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救急とがんの2本柱で地域の基幹病院に・医師数を急増させ短期間で病院の活性化に成功

救急とがんの2本柱で地域の基幹病院に・医師数を急増させ短期間で病院の活性化に成功
加納宣康(かのう・のぶやす)千葉徳洲会病院院長
1949年岐阜県生まれ。76年岐阜大学医学部卒業。岐阜大学医学部助手。羽島市民病院外科部長、松波総合病院外科統括部長、インドのマハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部助教授などを経て、96年亀田総合病院外科部長兼内視鏡下手術センター長。2014年同病院副院長。16年4月より現職。1993年に米国外科学会から International Guest Scholarshipを授与される(日本人初)。『医は仁なりいまだ健在』『いい患者さん、困った患者さん』『腹腔鏡下手術テクニックマニュアル』など編著書多数。

亀田総合病院の辣腕外科部長として自ら手術で腕を振るい、若い外科医の育成に尽力してきた加納宣康氏。かねてから徳田虎雄氏(徳洲会グループ創業者)に要請されていたという徳洲会病院の院長職に就いたが、任されたのは経営がうまくいっていなかった千葉徳洲会病院だった。新院長として、就任時には28人だった医師を1年ほどで44人に増やし、今後も増やす予定という。活性化した病院は救急医療とがん診療を2本柱に、経営状態の急激な回復を見せている。

——院長として、どのような病院を目指していますか。

加納 徳洲会病院といえば、30年ほど前の創立当初から、24時間365日、患者さんを断らないということを大切にしてきた病院です。つまり、救急医療を中心とした病院だったのですが、今の時代はそれだけでは多様化する医療ニーズに応えられません。救急はもちろんこれからもやっていきますが、がん診療をしっかりやらなければならないと思っています。日本人の半分が生きているうちに1度はがんになり、3人に1人ががんで死亡する時代です。救急医療とがん診療、これを2本の柱にして、千葉徳洲会病院は時代が求める病院へと変貌を遂げている段階です。

——病院の建物は新しいですね。

加納 3年前に新築して現在の場所に移転しました。旧病院は800mほど離れた所にあったのですが、院長に就任したのが昨年4月なので、私はその病院のことは知りません。

——がん診療を病院の柱とするために取り組んでいることは?

加納 新しく医療機器を購入する必要がありました。PET-CT、放射線治療装置などです。それから、手術支援ロボットの「ダ・ヴィンチ」も入っています。高額な医療機器を思い切って導入したので、初期投資は億円単位になりました。がん診療には、手術はもちろん重要ですが、化学療法も放射線治療も必要です。化学療法を充実させるには、それほど大きな初期投資は必要ありませんが、放射線治療をやるとなると非常に高額な医療機器を購入しなければならないので、それが大変です。国立病院や自治体病院なら、そういう初期投資は国や自治体が負担してくれて、ランニングコストだけ考えればいいのかもしれません。しかし、民間病院ですから、自分達が借金して購入したら、自分達で稼いで返さなければいけません。額が億円単位となると容易なことではありません。

医師を増やすことでしか収益は増えない

——院長に就任して何に取り組みましたか。

加納 それを理解してもらうのに一番分かりやすいのが、医師の人数の変化だと思います。私がこの病院に来た1年3カ月前、医師は28人しかいませんでした。あまりの少なさに愕然としたのを覚えています。そこで、とにかく医師を集めることに取り組んできました。現在は44人で、もうすぐ47人になる見通しが立っています。

——医師が増えたことで、どのような変化が?

加納 いろいろな変化が起きていますが、分かりやすいところでは、病床稼働数が増えています。この病院の病床許可数は391床なのですが、先月まで稼働可能病床数は350床でした。医師不足と看護師不足が原因で、41床を閉じていたわけです。それが現在は367床に増えています。これも、医師と看護師の数を増やしたことによる影響といえるでしょう。

——看護師も不足しているのですね。

加納 看護基準が現在は10対1なのです。私の前任地である亀田総合病院でもそうでしたが、10対1だと、看護師はなかなか集まりません。7対1看護を目指していますが、看護部長の話では、そう遠くない将来、7対1の看護基準が取れると言っています。そうなれば、状況が随分変わると思います。

——最初に医師数を増やそうと考えた理由は?

加納 単純なことです。医療というのは、オーダーを出す医師がいなければ、何も進まないからです。オーダーを出す医師を増やさないことには、病院の発展はあり得ません。それで、とにかく医師を増やすことを第1の目標にしてきました。大まかな目安ですが、医師を1人増やすことによって、病院の売り上げは1カ月で1000万円増えます。

——何人まで増やすのですか。

加納 私は60人くらいまで増やしたいと思っているのですが、ひとまず50人くらいまで増やしてみて、その段階でちょっと考えてみようと思っています。と言いますのは、医師数を増やし過ぎると、今度はそのために経営の方が苦しくなってしまうからです。この辺の見極めが大事です。調子に乗って増やし過ぎてもいけないということですね。

——短期間に医師を増やせた理由は?

加納 私がここの院長に就任したということで、多くの医師が来てくれたというのがあります。例えば泌尿器科などは、私が院長になったと聞いて、東京大学の泌尿器科が「うちからも出しましょう」と言って、3人の医師を送ってくれました。そういうことがあって、短期間で集められたというわけです。ただ、私が外科医なので、どうしても外科系が多くなり、内科系がやや手薄になっているという状況があります。これからは、主に内科系の医師を増やしていきたいと思っています。

病院の周囲はURの住宅群

——住宅地の中にある病院ですね。

加納 40年ほど前から、現在のUR(独立行政法人都市再生機構)が団地を造ってきた地域です。古い団地もありますし、新しく建て直した所もありますし、戸建ての住宅地もあります。都心部で働く人達のベッドタウンとして開発されてきた地域ということでしょう。亀田総合病院のある千葉県鴨川市はかなり高齢化が進んでいましたが、ここは船橋市ですし、そんなに高齢化は進んでいないだろうと思っていました。しかし実際には、高齢化率は意外と高いようです。若い頃に団地に入居した人達も、それから30年、40年経過すれば、高齢になってきますからね。私自身もこの街に住んでいるのですが、古い団地の方に行くと、確かにお年寄りが多いな、というのは感じます。それだけ医療ニーズがある地域ともいえます。

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