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未来の会

「地域包括ケアシステム」を推進する同時改定

「地域包括ケアシステム」を推進する同時改定
医療と介護を切れ目なく提供できる体制を作るために

超高齢社会に即した新たな社会システムづくりを加速するため「健康先進都市戦略」を策定した福岡市。その同市で活動を続ける「地域包括ケアを支える会」が6月16日、同市内のホテルで「医療・介護報酬改定の方向を探る」というテーマの公開例会を開いた。

 同会は地域包括ケアに関する活動を行い、地域福祉を推進していくことを目的とした団体で、2014年に発足。現在、会員数は約80法人。行政と連携しながら地域包括ケアシステムの福岡モデルの構築を目指している。この日も様々な業態や職種の市民約100人が熱心に耳を傾けていた。

 冒頭、福岡県第5選挙区選出の原田義昭・自民党衆議院議員が「今日、福井県の高速増殖原型炉『もんじゅ』の見学に行ってきました。日本は今、エネルギー政策も含めた大きな節目にあり、地域包括ケアも2025年問題を前に、政治だけでなく経済面でも、皆が知恵を絞り、協力していかねばなりません」と挨拶した。

 この日の講師は、厚生労働省医政局地域医療計画課の松岡輝昌氏。肩書は「医師確保等地域医療対策室室長兼在宅医療推進室室長」で、まさに地域包括ケアシステムを内側から見ている人物である。

地域包括ケアにおける地域医療構想の役割

 松岡氏はまず、「2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定においては、『地域包括ケアシステムの構築』が一番に考慮されたといっても過言ではないと考えている」と述べた上で、少子高齢化が進む日本の医療・介護政策の現状を説明した。

 日本は近い将来、人口構造が変化し、超少子高齢化・人口減少社会に突入する。医療・介護の担い手も減少する中、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい人生を全うできる社会を目指して「地域包括ケアシステム」が提唱された。地域で医療・介護が必要な高齢者を支えるため、家族や地域の医療機関、介護施設が連携できるように、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる2025年を目途に整備が進められている。

 具体的には「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の五つのサービスを一体的に提供できる体制を構築する。30分圏内で賄えるような循環型のシステムである。

 国は、医療において「病院完結型」から、地域で治し支える「地域完結型」を目指しており、医療機関の機能分化と連携という医療提供体制の再構築を促している。これを受け、各都道府県は医療機関から報告された情報を基に、二次医療圏(複数の市町村)ごとに2025年の医療需要や医療機能別の供給量などを推計し、地域の医療体制の目指すべき姿を「地域医療構想」として策定している。地域医療構想は地域包括ケアシステムを推進する上で重要な位置付けにある。

 松岡氏は地域医療構想に関して、「2025年問題とは、団塊の世代が一斉に75歳以上になるということですが、高齢化のスピードは地域によって違うのです。例えば、島根県と東京都とでは大きく異なっています。こうした地域差を考慮した医療構想が必要になるわけです」

 入院患者が増えているからと、すぐに病床を増やしても、数年から十数年で患者数が減少傾向になると、それらは不良債権と化してしまう。ならば、今の状態でやり繰りできる部分は、その方向を検討することが賢明であるとアドバイスする。

 「もう一つ大事な点は、将来的に、病院に行って診療してもらうという患者の姿勢も変わっていくことです。特に交通網の発達していない地域では、外来に行けない高齢者が増えてきます。そういう所では介護施設なども視野に入れた、いわゆる『在宅医療』に頼らざるを得なくなり、単に病床を増やす施策は通用しなくなります」

医療と介護の連携強化が大きな目的の一つ

 地域医療構想を推進していくためには、都道府県と市町村が垣根を払って話し合っていく必要がある。

 「診療報酬、介護報酬のいずれの改定も、医療と介護の連携を強化することが大きな目的の一つとなっています。そのため、介護サービスとの連携といったところに、大きく踏み込んでいます。例えば、在宅というものを『居宅』だけでなく、特養やグループホームなどの『施設』も視野に入れ、そこに必要な医療をデリバリーすることを可能にする施策も含まれています。介護と一体となって議論をしないと、医療サービスは適切に提供され得ないという意味においても、地域医療構想というのは『町づくり』『村づくり』と同義なのです」

 講演の後、参加者による質疑応答に移った。

 介護サービス会社を運営する男性は「事業者にとって在宅介護を行うインセンティブがあまり大きくないように感じますが、将来的には見直されるのでしょうか」と質問した。

 松岡氏は「在宅で介護を受ける方が増えるのは確かです。であるからといって、報酬面でのインセンティブはやり過ぎても歪みが出るため、慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。特に生活支援は今、厳しい状態だとも聞いていますが、地域支援事業の中で模索していくことになるでしょう」と答えた。

 原田議員からは「行政がそれぞれの分野で民間と情報共有していますが、行政の役割をどう考えますか」という質問が出た。

 松岡氏は「施設や健康保険に関する情報などは、行政が一番持っています。ただ、そうした情報を分かりやすい形にして世の中に出していくために行政が持つ技術は、まだまだ稚拙であると思っています。その点を研修などで学び、地域医療構想調整会議などの話し合いの場に、より分かりやすく納得できる情報を提供していくことが必要ではないでしょうか」と述べた。

 公開例会の後、同じ場で懇親会が開かれ、多くの参加者が情報交換を行っていた。

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