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未来の会

262 丸子中央病院(長野県上田市)

262 丸子中央病院(長野県上田市)

アートを中心に地域と繋がる医療
262 丸子中央病院(長野県上田市)

平安時代末期の武将、木曽義仲の挙兵の地として知られる丸子は、長野県上田市の南東に位置する自然豊かな地域だ。歴史あるこの地に丸山医院が開業したのは1959年。その後、65年に丸子中央病院となり、増改築や移転を重ねながら、丸子地区の中核的な医療機関として、2次救急医療から一般的な疾患まで幅広く対応している。

必要とする全ての住民に質の高い医療を提供し、地域全体の医療ニーズに応える為、効率的な病床運用と共に、高齢者の在宅支援にも積極的に取り組んできた。2013年には高齢社会に対応した最新の医療環境を整備する為、現在の位置に新築移転し、更なる医療サービスの向上を実現した。

この時、療養環境も治療の一環と考えた事から、廊下や病室のスペースにはゆとりを持たせ、大きな窓から自然光を採り入れる等、患者が穏やかな気持ちで安心して過ごせる病院を目指した。特に9階の健診部門はホテルのロビーの様な雰囲気で、検査の後は病院専属のシェフによる食事を堪能出来る。フランス料理を手掛けるシェフの料理は、同じく9階のレストラン「ヴァイスホルン」でも提供され、一般の人も味わえる。レストランの入口には、アンティーク調の家具や絵画、オブジェが並び、広い窓からは、浅間山や烏帽子岳など信州の山並みを一望出来るのが自慢だ。

1階のエントランスホールに飾られた「ビックツリー」のオブジェは、13年の新築移転に合わせて設置され病院のシンボルにもなっている。地域の人々の夢や希望が1つの大きな木となったとのイメージで、333個の木片に、小学生から高齢者まで幅広い住民が、自分の夢や思いを描いた。更に地域の人達が無料で利用出来るギャラリースペースも設け、地域で創作活動に取り組むアーティストや、趣味で絵画を楽しんでいる市民らの作品を飾っている。

23年にはエントランスホールに、洋画家の中西繁氏の絵画「黄昏のカレル橋」を設置した。チェコの首都プラハを流れるブルタバ川の風景で、ヨーロッパの美しい街並みを楽しめる。コロナ禍で、自由に旅する事も儘ならない時期だからこそ、異国の風景に触れ、不安で塞ぎがちな心を癒して欲しいとの願いを込めた。

絵画以外にも、患者や家族の心を和ませ、地域の人々に愛されている場所が有る。病院の正面玄関前に広がるローズガーデンだ。16年から病院職員がバラを育て始め、年々種類を増やしてきた。毎年5月上旬から6月上旬に掛けて見頃を迎え、今では大輪や中輪、つるバラ等140品種のバラが咲き誇る。

開花時期には「バラ祭り」と称して、誰でも花を楽しめる様、無料で開放し、ミニコンサートやトークショー等も開催する。これも、病院が単なる医療の場に留まらず、地域に開かれた「癒しの空間」としての役割も果たしたいとの考えに基づいている。

患者は勿論、患者の家族、スタッフ等病院を訪れる人達の延長線上には地域住民が居る。だからこそ、地域の人達の生活に彩りを添えられる場所でありたい。これからも地域と繋がった医療を目指していく。


262_丸子中央病院(長野県上田市)

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