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未来の会

第29回 新型コロナウイルスに振り回される健康局

第29回 新型コロナウイルスに振り回される健康局
日下英司・健康局結核感染症課長

 年明けから新型コロナウイルスが世界的に流行し、その対応を巡って厚生労働省健康局が振り回されている。初動が遅れた中国に引きずられて厚労省の出足も鈍く、騒動が広がるたびに対応は後手に回った。専門家気質で説明下手な厚労省の対応に業を煮やした与党や世論から批判を浴び、官邸主導で中国人の入国禁止を打ち出す等、場当たり的な対応が目立つようになる。振り回され続ける健康局からは「もういい加減にしてほしい」と恨み節が聞こえてくる。

 結核感染症課長として最前線で対応するのは、日下英司氏(2001年、旧厚生省)だ。愛媛県出身で地元・愛光高校から九州大医学部に進学した医系技官。入省当初は臓器移植対策室や防衛庁衛生官付に配属され、ロンドン大大学院に留学した。新潟県庁や在ニューヨーク国連代表部に派遣され、その後は大臣官房国際協力室長、国立国際医療研究センター国際医療協力局長を歴任し、19年4月から現職に就いている。国際保健分野のスペシャリストだが、感染症対策のプロというにはこころもとない。

 国内で陽性事例の判明があれば、記者会見を開いてマスコミや国民に説明するのが日下氏の役割だ。会見はテレビ中継されることもあり、お茶の間でも知られる存在となった。丁寧に応対はするものの、時折説明が長く、笑顔を見せる事もあり、インターネット上では「なぜ半笑いで会見をしているのか」「ニヤニヤして不謹慎だ」等と書き込まれ、一部から不評を買う結果となってしまった。厚労省幹部も「もっとはっきり言い切って国民に安心感を与えるべきだ」と注文する。陽性事例が続いた時期は毎日のように1〜2時間に及ぶ記者会見を開いた心労に加え、こうした不評も重なり、省内からは「体調は大丈夫か。限界寸前ではないか」と心配する声も漏れた。

 一方、会見に同席する事が多い健康局結核感染症課感染症情報管理室の梅田浩史室長(1992年、旧厚生省)は大阪府立大農学部獣医学科卒の獣医系技官。医薬・生活衛生局分野が長く、在中国日本大使館勤務時代は中国産冷凍餃子による中毒事件を契機に設けられた「食の安全担当官」に就いた。感染症分野への手腕は未知数といえ、ある大手紙記者は「人柄は悪くないが、説明が冗長で要領を得ない事が多い。会見が長くなる要因となっている」と指摘する。

 情報発信の不得手さから世論に正確な情報がなかなか届かず、それに政治家が反応し、厚労省を問い詰める悪循環が続く。ある自民党幹部は「厚労省は疫学的、専門的な観点から施策を組み立てているが、一般人の不安に応える感覚が足りない。厚労省がやろうとする施策は官邸と一緒に動いてことごとく修正している」と明かす。

 健康局には労働部署も含め省内全体から100人以上の職員がかき集められている。ある職員は「急に明日から応援に入れと言われたが、何をしていいのか指示がなく分からなかった」と苦笑する。応援に職員が取られれば残された職員はその分の仕事をこなさなければならない。「仕事が減る訳じゃないので、残された方も大変だ」とぼやき節も聞こえる。「強制労働省」の面目躍如だが、国民への情報発信という本質的な改善は図られていない。

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