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第75回 厚労省ワクチン評価委員らにばらまかれたカネ

第75回 厚労省ワクチン評価委員らにばらまかれたカネ
虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
厚労省ワクチン評価委員らにばらまかれたカネ

 武田は9月2日、中南米を中心に感染が広がっているジカ熱のワクチン開発を、来年度から始めると発表した。さらに米国政府は武田のワクチン開発に対し、最大3億1200万ドル(約320億円)を助成するという。


 米国政府の助成が得られるという話題性は武田にとって好材料だろうが、事情はそれほど単純ではない。


 ジカ熱は、蚊によって妊婦が感染すると、新生児の脳の発育が不十分になる小頭症を発症する危険性があるとされる。すでに米フロリダ州立大学などの研究グループが、寄生虫のサナダムシを体内から駆除する際に使われる薬など2種類の化学物質が、ジカ熱のウイルスによって活性化される酵素の生成を抑え、ウイルスの増殖を防ぐ効果があることを突き止めた。


 今後、ジカ熱の治療薬が生まれる期待が高まっているが、まだジカ熱に有効なワクチンの方は存在していない以上、こうしたウイルス増殖抑制剤の開発に特化した方がより現実的な気がするが、それ以上に忘れてはならない重要な事実がある。そもそもジカ熱であれ何であれ、ワクチンとは重大な副作用こそあるものの、効果など最初からさほど期待できないという点だ。


 こうした認識が定着していないから、今回の米国政府の「助成」によって、何か武田の「ワクチン事業」に箔が付いたかのような錯覚が見受けられる。だが、当然ながらワクチンが製薬業界にとっては有望な商売のネタになるという事情もあり、御用学者も事実とは逆の宣伝に駆り出されているだけにすぎない。


 武田は、かつての業績を牽引してきた前立腺がん治療薬「リュープリン」や消化性潰瘍治療薬「タケプロン」、高血圧治療薬「ブロプレス」、糖尿病治療薬「アクトス」という、新薬の「4打席連続ホームラン」で売り上げの6割以上を稼ぎ出し、我が世の春を謳歌してきた。それが2000年代の半ば以降、次々と特許切れに見舞われ、売り上げが急減。13年には売上高が、08年の1兆円以上から4300億円に半減している。


そこからの脱却のために浮上した新事業の一つが、2000年以降、65歳以上の高齢者を中心に需要が増大していたワクチン部門であったのは疑いない。そのため武田は10年10月、ヒューマンサイエンス振興財団との間で、国立感染症研究所での勤務経験がある神田忠仁が発明した、「ヒト・パピローマウィルス・ワクチン」(神田HPVワクチン)に関する特許権の全世界での独占的使用について、ライセンス契約を締結した。


GSKワクチン社長だったウェバーの傷
 この「神田HPVワクチン」は当時、「子宮頸がんを引き起す可能性が高い高リスク型HPV15種類全てに有効なワクチンとなる可能性がある」(武田)とされた。同財団は、「神田HPVワクチンの研究が大きく前進することを期待している」とのコメントを発表したが、6年経っても武田が「神田HPVワクチン」を製品化したという話をまるで聞かない。


 だが、結果的に武田が子宮頸がんワクチンを製造・販売しないで正解だったろう。このワクチンを接種した多くの女性が全身の痛みやけいれん、歩行困難、視覚障害といったさまざまな健康被害に見舞われ、この7月27日には、63人の被害者女性が国と同ワクチンを製造・販売した製薬会社2社を相手取って、総額約9億4500万円の損害賠償を求める集団訴訟を東京など全国4地裁に起こしたのだ。


 おそらく裁判は、戦後の薬害事件の中でも有数のスキャンダルになることは間違いなく、この2社とは米MSDと英グラクソ・スミスクライン(GSK)の各日本法人に他ならない。言うまでもなく、武田現社長のクリストフ・ウェバーはGSKワクチン社の社長だった経歴があり、08〜10年にはアジア太平洋地域担当の上級副社長兼ディレクターを務めている。時期的にも同社の子宮頸がんワクチンが日本で接種されていた時期と重なるが、多少なりとも胸に痛みを覚えるところがないのだろうか。あるいは、裁判に証人として出廷する可能性はどうなるのか。


 武田にとって問題なのは、この子宮頸がんワクチンの薬害事件には直接関与せずとも、ワクチン行政をめぐる厚生労働省と製薬会社の汚濁まみれの癒着構造にどっぷりと浸っているという事実だ。


厚労省部会でまかり通る「利益相反」行為
 最初の舞台は、予防ワクチンの効果について議論する厚労省の「ワクチン評価に関する小委員会」(委員長=岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長〈当時〉)。10年8月から11年3月までに開かれていたが、当時、同委員会で自社の「インフルエンザ菌b型(ヒブ)」が評価対象になっていた武田は、岡部と委員の国際医療福祉大学教授の池田俊也、やはり委員で福岡市立西部療育センター長の宮崎千明の3人に、「寄付金」と称して50万円から500万円のカネを与えていた。無論、子宮頸がんワクチンの評価に絡んでいたGSK、MSD両社も同じ行為に手を染めている。


 3社のワクチンとも最終的に予防接種法に基づき、国が接種を奨励する全額公費負担となる定期接種となったが、こんなことがまかり通りながら、厚労省側は「金額も公開しており、問題はない」などと居直っている。しかし、これが利益相反でなくて何なのだ。


 14年2月26日に開催された、「平成25年度第8回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」と、「平成25年度第9回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」の合同会議——。冒頭、事務方が当日出席した10人(両会の定数は計15人)のうち、8人が「講演料」「原稿執筆料」などの名目で、現金を受け取っている事実をあっけらかんと報告した。


 武田はこのうち、実に6人の委員に複数の名目で現金を渡しているが、こうした現状が続く限り、ワクチンそのものの有効性が論議されるような機会など永久にあり得まい。その結果、ワクチンに限らず薬害も再発するだろう。


 周知のように、武田は14年のウェバー招請にあたり、最大限「グローバル企業」のイメージを振りまくことに専念したが、何のことはない。スネに傷を持つ外国人をトップに据えて旧態依然の官業癒着を続けるのが、「グローバル」云々とどう関係するのか。  (敬称略)

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