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第3次補正予算は中小企業をあからさまに「冷遇」

第3次補正予算は中小企業をあからさまに「冷遇」
「新陳代謝」等と称した〝切り捨て策〟か

政府は2月2日に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言について、予定していた同月7日までの期限を栃木県を除く10都府県に対し、3月7日まで1カ月間延長する方針を決定した。これによって、今後の菅義偉政権のコロナ対策が不透明感を増したのは否めない。特にその感を強くするのは、1月28日に成立した2020年度第3次補正予算だろう。

 名目が「新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策経費」だが、19兆1761億円のうち、喫緊の課題であるコロナ感染拡大防止に関しては、全体の4分の1以下の4兆3581億円しかないのだ。

 他方で、全く終息の展望も見えないのに「ポストコロナへの構造転換」と称して半分以上の11兆6766億円が配分。やれ「デジタル化推進」だの「マイナンバーカード普及」「5G(次世代通信規格)の研究開発支援」「脱炭素に向けた2兆円基金」等々、それこそ「不要不急」の予算がてんこ盛りだ。

 おまけに、間違いなく今回の非常事態宣言の要因となった、昨年11月以降の感染者の爆発的増大をもたらした例の「GoToトラベル」や「GoToイート」が、6月まで延長するため1兆826億円以上も計上されている。

 加えて、高規格道路建設等の「国土強靭化」、主に潜水艦やミサイルの兵器購入の前払いといった軍事費が「国民の安全・安心」という名目で、計3兆円を超える額となっている。感染拡大により医療崩壊が危惧され、医師や看護師等現場の疲弊が限界に来ているのにだ。

 折しも、日本経済が戦後最大規模の危機に直撃されている中、それを支える中小企業の現状は深刻だ。

 東京商工リサーチが1月15日に官公庁向けに開催した倒産状況説明会の報告によれば、昨年に倒産と廃業で消えた企業は5万7000社で、今年度は6万3000〜5000社が見込まれるという。大多数が中小企業だ。

「GoTo」に満たない予算額は非情

 ところが、第3次補正予算ではあからさまな中小企業への冷遇が目立つ。雇用調整助成金特例措置の2月末までの延長用に5430億円、緊急小口融資金特別貸付の3月末までの延長用として4199億円しか付かず、合わせても「GoToトラベル」や「GoToイート」の予算に満たないというのは非情と言うしかないだろう。

 加えて、売上が前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、中小企業等の法人に200万円、個人事業者には100万円を上限に現金を給付する持続化給付金は、打ち切りとなった。

 この給付金を「命綱」にして倒産の危機を何とか持ちこたえてきながら、一度給付対象になったら二度と申請出来ないとあっては、頭を抱えている中小事業主も多いはず。新たな中小企業支援策も、ゼロ回答となった。

 コロナ禍にあって医療現場に対する手厚い補助も急務だが、同時に日本の企業の99・7%を占め、地域の経済と雇用の核になっている中小企業の支援が、菅の言うところのコロナ禍での「経済優先」の中身であってもおかしくないはず。ところが「支援」どころか、これを機に淘汰を促すような菅の意図が見える。

 昨年11月25日、政府の財政制度等審議会(財政審)は、21年度の予算編成に対する「建議」と称した文書を政府に提出した。

 そこでは、「2度にわたる補正予算には……持続化給付金等の事業者に対する緊急避難的な施策が多く盛り込まれている。…(中略)…こうした政府の一時的かつ非常時の支援を継続し、常態化させれば、政府の支援への依存を招き、産業構造の変革や新陳代謝の遅れ、モラルハザードを通じて今後の成長の足かせとなりかねない」と主張。持続化給付金打ち切りを狙う意図が露骨だ。

 それ以前にも『日経』の同年10月26日付(電子版)によると、この日に開かれた財政審の歳出改革部会でも、持続化給付金について「事業が振るわない企業の長い延命に懸念する」といった意見が続出した。

 慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗・部会長代理も「期限をずるずると先延ばしすると、本来はよりよく新陳代謝が促される機会が奪われてしまう」等と、会合後の記者会見で発言している。

「お雇い外国人」の〝ご説拝聴〟

 財務省の役人が、諮問機関に自分達の意向を代弁させている構図だが、中小企業で働く人々の生活や命でさえ、「新陳代謝」とやらよりも優先順位の下に置かれるべきであるかのような発想は、菅にも共有されている。

 しかも、これは菅自身が「言うとおりにやっている」と述べるまでに心酔し、外国人であるにもかかわらず政府の諮問機関「成長戦略会議」のメンバーに加えたデービッド・アトキンソンなる英国人の影響という。アトキンソン氏は米国の会計事務所や投資銀行等の勤務を経て、1990年頃に来日、現在、文化財の修繕等を業務とする小西美術工藝社の社長を務める。

 明治の「お雇い外国人」ではあるまいし、今どき先進国で金融業者上がりの他国籍人を「ご説拝聴」とばかりに公的機関に列席させている例がどれだけあるのか知らないが、その主張には首を傾げざるを得ない。

 例えば、「小規模事業者の中でも中堅企業にはならない、なろうとしない、慢性的な赤字企業はただの寄生虫ですから、退場してもらったほうがいい」「中小企業は、小さいこと自体が問題。ですから、中小企業を成長させたり再編したりして、器を大きくすることをまず考えるべきです。それができない中小企業は、どうすべきか。誤解を恐れずに言うと、消えてもらうしかありません」(『プレジデント』20年5月29日号)等というのは、その典型だろう。

 全国の中小企業主にしてみれば、なぜ日本人でもない者から「寄生虫」呼ばわりされねばならないのか解せないだろうが、企業規模、及び企業規模の大きさごとの割合は各国の経済風土や社会構造等に規定される面が大きく、一律に「小さいこと自体が問題」等と定義されるはずがない。こんな暴論がまかり通っているのも、「生産性」を理由に中小企業の劣位をことさら強調する昨今の風潮があるからだろう。

 アトキンソンは、「日本経済の低迷は中小企業の生産性に起因する」が持論。前出の「建議」にも、「中小企業は労働生産性が相対的に低い」ので、「規模の拡大を図っていくという視点も重要」という記述がある。

 菅も経産相の梶山弘志に「中小企業対策」と称し、「生産性を上げるための政策を検討するよう指示した」(『朝日』20年11月13日付)とか。

 だが、数多くの中小企業が置かれている大企業の下請け構造では、弱い立場故の無理なコスト切り下げや納期短縮を強いられて利益を出しにくい。利益を基準に考えた労働生産性が低くなるのも、当然なのだ。

 そうした背景を無視して生身の人間を相手に「新陳代謝」等と口にする財政審や歳出改革部会に、中小企業の代表者はいない。そう考えると今回の持続化給付金廃止とは、菅と政権ぐるみの「労働生産性」が低い「足かせ」の中小企業に対する、「新陳代謝」と称した「消えてもらう」ための切り捨て策ではないのか。

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