
2025年盛夏。隣の大国、中国が目の離せない状況になりつつあるという。中国ウォッチャーからは「習近平国家主席の進退」を匂わせる情報が発信され、永田町でも関心が高まっている。一方、参院選は選挙戦の最中に米国トランプ大統領から石破茂首相宛に「日本からの輸入品に8月1日から25%の関税を掛ける」 との書簡が送られたことで、情勢が一層複雑化した。日米交渉の〝危機バネ〟効果 が劣勢の与党を押し上げるとの受け止めが在る一方で、「石破政権では見捨てられる。政権交代だ」との見方も増えた。政局も国際情勢も見通しが立たず、混沌の中、熱波だけが強まる状況に陥っている。
中国・習主席の権力基盤に変化?
手元のAIと問答している内に気になる情報が目に留まった。中国の習主席の政権基盤に関するものだ。ネット情報を追うと「習近平失脚」等のおどろおどろしいもの迄出てくる。言論が統制されている中国では政治に関する情報は世に出難い。政権中枢の「中南海」に至ってはほぼブラックボックスである。この為、ネット上には悪意の有る嫌中派の憶測が出回り易いが、やや信頼の置けそうな米国の保守系シンクタンクのリポートに行き当たった。
中身は簡単に言うと、習主席の「権力低下」の兆候が複数見られるというものだ。それによると、国営メディアで習主席への言及が急激に減っており、『人民日報』や『新華社通信』等、これ迄なら「習主席の指導の下で」等の忖度文言が必ず見られた報道から、習主席の名前が姿を消しているという。習主席を巡っては、軍部の側近らが相次いで更迭された事等が日本のメディアでも報じられており、米国発のリポートを契機にSNS等で「辞任説」や「失脚説」が広がった様だ。
実態はどうなのか。中国とパイプの有る自民党長老は「習主席は外遊をこなしている。政権基盤が不安定であれば実現が難しい行動だろう。更に、9月には天安門での抗日戦争勝利80周年イベントで演説すると発表されている。今すぐにどうこうというものではないだろう」と話した上で、「習主席は慣例を破って共産党の総書記3期を実現し、今に至っている。4期目がどうなるかは2年後の共産党大会で決まるが、権力闘争が激しくなりつつあるのは確かだろう。様々な憶測が飛び交うのはそのせいだろう」と意味深に付け加えた。
習主席がブラジルで7月6〜7日に開催された有力新興国グループ「BRICS」の首脳会議を欠席した事も様々な憶測を呼んだ。中国はBRICSを米国主導の国際秩序に対抗する上で重要な多国間の枠組みと位置付けており、トップの欠席は異例だ。中国外務省は「日程上の問題。代わりに李強首相が出席する」と手短に発表したが、中国の最高指導者は09年の第1回首脳会議から欠かさず出席しているだけに中国ウォッチャーをざわつかせた。
欠席したのには複合的要因が有ると見られている。1つは内政事情だ。経済不況への対処等に加え、8月上旬に予定されている「北戴河会議」と呼ばれる共産党長老らとの会議の存在が指摘されている。この会議は河北省北戴河の海岸沿いの別荘地で開かれるもので、習主席ら現役幹部と、引退した長老(元幹部)らが人事等を話し合う会議とされる。
通常なら、長老らの愚痴を聞く、いわば〝ガス抜き〟なのだが、今回は様相が異なると見られている。
先の自民党長老が指摘した様に27年に次期リーダーとなる総書記を決める共産党大会が控えているからだ。習主席の総書記引退か、或いは4期目突入かがここで決まる。例年なら、リゾートでシャンシャンの「北戴河会議」は、2年後の共産党大会に向けた権力闘争の一環として俄然重要視されているのだ。
中国ウォッチャーの1人は「中国共産党の要人人事は数年前からレールが敷かれるのが通例だ。現に習主席は就任の5年ほど前に本命候補の地位を確立している。習主席は異例の3期目で、絶大な地位を持っている。この為、長老連中も容易に口を出し難かったが、経済不況の蔓延等で執行部に対する風当たりが強く、共産党大会の2年前になって〝ポスト習〟が動き出した」と解説する。
今後については、「習主席はロシアのプーチン大統領の様に死ぬ迄やりたいのだろうが、長老格の大半は交代を求めている様だ。習主席はトランプ大統領との米中首脳会談等を控えており、進退問題は表に出てこないだろうが、幹部人事等、端々に権力の質的変化が出てくる筈だ。この夏、中国は重要な節目を迎えると思う」と予言した。
現状では苛烈な権力闘争ではなく、穏健な権力移譲になるとの見方が多く、習主席を含めた集団指導体制への移行が浮上しているらしい。韓国では大騒動の末、大統領が変わり、日本も少数与党がよたよたしながら政権運営を続けている。隣の大国の内なる動きがどうなるのか注視する必要が有る。
自民の関心は専ら参院選後
さて、その少数与党だが、参院選では苦戦模様だ。石破内閣支持率は横這いから下降気味。非改選議席と合わせて過半数という低レベルの目標の達成も「良くてギリギリ」、「悪ければ過半数割れ」との見通しだ。
どう転ぶかはっきりしないので、今回もAIの声を聴いてみる事にした。いずれも参院選の予想獲得議席数(7月4日時点)である。前回も利用した「Copilot」では、自民45議席、公明8議席である。「ChatGPT」は自民48議席、公明9議席。もう1つ、今回は「Gemini」にも尋ねてみた。結果は自民55議席、公明11議席で、3つのAIの中では自民が最も強く出ている。
いずれのAIも各メディアによる内閣支持率や政党支持率調査、都議選等、過去の得票を参考に予想している。多少のバラツキは有るが、自民、公明両党とも議席を大幅に減らすが、「非改選議席と合わせて過半数」は辛うじて維持出来るとの予想だ。
バラツキが出れば突っ込みようも有るが、何せ計算高い面々なので冒険心は乏しい。過去の大敗データでも入力しようかと思ったが止めて置く。
自民党選対関係者の生の声も聴いてみた。「劣勢だが、どの程度負けるのかは正直分からない。只、言えるのは、今の野党には政権担当能力が無いという事だね。参院選は政権選択の選挙ではないが、今回は疑似衆院選というか、事実上の政権選択選挙の色彩が強い。それがどう出るかだ」。「立憲民主党は前の国会で内閣不信任案の提出を見送ったが、小沢一郎さん(衆院議員)の言った通り、政権を奪取するなら絶好の機会だった。でも、出来なかった。あそこで出来ないのなら、永遠に出来ないね。言葉は悪いが、国際情勢もヘチマも無いって割り切らないと天下は取れない。俺には政権運営の自信が無いとしか見えなかった」。
自民党幹部は「参院選は過半数が維持出来ればそれはそれでいい。仮に維持出来なくても自民党の比較第1党は変わらない。野党の連合政権が出来るかも知れないが、短命だろうし、俺は出来ないと思っている。そもそも取りまとめ役がいない。自民党と何れかの野党が手を組む事だって有り得る。その時、首相は誰になるかという事が重要だ」と負け惜しみとも取れそうな言い様だ。
言いたかったのは、参院過半数維持でも過半数割れでも、ポスト石破が動き出すという事だろう。
「過半数を維持出来たとしても、政権運営は厳しい。野党の要求はエスカレートするばかりだから。次の衆院選が何時になるかが焦点になるだろうし、その際、次期自民党総裁は誰になるのかという事だよ。過半数割れしたなら、勿論、新総裁選びになるだろう」
自民党有力者の関心は寧ろ参院選後の政局に在る様だ。中国同様、地下水脈で権謀術数が熱い渦を巻いている。政治の世界も暑い季節に入っている。
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