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第107回 政権浮揚は北朝鮮と民進党? 他力依存の安倍解散

第107回 政権浮揚は北朝鮮と民進党? 他力依存の安倍解散

 北朝鮮の弾道ミサイル・核実験に伴い、政治空白を避けようと一旦しぼんだ解散風は首相官邸内でひそかに勢力を蓄え、台風18号と共に一気に吹き出した。前原誠司代表率いる民進党で山尾志桜里・元政調会長の不倫疑惑が発覚、離党者も相次いだことで、千載一遇の好機を得たからだ。かつての「死んだふり解散」を思わせる戦略だが、そこには掲げるべき大義はなく、他力依存解散の感は否めない。

 「北朝鮮情勢が緊迫しているのに、解散する訳ないだろ。そもそも、野党の準備が整わないうちに衆院選をやろうなんて、姑息なことは考えていない。マスコミが言っているだけだ。あんなだらしない連中に、負けるはずがないだろ。馬鹿にしてもらっちゃ困る」

 9月初旬、自民党選対関係者は鼻息が荒かった。それもそのはず、テレビのワイドショーは「週刊文春」が報じた山尾氏の不倫疑惑で持ちきり。ダンスグループ「SPEED」元メンバーの今井絵理子・参院議員と神戸市の橋本健・前市議との不倫疑惑でさんざんな目に遭っていただけに、してやったりということだろう。

仲間を守れない民進党のマイナス思考

 山尾氏は東大卒で検事出身。小学生の時にはオーディションを勝ち抜き、ミュージカル「アニー」の主演も務めた。党内でも将来を嘱望された1人だったが、国会質問で「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログを取り上げ、一躍脚光を浴びた。

 前原執行部の目玉人事として幹事長への抜擢が予定されていたが、「文春砲」の一撃で、あえなく粉砕されてしまった。山尾氏も不倫相手とされた倉持麟太郎弁護士も男女関係は否定している。しかし、大事な時期に党を混乱させた責任は免れないとして、山尾氏は離党届を提出し、受理された。

 山尾、倉持両氏は法曹であり、司法の場で白黒付ける意向をにじませているが、結着には時間がかかる。勝訴しても、民進党が被ったマイナスイメージを払拭するのは難しく、10月22日の衆院補選を前に善後策を講じたということらしい。

 「濡れ衣だったとしても、新執行部や山尾氏のイメージダウンは避けられない。それが政界の定めなんだ。女性はこういう話に敏感だから、衆院補選でも女性票の目減りは避けられないだろう」

 民進党幹部はため息をついた。救いは文春の報道が幹事長就任前だったことだという。その通りなのだが、民進党の「ジャンヌ・ダルク」とまで称賛された仲間を守ろうという機運は乏しい。党の浮沈ばかりを語り、同僚へのいたわりや思いやりを感じさせないのは、この党が抱える欠陥の一つだろう。

 稲田朋美前防衛相のたび重なる失態に目をつむり、じっと我慢を続けた自民党執行部との対比で、それがよく分かる。自民党幹部が語る。

 「安倍晋三首相には第1次政権の時のトラウマがある。不祥事の連鎖で、閣僚がばたばたと辞任したことだ。不祥事による交代は最小限に止めるという考えなんだ。周囲があきれるぐらい、今の執行部は身内を守ろうとする。それが、自分のためになるからだが、一緒の釜で飯を食った仲間という連帯感も強いんだ。大きな声では言えないが、うちなら山尾氏をかばうと思うよ。それがあっさり離党なんだから、ご愁傷様としかいいようがないな」

 民進党が山尾氏をかばい切れないのは、党内に政治理念の異なる勢力が複数あり、前原体制が一枚岩ではないからだ。前原代表に近い山尾氏の幹事長起用には根強い反対論があり、これが党内融和を図らざるを得ない前原代表の意思決定に少なからず、影響を与えているのだ。

 民主党を離党した閣僚経験者はこんな感想を漏らした。

 「頭脳の明晰さ、分析力、政策立案能力のどれをとっても民進党は優れた人材を持っている。それが生かせないのは、新進党時代から引きずってきたマイナス思考のせいだ。何か事があるたび、悲観的に物事を考える。良く言えば思慮深いのだが、根暗なんだ。党の支持率が低いのも、多分にそのせいだと思うよ」

 確かに、蓮舫前代表の二重国籍問題への対応や、その辞任に至るまでの経過を見ても、自らの首を絞めるような自虐的な暗さが付きまとっていた。

かつてはカラッとした笑顔が魅力的だった蓮舫氏は代表就任後、引きつった笑顔しか見せなくなってしまっていた。

 国会議員は、国民の生命、財産を守る使命があるのだから、過度に楽観的なのは好ましくない。「一寸先は闇」の政界で生き抜くには、最悪の事態を想定して動く慎重さ、ある種のマイナス思考も求められるだろう。それでも、どこかでカラッとした笑顔を見せる陽気さ、プラス思考は必要だろう。

 「『人間だから魔が差すこともある。間違いなら素直に詫び、襟を正せばいい。彼女は我が党にとって大切な人材であり、寛容の精神で接して頂きたい』。このぐらいのことを前原代表が言えば、民進党は変われるのにな」

自民党幹部からは、そんな軽口も漏れた。

敵を欺くにはまず味方から

 波乱のスタートを切った野党第1党に対し、どん底かと思えた安倍政権は北朝鮮の暴走と野党第1党の「敵失」という他力で、浮上のきっかけを掴みかけている。

 安倍首相に近い自民党中堅議員が語る。

 「やはり、安倍首相は持っている。内政問題で窮地に陥ったかと思いきや、北朝鮮の暴挙で浮上のチャンスが巡ってきた。北朝鮮問題はハンドリングが難しいが、この問題に対処出来るのは、安倍首相しかいない。国際社会での存在感は増すだろうし、国民の目も内紛ばかりの野党ではなく、自民党に注がれる。衆院補選の完全勝利も見えてきたんじゃないか」

 北朝鮮問題は、安倍首相のライフワークであり、自分の得意な土俵で勝負するきっかけを掴んだのは確かだろう。

 首相周辺には、安倍首相の早期訪朝と、米朝交渉の橋渡しによる北朝鮮問題の結着を期待する声もある。あくまで希望的観測であり、一つ間違えれば泥沼に陥る危険性もあるが、万が一成功すれば、総裁3選どころか、アジアの名宰相として歴史に名を刻む話にもなる。

 北朝鮮問題勃発で、与党内には臨時国会での衆院解散は遠のいたとの見方が広がっていた。危機管理上、政治空白は望ましくないからだが、自民党長老は不敵な笑みを浮かべてこう言った。

 「任期満了まで後1年余。解散のチャンスはそう多くない。勝てると思った時が最善なんだ。野党の体制が整わないというのも動機の一つだろうが、最大の理由は、党内に解散はないとの空気が広がったことさ。よく言うだろ、敵を欺くにはまず味方からって」。

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