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未来の会

PCR検査・重症病床・医療補助者の 「異次元緩和」

PCR検査・重症病床・医療補助者の 「異次元緩和」
1.一般国民は静かに驚き戸惑い

 新型コロナ禍が生じてから1年以上が経過する。この間、一般国民は、PCR検査は少なくても必要に応じてだし、病院は奮闘しているけれど病床が不足気味で、医療従事者も頑張っているけれどせめて偏在調整を、などとじっと黙って期待しつつ耐えて協力してきた。

 しかし、たまたまタイミングが悪く、東京五輪・パラリンピックで選手・関係者(約3万人)は毎日PCR検査(約3万件)、指定病院は30病院を準備、看護師は500人を確保要請などという報道が流れ出たため、それらをきっかけとして溜まっていた疑問が噴出し始めてきつつある。

 ただ今はまだ、多くの一般国民はむしろ静かに驚き、かつ戸惑っている段階のように思う。

 東京都で言えば、約1400万人の人口に対して毎日約1万件弱のPCR検査に留まっていたところ(単純計算で言えば1人当たり約4年でやっと1回)、東京五輪・パラリンピックでは約3万人の選手・関係者に対して毎日約3万件のPCR検査をしようというのである。

 一般国民の素朴な感想は、「なんだ! やれば、できるんじゃないか!」というものであろう。

 重症病床については、近畿地方では入院できずに死亡する人も生じてしまっていると聞く。

 東京も医療が逼迫しつつあると予想されているが、選手・関係者用の病院は「30病院もの余裕があるのか?」と誤解してしまう。

 看護師こそ大変な激務の中で頑張っていて、不足していたはずなのに、「500人もの現役看護師が選手・関係者に対処できるゆとりがあるのか?」などと、やはり大いなる誤解も招きそうである。

 現在は、多くの一般国民は静かに、「本当なのか!」と驚いているところであろうし、「選手・関係者以外の日本国民はどうなるのだろう?」と戸惑っているところでもあろう。

 かと言って、まさか今さら東京五輪・パラリンピックの中止でもなかろうが、とはいえども、このままでは選手・関係者と一般国民との間の格差は、常軌を逸している。このままだと遂には、一般国民の不満が爆発してしまう。

 その妥当な解決策は、たった1つしかない。

 一般国民のためのPCR検査・重症病床・医療従事者の確保を、東京五輪・パラリンピックの選手・関係者並みに(あるいは少なくとも、できる限り近づけて)劇的に、それこそ異次元的に、増加させることであろう。

 各種規制の異次元緩和と言うこともできる(なお、緊急に劇的かつ異次元的に増加させるとしても、あくまでもコロナ禍の間の一時的な措置に過ぎず、コロナが真に終息したら、速やかに原状回復させることも忘れてはならない)。

2.PCR検査数の異次元的・劇的増加

 PCR検査数は、スクリーニング検査も含む行政検査、保険診療における検査の総数を指す。それらを東京都で言えば1日1万件弱のところを、選手・関係者3万人に毎日ということだから、プラス約3万件で、合計最大4万件を行おうというのであろう。

 それだけの数をやる気になればできるというのであるから、この際、選手・関係者は3日に1回程度に減らしてもらって、東京都民には1日に3倍増の3万件程度を割り振るべきである。こうやって、アンバランスを少し調整するとよい。

 つまり、PCR検査数の異次元的・劇的増加は、政府・自治体のやる気次第なのである。

3.重症病床数の異次元的・劇的増加

 近畿地方では、自宅療養のまま入院もできずに死亡してしまう例が生じ始めているらしい。誠に残念な事態である。

 ところで、別途に五輪・パラリンピックで30の指定病院を確保したと言っても、一般国民の患者を度外視するわけであろうはずはない。とはいえ、五輪・パラリンピックのために、その入通院患者の数だけの影響が出ないということでもないであろう。

 とするならば、その入通院患者の数を補って余りあるだけの異次元的・劇的な重症病床の増加は、人道上、必要不可欠なことである。

 その重症病床の増加は、当事者である病院(と地域の病院団体)に任せるのが良策であろう。

 しかもそれを、新型インフル対策特措法第31条の2に定める「臨時の医療施設」によって増床するのが適切である。特に民間の病院の協力を求めるために、費用負担面や終息後撤収の一時性からして、それが合理的であろう。

 政府や自治体は、このような「臨時の医療施設」の要否や必要数についても、当事者たる病院と病院団体に任せるのが適切である。

 さらに、もう一歩踏み込んで言えば、費用は自治体が全額負担しつつも、「臨時の医療施設」の開設者自体も、当事者である病院をその主体とすることが合目的的であろう(もちろん、そこまでするためには、特措法の法改正がほんの少しだけ必要ではある)。

4.医療補助者数の異次元的・劇的増加

 ここで言う「医療補助者」とは、あえてネーミングすれば、「緊急医療提供体制補助事業者」とでも称しえよう。

 具体的な想定例は、すでに「医師の働き方改革」のうちのタスク・シフティング(業務移管)で議論された例が代表である。フィジシャン・アシスタント(PA)を筆頭とし、薬剤師・歯科医師、看護補助者・医療秘書、診療看護師(NP)などを一括して、医師の包括的指示の下で適宜「医療行為」を行うことができる者とすることが考えられよう。

 これらは医療を補助する「独立の」「事業者」としての個人または法人を指す。コロナ終息後撤収を前提とした、その存続の一時性を保持するため、雇用関係にある労働者とするのではなく、独立の受託事業者と位置付けるのである。

 これら大量の医療補助者を、その採用する病院の適時・適切な役割指示の下に投入し、まさに異次元的・劇的増加を目指すのである。そうすれば、看護師500人確保要請も不当なものとは映らなくなるであろう。

 なお、当然、これは新型インフル対策特措法に新たな定めを増補しなければ、実現できない。ただ、法律改正は簡単であり、単に1箇条を設ければ足りるであろう。

 たとえば、新型インフル対策特措法のうち「臨時の医療施設」を定めた条文に続けて、その第31条の3の2として、「医師は、当該都道府県の区域内において医師その他の医療従事者が不足し、医療の提供に支障が生ずると認める場合には、特に必要があると認めるときに限り、政令に定めるところにより、独立して事業を営む個人または法人たる緊急医療提供体制補助事業者に対して、その医師の指示に基づき診療の補助を行わせることができる」という規定を設けることが考えられるのである。

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