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業務効率化・コスト削減に「RPA」が貢献

業務効率化・コスト削減に「RPA」が貢献

DX、IoT、AI……ローマ字の略語が大手を振ってまかり通るICT(情報通信技術)の世界で、近年、注目を集めているのがRPAである。コロナ禍にあって、働き方改革を迫られている医療現場におけるRPAの導入について考察してみたい。

 RPAとは、「Robotic Process Automation」の頭文字を並べたもので、コンピュータ上で行う事務作業のような定型作業をロボットが代行し、自動処理する事だ。少子化社会において労働人口が減少している中で、業務改革の切り札として登場した。

 産業界では、2016年が「RPA元年」とされる。調査機関の調べでは、3社に1社がRPAを導入し、金融機関を中心に、大手企業では既に40%近くで活用されているという。

 ロボットと言っても、RPAで活躍するのは二足歩行の自立的なロボットというわけではない。自動化のためのソフトウエアと考えればいいだろう。

 一般に、RPAには、3段階のレベル(クラス)があるとされる。まず「クラス1」のRPAとは、いわゆる定型業務に対応したシステムを指す。次の「クラス2」は「Enhanced Process Automation(EPA)」であり、AI(人工知能)等と連携させ、非定型業務も一部自動化する。最高位のクラス3は「Cognitive Automation(CA)」で、この段階では、より高度なAIと連携させる事で、業務プロセスを改善するだけでなく、意思決定の支援も自動で行うようになるという。

 先行して積極的に導入している金融機関でも、なお、クラス1のレベルにとどまっているとされる。

 いわゆるホワイトカラーも、これまでは膨大な事務作業を担わざるを得なかった。いざ働き方改革による改正法が施行されて、残業時間を減らそうとすれば、生産効率を向上させ、余剰となった人的資源を成長分野へ振り向けたいというのは、当然の流れだろう。

 ロボットは24時間・365日、故障しない限り、一度作業を覚え込ませれば、指定したルール通りに一定のテンポで正確に繰り返し実行する事が出来る。人間が介在すると、感情の波、効率の波、速度の波といったムラが生じるが、これらも排除する事が出来る。

電子カルテのデータを基に自動作成

 これが、医療現場においても極めて有用であろう事は、想像に難くない。診断書、紹介状(診療情報提供書)、療養計画書、訪問看護指示書等、定型的な書類を日々膨大に作成しており、統計や転記作業も広範に渡って行われている。

 一方で、電子カルテには電子的データが蓄積されているため、ここから必要な情報をRPAによって加工して、各種の書類を自動的に作成する事が出来れば、大幅な効率化が期待出来る。

 簡単な例を挙げてみよう。RPAが最も得意とするのは、経理処理や集計処理である。病院では、それに加えて、例えば、「NCD(National Clinical Database」等の統計データベースへの入力といった業務がある。NCDとは、2010年に10の外科系臨床学会により発足した組織(後に5学会が追加)であり、2011年から手術症例の登録を始めて、症例のデータベースを構築している。

 RPAについて、人が入力する場合には、患者基本台帳から患者の生年月日を、手術台帳の画面から手術日を抽出する等、複数の電子カルテの画面を参照しなくてはならない。これを3つのロボットのシナリオで入力する。

 まず、電子カルテからCSV(カンマ区切りのテキストデータ)ファイルを出力して、次にRPA用に加工、更にNCDの基本登録画面に自動転記するというものだ。実際に施行した病院では、転記業務の時間を半減出来たという。

 医療機関におけるRPAの利用実績はまだ少なく、導入途上にある。

 RPAによって、医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進と、勤務環境の改善、医療の安全・質の向上を図ろうと、2019年には、一般社団法人メディカルRPA協会(理事長=石黒直樹・愛知県医療療育総合センター総長)が設立された。

年間費用対効果が368万円の病院も

 協会では、医師・看護師を含む医療従事者の過重労働の現状を解決する目的で、RPAを導入した効果を検証するため、2018年からRPA導入の取り組みを進めている東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市、570床)を対象に、「医療機関におけるRPA活用に関する実績検証」を実施した。

 結果は、年間で約2453時間の業務時間が削減され、それに伴う人件費の額は約368万円と試算された。

 同院では、2018年11月よりRPAテクノロジーズのRPAロボットを採用し、看護日誌の統計、入退院患者の管理、院外処方箋の受付作業等のルーチン業務を代行させている。

 具体的には、前日入院患者の帳票印刷、退院患者アセスメントシートチェック等で、医療情報システムから放射線科に至るまで、院内では9つのロボットが稼働している。これらをトータルしたところ、業務時間が約2453時間削減された。また、それぞれの業務を医療事務職の平均時給に換算して削減時間を乗じた結果、約368万円と弾き出された。

 働き方改革のため、東京慈恵会医科大学附属病院においても、同社のRPAを活用して事務職員のタスク軽減の効果が検討された。

 外来患者数報告業務、未作成・未承認の退院サマリー抽出業務ロボットを構築して、RPAによる業務代替の所要時間を計測し、RPAの稼働時には職員が業務を行う場合と比較して約90%の業務時間が削減するという結果が得られたという。

 気になる導入費用だが、例えば、旭川赤十字病院(北海道旭川市、一般480床)が2019年に導入したアシリレラのRPAツールの場合、フル機能版の利用料金は、1アカウントで月額12万円。業務に応じた設定等のサポートは、販売代理店が有償サービスとして行う。ベンダーや製品は様々で、大病院だけでなく、クリニックや在宅医療等を支援するRPAもある。

 新型コロナ感染症は、本格的な冬に向かう中で第3波が到来している。患者の増加による病床の逼迫、受診を控える患者の増加による減収、予定入院・予定手術の延期等は、今後も繰り返される可能性がある。

 また、医療従事者が減少し、希望する人材が集まらないといった事態にも遭遇しており、病院では、スタッフ1人当たりの業務量は増加して、医療従事者は疲弊している。

 RPAに事務作業を肩代わりさせる事で、本来医療従事者が行うべき事に集中出来るようになれば、医療の質向上に資する事が出来るだろう。コロナ禍が、医療分野におけるRPAを加速させるかもしれない。

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