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第59回 またも崖っぷちの武田は「首位」を堅持できるのか

第59回 またも崖っぷちの武田は「首位」を堅持できるのか
虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
またも崖っぷちの武田は「首位」を堅持できるのか

 武田薬品工業がまたも崖っぷちに立たされた。

 糖尿病治療薬「アクトス」をめぐる米国での製造物責任訴訟。アクトスは武田が発売したかつての主力商品だ。累積売上高は3兆円を上回っている。4月29日、武田はこう発表した。

 「大多数の原告と和解することで合意した」

49年の上場以来初の赤字転落
 これにより、2015年3月期決算(国際会計標準)に引当金として合計27億 ㌦(3241億円)を計上する羽目に陥った。引当金には和解金の他、裁判に必要な関連費用なども含まれる。前期の連結最終損益は従来の650億円の黒字見通しから一気に暗転。1450億円の赤字となる。同じく引当金の影響で営業損益は従来の1700億円の黒字見通しから1300億円の赤字。

 武田が最終赤字になるのは上場以来初めてのことだ。武田の上場は1949年のこと。戦後とほぼ重なる時代を生き抜いてきた巨大企業は大きな節目を迎えたといっていいだろう。

 「徹底抗戦から引当金への方針転換の意味は大きい。これは4月に現実のものとなった現会長・長谷川閑史からクリストフ・ウェバーへの最高経営責任者(CEO) 職の禅譲によるものです。アクトスの副作用でがんになったという原告の主張を全面否定する長谷川路線から和解へと転換したのはウェバーの経営判断」(業界事情通)

 武田が抱えるアクトス関連の製造物責任訴訟は現在約9000件を数える。昨年春に米ルイジアナ州の連邦地裁陪審で、60億㌦(7100億円)に上る懲罰的賠償金支払いを命じる評決が出た。その後、2765万㌦(33億円)まで減額される。ここが和解のタイミングと考えたようだ。それでも、武田の財務への影響は少なくない。

 「武田は和解するに当たり、薬の副作用と膀胱がんとの因果関係は認めていません。これまでに判決が出た7件のうち5件でも因果関係はないと結論づけるなど、武田にとっては有利な内容です。ウェバーは莫大な訴訟費用負担によるダメージや武田にとって最大のマーケットである北米地域でのさらなる信用低下は得策でないと考えた。そうしたマイナス要因を払拭するため、和解によって訴訟の早期収束を図った。ただ、和解と法廷での勝訴は根本的に違う」(製薬企業関係者)

 ウェバーの「英断」は長谷川にはまねのできないものだ。だが、残念ながら、この方針転換で副作用問題が幕引きとなる保証はどこにもない。

 一口に9000件というが、これだけの訴訟を維持していくのは並大抵のことではない。国内最大の製薬企業にとっても手に余った。何しろ「弁護士費用だけでも年間100億円は下らない」(法曹関係者)との見方もあるほどだ。

 武田が今回積んだ引当金は日本企業が米国での訴訟に対応したものとしては史上最高額。これまでには、東芝が米パソコン訴訟に伴う和解費用などで1100億円の特別損失を計上したり(1999年)、トヨタ自動車が大規模リコール(無償回収・修理)に関して司法取引での決着を視野に米司法省に約1200億円の制裁金を支払った(14年)事例などがある。いずれも武田とは比べものにならない規模だ。

 武田はアクトスについて「正しい処方で服用すれば、安全性に問題はない」と強弁。背景にはアクトスの副作用について10年にわたり米ペンシルべニア大学などが検証したデータがある。そのデータによれば、膀胱がんとアクトスの長期投与に因果関係は認められていない。武田はこの検証結果を米食品医薬品局(FDA)に提出している。

 武田は「今後も米国や日本など世界で引き続き、アクトスを販売していく」と言明している。

 最終赤字に転落しても、15年3月期は予定通り年間配当180円を維持するものとみられる。武田名物の高額役員報酬も引き下げはない公算が大。14年3月期には長谷川が3億500万円、山田忠孝、フランク・モリッヒの両取締役はそれぞれ8億3500万円、9億6900万円をせしめている。業績がこれだけ悪化する中、これらの額は果たして妥当なものといえるのだろうか。

 「ウェバーの報酬額はけだし見ものです。彼をはじめとして役員の懐が依然として温かいままだとすると、武田の内部統制は絵に描いた餅にすぎません。長谷川が愛してやまない米国流の経営哲学とも全くそぐわない。長谷川は自らが主導した大型の企業買収をどう考えているのか。責任感の欠如は否めないでしょう。市場や創業家が手をこまねいているはずがない」(証券会社OB)

16年度以降に国内事業が好転?
 今や渦中の人となったウェバー。5月15日には決算会見の場にいた。14年度の国内医療用医薬品売上は4%弱の減収。ジェネリックの市場浸透に伴う長期収載品の売上減を新製品群の伸長でカバーできなかったことが響いた。15年度も減収を見込んでいる。まさにジリ貧そのものだ。

 それでもウェバーは強気の姿勢を崩さない。

 「医師からの評判を持っている。新製品を患者に迅速に届けることができ、新製品の立ち上がりは非常に強い」

 「(新製品やMR活動に)ダイナミックな力があり、長期収載品の落ち込みを補える」

 「長谷川の後釜」はなんと16年度以降に国内事業が好転するとの見方を示したのだ。ご同慶の至りと申し上げるほかない。

 「ジェネリックの急速な拡大で市場の伸びがフラットになる中、各社ともどのようにしてこの壁を乗り越えるか、持続成長を果たしていくかに取り組んでおり、当社も決して楽な状況ではない」

 これは会見に同席したジャパンファーマビジネスユニットプレジデント、岩﨑真人の発言。国内医療用医薬品市場の動向について述べたものだ。ウェバーに比べれば、まだ誠意が感じられる。

 その岩﨑にしたところで、こんな大言壮語も吐く。大本営発表はとどまるところを知らない。

 「国内ナンバーワンのポジションを堅持する」

 武田は夏をめどにこれからの時代に求められるMR像とカスタマーの検討・再定義に乗り出す。検討・再定義の理由は①16年度診療報酬改定で病院機能が急性期、亜急性期、慢性期などに分かれ、中長期的には医療や介護を一体となって地域完結型で提供(=地域包括ケア)する方向②16年度にジェネリックのより一層の使用促進やHTA試行導入が指摘されている──の二つの理由から。不要論がくすぶる中、MR像を追うことで果たして武田の再浮上はなるのか。

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