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第165回 厚労省ウォッチング 岸田政権下でも、厚労省復権の兆し見えず

第165回 厚労省ウォッチング 岸田政権下でも、厚労省復権の兆し見えず

 岸田文雄政権下で「厚生労働省外し」が目に付く。安倍・菅政権時代に冷遇された厚労省は、「再分配」に力を入れる岸田政権下での復権に期待を寄せるだけに、幹部らは気を揉んでいる。退潮気味の同省に代わり、前面に出ているのが財務省だ。

 「分かっています。厚労省は腰が重いようですので」。2021年11月11日、首相官邸。新型コロナウイルス感染症対策を政治主導で進める↖よう説く菅義偉前首相に、岸田首相はこう応じた。

 コロナ対策を巡り、当初厚労省はPCR検査拡充に否定的で、「第5波」では病床確保もままならず、入院難民が続出した。日本医師会や専門家に引き摺られている——。閣内外から政府のコロナ対策を見て来た岸田首相は、厚労省への不信を深めていたようだ。

 首相は就任後、10月15日には早速、「今より感染力が2倍強いウイルスが広がる事」を前提に、「第6波」に備え、入院患者の受け入れ数を3割増やすコロナ対策の「骨格」を示した。11月12日には対策の「全体像」を打ち出したが、骨格段階から厚労省が関与する余地は殆ど無かった。長年厚生労働分野の予算を担当してきた財務省出身の秘書官・宇波弘貴氏に議論をリードするよう、首相が指示した為だ。

 全体像に対し、厚労省幹部は「専門家の意見が反映されていない」と不満を漏らしつつ、同省が深く関わっていない事については焦りを感じていると言う。首相周辺は「医療機関寄りの厚労省に、入院患者受け入れ3割増は提案出来なかっただろう」と言い放つ。

 首相は自民党総裁選の段階から「新しい資本主義」を掲げ、再分配重視の考えを示して来た。安倍・菅政権で疎んじられて来た厚労省内には、失地回復への期待が広がっていた。

 それが新政権では発足時からつまずく。菅政権でようやく確保した首相秘書官ポストを召し上げられ、代わりに財務省は2人を送り込む事に成功した。新しい資本主義を巡って、首相は看護師・介護士・保育士の賃上げを再分配政策の目玉として掲げた。本来なら厚労省の所管分野だ。だが、9日に発足した「公的価格評価検討委員会」を主導したのは宇波氏ら財務官僚だった。

 同省はこの前日には財政制度等審議会の分科会を開き、介護士や保育士の賃金水準が低い事を明らかにした。財政再建が主要議題の会議では異例の事だ。更に「診療報酬や介護報酬等を通じた分配の有り方を見直す必要が有る」と厚労省の本丸に踏み込んだ。

 厚労省としては反撃を試みたい所だが、コロナの3回目のワクチン接種でまた批判を浴びた。自治体関係者から「事務作業が大変」と泣き付か↖れ、「2回目から8カ月後」と自治体に指示していたが、後に「6カ月も可能」と揺れ動いたからだ。臨床試験等を踏まえ、ファイザー製が「少なくとも6カ月後と設定する事は可能」と発表した事が背景に有る。

 更に、自治体側から「急に前倒しされても準備出来ない」との不満の声が上がると、「標準は8カ月。6カ月は例外」と後戻りした。自治体から「朝令暮改で苦労するのは我々だ」との不満が漏れる中、首相周辺は「だから厚労省任せにしちゃいけない」と呟いた。厚労省の地盤沈下は顕著になりつつある。

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