はこれ迄どの様な分野で活動されてきたのですか。
コーエン 私は1980年代から、REGIMEDIAという医療分野に於ける初のコミュニケーション・アフィニティ・イベント・グループを率い、医師、製薬企業、研究者、規制当局、患者を繋ぐ仕組みを構築してきました。94年には遠隔心拍モニタリングを実用化し、遠隔医療という市場が成立する以前から、その可能性に投資してきたのです。その中で私は、優れた科学が有っても、それを正しく評価し世界に届けるプラットフォームが無ければイノベーションは社会に根付かない、という現実を痛感しました。そこで99年以降、私はガリエン賞の国際展開と価値の確立に本格的に関わる様になりました。
——ガリエン財団は、どの様な使命と役割を担っているのでしょう。
コーエン ガリエン財団は2009年に設立され、本部をニューヨークに置いています。ジミー・カーター氏、ビル・クリントン氏、ジョージ・W・ブッシュ氏、バラク・オバマ氏という4名の元米国大統領に加え、潘基文元国連事務総長やWHO事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス博士らからも後援を受けています。現在は、米国、フランス、英国、ドイツ、中国等、世界17の国と地域に拠点を展開しています。私達の役割は大きく3つ有ります。第1に、バイオ医薬品、医療技術、デジタルヘルス、診断技術等に於ける「卓越性」を、国際的に信頼される評価基準として示す事。第2に、科学と社会を繋ぐ架け橋として、透明性と信頼を高め、科学リテラシーの向上に貢献する事。第3に、産業界、学界、規制当局、投資家、患者団体等を結び付け、分野を超えた連携を生み出す中立的なハブとなる事です。



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