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未来の会

【番外編・最終回】医療の国際化と海外からの患者

【番外編・最終回】医療の国際化と海外からの患者
なぜ今「ドラッカー患者学」なのか

 筆者は、昨年4月に『治療格差社会 ドラッカーに学ぶ、後悔しない患者学』 (講談社+α新書)」を上梓した。この本をネタにこの番外編の最後に、日本の患者と海外の患者の違いについてまとめてみたい。

 なぜ今「ドラッカー患者学」なのか。

 日本においては患者が医療に関する意思決定に大きく関与することが少なかった。例えば、アクセンチュアによる「アジア太平洋地域における医療イノベーションおよび刷新調査2016年」では、「日本の生活者は健康を管理するにあたっての医療サービス依存度が高い」とされる。もう一つこの調査から得られたことは、「日本の患者は人同士の接触を強く望んでいる」ことである。

 このような、生活者である患者のマインドセットによって、日本では患者が自分の医療に関する意思決定に大きく関与することが少なかった。医師にお任せであったのである。

 もちろん、これらは悪いことばかりではない。詳しくは別の拙著の『日本の医療、くらべてみたら10勝5敗3分けで世界一』(講談社+α新書)を見てほしいが、日本は世界でも有数な国民皆保険制度の下、患者さんにとってはかなり恵まれた環境下に置かれており、すぐに医師を受診できる。

 従って、医師をすぐに受診できない国に比べて、つまり医師を受診しない選択も含め自分でいろいろ考えてから医師を受診する、というマインドセットの国に比べて、医療サービスへの依存度が高く、人同士の接触を望む(この場合は医師に対して)ことになる。

医療情報

 ICT(情報通信技術)は発達し、医療情報も世の中に氾濫しだしたが、当然ながら、個人や家族でどこまで医療の問題を解決できるのか、そして、そのためには正しい情報がいるという視点がある。確実に生活者側でのインターネットの使用率は上昇している。

 筆者も企業の顧問医である産業医を含め、診察業務を続けているが、そこでの実感は、生活者が求めているのは「正しい情報」ということである。

 生活者のブログなどで健康や医療情報が氾濫している。その膨大な情報の渦の中で、どの情報を取捨選択していいのかが分からないのが生活者の状況であろう。つまるところ、どの情報を基にして医師に意見を言ったり、質問をしたらいいのかがよく分からないのではないか。

 そんな中でもドラッカー患者学は、医師に対して意見を言ってもらうことを患者さんに推奨している。それはなぜだろうか。ここで、医療の理想を考えてみよう。

理想の医療と医療の変化

 患者にとっての理想は、安く、いいものを、いつでも(すぐに)得られることになろう。

 分かりやすい例として、ファストフードを考えてみよう。「うまい、安い、早い」といった表現が思い出される。しかしここで言う、「安い」と「早い」は客観的に証明されるが、「うまい」は値段の割に「うまい」ことであり、「値段の割」にという枕詞がなくなっているのが、誤解のもとである。

 2万円のフランス料理と、300円のファストフードが同じものであるはずがないし、同じ「うまさ」であるわけがない。

 しかし、国民皆保険制度の下、公定価格で平等を旨として行われている日本の医療は、「うまさ」は「値段」と切り離されている。これが、既に述べてきたように、「お任せ医療」になった原因の一つである。

 しかしポイントは、日本の医療が客観的には世界一であるのに、主観的な満足度では必ずしも高くないことである。

 この理由は、「うまい」が主観的なものであることだ。人間の主観は便利なもので、このくらいの値段であれば味はこんなものだろう、ということで満足してしまうのである。そもそも日本の医療の値段は安いのであるから、患者さんが費用対効果を考えれば、医療の成果を考えた場合には、いいものになるはずだ。

 しかし、これは難しい。というのは、値ごろ感というのは何か比較の物差しを持って初めて分かることであるからだ。通常、医療は個別性が強く、自分の病気の値ごろ感を比較することは難しい。だから、公定価格なのである。

 ということで、値段との比較では満足度は上がりにくそうだ。

 しかし、海外の患者の多くは「医療を購入する」、あるいは「医療を消費する」という考え方で受診に臨む。

 日本の患者もマインドを変えることで、上記のチャート図のような好循環が生まれていくのではなかろうか。

 同じように、医師などの医療者の側もドラッカーが言う、コミュニケーションの4つの基本原則である下記を理解することが必要であろう。

・コミュニケーションは知覚である。

・コミュニケーションは期待である。

・コミュニケーションは要求する。

・コミュニケーションと情報は異なる。

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