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第177回 厚労省ウォッチング 物価高に防衛費増、子育て支援の財源どこから?

第177回 厚労省ウォッチング 物価高に防衛費増、子育て支援の財源どこから?

岸田文雄・首相が「倍増」を謳う子育て支援の財源議論が宙に浮いている。当初は年内にもメドを付ける構想だったのが、政権の支持率低下に加えて物価高や防衛費増額のしわ寄せを受け、雲散霧消した。来年4月にはこども家庭庁が発足するが、厚生労働省幹部は「年内どころか年度内すら難しい」と頭を抱える。

経済協力開発機構(OECD)の調査によると、GDP(国内総生産)に占める子供・子育て支援への公的支出(2017年)の割合は、日本の場合1・79%。直近は2%程まで伸びているものの、OECD平均(2・34%)を下回り、最も高いフランス(3・6%)等に未だ大きく引き離されている。

昨年の日本人の出生数は過去最少の約81万人だった。一方、こども家庭庁の23年度予算の概算要求は4・7兆円。「倍増」へのハードルは極めて高い。11月24日の「全世代型社会保障構築本部」。首相は来年6月に纏める「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に触れて「『骨太』で予算の倍増を目指して行く為の道筋を示す」と発言するに留めた。同日示された論点整理案でも恒久財源の必要性は強調しつつ、「支援策の更なる具体↘化と合わせて検討すべきだ」として財源論からは逃げた。

この日政府は、子育て支援に関して新たな給付を2つ設ける考えを打ち出した。育児休業明けに時短勤務をしている人への新たな給付と、フリーランスやギグワーカー、自営業者ら育休給付を受けられない人への支援だ。

首相は「少子化は我が国の経済、社会の根幹を揺るがし兼ねない喫緊の課題」と強調していた。政府も財源として企業の事業主拠出金の上積みや医療・介護保険からの拠出等を検討していた。

ところがその後の支持率低迷や物価高を受け、トーンダウン。育休関連給付の財源となる雇用保険ですら、新型コロナウイルス感染症対策に伴う雇用調整助成金の急増で積立金が枯渇している状況だ。財源がある程度具体的に検討されているのは、75歳以上にも一部を負担してもらう「出産育児一時金」位だが、同構築会議で確認した「大幅増額」には、とても間に合わない。「物価高に苦しむ人が多い中、他の新規施策の為の負担増を議論出来る空気に無い」と厚労省幹部は肩を落とす。

ロシアによるウクライナ侵攻は、物価高を招いただけでなく防衛費増額を容認する空気をも生み出している。政府の有識者会議は「国民全体の負担」が必要だとして「増税」に踏み込んだ。政府内の財源を巡る議論は防衛費が先行している。また脱炭素社会の実現に向けて新たな国債発行が検討される等、地球温暖化対策も子育て支援の一歩先を行く。

防衛費の増額分は法人税の増税で手当てする事が想定され、政府の有識者会議もその方向だった。それが企業の反発を受け、有識者会議の報告書からは「法人税」の文言が消えた。子育て支援に関する財源の場合、拠出にせよ、医療・介護保険料の上乗せにせよ企業の負担増に直結するものが並ぶ。「子育て支援は防衛費に半周遅れ。法人税増税となったら、企業に更に負担を求めるのは厳しい」。厚労省内ではそんな見方が広がっている。

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