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未来の会

超高齢化社会で進むフレイル予防の普及

超高齢化社会で進むフレイル予防の普及

健康長寿延伸を目標に住民主体の活動モデルを構築

超高齢化社会が到来している。将来的に85歳以上の人口が都市部を中心に急増し、2040年には1000万人に達する見込みだ。要介護者の増加や介護者の高齢化が課題となる一方、医療・介護従事者不足や医療体制の逼迫が深刻な課題となっており、従来の体制では対応が困難だ。早急な見直しが求められる中、現在、自治体を中心として「フレイル予防推進」が進められている。

 「フレイル」とは、「健康状態」と「要介護状態」の中間に位置付けられる段階だ。フレイルの段階であれば健康状態に戻れる可能性が高く、要介護状態の早期予防として注目されている。神奈川県知事でもある黒岩祐治氏が会長を務めるフレイル予防推進会議は、24年11月に「フレイル予防啓発宣言」を策定した。黒岩氏は「誰もが自分らしく生き生きと暮らせる国として次世代に引き継げる様、高齢者の健康課題に対するコンセプトを根本で変えなければ乗り越えていけない」と話している。

 フレイル予防の更なる拡充に向け、同会では「フレイル予防5か年計画」の策定を進めている。同計画では、後期高齢者に対して15問の質問表を活用した住民主体のフレイル測定を都道府県単位で横展開し、それにより全国に普及する事を目指す。

 最終的には、今後10年で住民主体のフレイル測定を全国に定着させる方針だ。要介護状態を未然に防ぎ、超高齢化社会に於いても人々が自立した生活を送れる社会作りを目指す。その為には、各都道府県、そして各市町村による積極的な活動の推進が求められる。神奈川県をはじめ、既に取り組みを始めている自治体も在り、先行取り組み自治体からの横展開によるフレイル予防の普及が期待されている。

推進に必要なのは人材確保と啓発活動

住民主体のフレイル測定を定着させる為に現在求められているのは専門人材の確保だ。だが、フレイル予防の概念は未だ一般的に定着されているとは言えず、市町村単位では難しいのが実情でもある。そこで神奈川県では、市町村への専門職員等派遣事業や介護予防事業担当者等を対象にした研修会、専門アドバイザーによる伴走支援の実施により、地域包括ケアシステムの深化を図っている。

フレイル予防の専門的知見を持つ人材を育成する事で、より多くの住民へフレイル測定を行う体制が整備出来る。神奈川県は以前から東京大学高齢社会総合研究機構と連携し、全国に先駆けてフレイル測定促進に取り組んでいる。加えて同県では、食事、運動、社会参加の3本柱からなる「未病改善」を提唱しており、これをフレイル予防にも活かす方針だ。

24年度は同県三浦市に於いて、国のモデル事業の一環として市民へのフレイル測定を実施した。26人のフレイル測定サポーターを養成し、通いの場(高齢者が日常的に交流出来る場所)や市民まつり等に於いて住民を対象に測定会を実施。県の担当者は「三浦市のモデル事業を好事例として県内へ展開し、市町村を支援したい」と話す。

健康長寿日本一に向けてのフレイル予防活動

フレイル予防5か年活動計画ではフレイル予防の政策体系として、無関心層も組み込んだ地域住民への広報啓発活動及び環境整備を行う「ポピュレーションアプローチ」と、ハイリスク者を特定し専門家が対応する「ハイリスクケアアプローチ」を組み合わせる事が有効とされている。特にフレイル予防に於いては、健常或いはフレイル以前の段階で対応する事が効果的である事から、効果的なポピュレーションアプローチの推進が不可欠である。

その中で高知県ではフレイル予防の推進を政策に位置付け、実態把握、ポピュレーションアプローチ、ハイリスクケアアプローチの3つの視点で取り組む事とした。

高齢化が先行して進む同県は、高齢単身世帯数の人口割合が全国1位となっている。高齢者の孤立防止に必要な県民の地域活動への参加率も09〜24年の15年間で約 74%から約43%へと大きく減少している。又、健康寿命を見ると、女性は全国平均を上回っているが、男性は全国で46位と全国平均を下回っている事から、「日本一の健康長寿県構想」を打ち立てている。

第5期構想(24〜27年)では「健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進」とした施策の中に於いて「フレイル予防の推進」との柱を掲げ、実態把握、ポピュレーションアプローチ、ハイリスクケアアプローチの実施により、フレイルリスクが有る高齢者を早期発見・介入し、予防する事で要介護状態を未然に防ぐ事を目標に定める。

その内25年度の取り組みとして、フレイルチェックアプリの普及等の民間との協働によるフレイル予防活動の展開や、住民活動支援の為の研修会開催や講師派遣等といった住民主体のフレイル予防活動の支援、機能回復訓練の場の活用支援の3点を実施した。

特に、フレイル予防推進会議のバックアップの下行われた市町村職員に対する研修会では、20市町村から57人が参加。医療経済研究機構(医療経済研究・社会保険福祉協会)の神谷哲朗氏による講演及びNPO法人フレイルサポート仁淀川の小松仁視氏の報告が行われ、住民と行政が一体となったフレイル予防の取り組みについて検討した。

住民主体の促進活動が健康改善の好循環を生む

高知県では研修会を機に、2つの自治体で新たな試みが始まっている。南国市では、商業施設でのフレイル予防イベントの開催や企業と連携したフレイル測定の実施に向け、トレーナーの増員や短時間で実施できる簡易フレイル測定の活用等の強化策を検討中だ。芸西村では、行政として介護予防に取り組んできたものの、介護事業参加者が固定化し無関心層への周知が難しい事から、フレイルサポーターの養成が行われた。行政に依存せず、住民が主体となってフレイル予防推進の活動ができる体制を整える事により、無関心層への周知を拡大する狙いだ。

同県としても、市町村の取り組みをバックアップする為に、上級トレーナーや専門サポーターの派遣、フレイル測定に関する研修開催の支援を行っている。ポピュレーションアプローチに力を入れる高知県の今後の展望は、住民主体のフレイル予防活動を通した地域作り・支え合い活動の展開だ。先ずは自分の健康状態を数値化し、その状態に気付く事で自分事として取り組んで貰う。そして、それを身近な人に勧める事でフレイル予防に取り組む仲間が増加し、地域の活性化に繋がる事が期待される。

同県子ども・福祉政策部は「健康状態改善の好循環を広げる為に本県では、研修会を通じて新たな測定手法に関心を示した市町村を訪問し、新たな測定手法の活用を提案している。今後も関心を持つ市町村の住民を対象にフレイル測定の体験や活動の機会を提供し、フレイル予防活動による地域づくり・支え合い活動の展開及び拡大に取り組みたい」としている。

6都道府県を筆頭に全国への横展開を目指す

フレイル予防推進会議は、「フレイル予防を通したまちづくり」により要介護認定率の伸びを抑制する事を活動の基本方針としている。その為都道府県単位で、各市区町村に於ける住民主体のフレイル測定の網羅的な実践の必要性を訴えている。数値目標としては、都道府県単位の集計として、通いの場に於ける住民主体のフレイル測定の延べ実施件数の65歳以上人口に対するカバー率が、当該都道府県毎の65歳以上人口に対する通いの場への参加カバー率に達する事としている。

又、フレイル予防5か年活動計画の先発都道府県としては、神奈川県や高知県を含めた6都道府県が位置付けられており、そこから横展開を広げる方針だ。取り組みを加速させる為に、医療経済研究・社会保険福祉協会との連携を図り、全国でのフレイル予防推進に向けての改革実現を目指すとしている。

フレイル予防による健康寿命の延伸は、人々が超高齢化社会を生きる為に重要な施策であり、先行自治体からの横展開の加速が期待される。

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