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第175回 厚労省ウォッチング 高齢者の一部2割負担で受診抑制を懸念

第175回 厚労省ウォッチング 高齢者の一部2割負担で受診抑制を懸念

10月1日、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担(原則1割)に関し、一定の所得が有る人は2割に引き上げられた。3年間は月額上限を3000円に据え置く経過措置が有るとは言え、対象者は一般サラリーマンだった人等「富裕層」とは言えない人も多い。負担増を推し進めた厚生労働省内にも、複雑な思いで受け止めている官僚達が居る。

東京都内で独り暮らしをする製造業OBの男性(77)は、公的年金を含む年収が約230万円有る。糖尿の持病が有り、月に数回は近所の医院に通っている。これまで医療費の窓口負担は1割で年に10万円ほど払って来たが、10月からは2割負担となった。「2割」の対象者(単身世帯なら年金を含む年収が原則200万円以上、複数世帯は原則320万円以上)の年収基準に引っ掛かってしまったのだ。

経過措置が有る為、年間の負担がいきなり2倍の20万円になる訳ではない。厚労省によると、新たに2割負担となる人の年平均増加額は2万6000円程度という。ただ、3年後の2025年9月末には経過措置も無くなる。その頃には通院の頻度も上がっているかも知れない。男性は「晩酌の回数を減らしますかね。仕方無いとは思うけど、なんだかね」と寂しそうに話す。

後期高齢者を対象とした医療費の負担増は、昨年の通常国会で法制化された。高齢化に伴って医療費は年々押し上げられ21年度は44・2兆円。25年度には55兆円程度に膨らむ見通しだ。少子化で「支え手」が先細る中、負担出来る高齢者には負担を求める「全世代型社会保障」の理念に沿い、現役の負担を軽くする事を意図していた。

とは言え、厚労省の試算によると25年度時点の現役の負担軽減は1人当たり年800円程度に留まる。高齢者の反発を恐れた与党が、2割負担の対象者を全体の約20%、370万人程度に抑えたからだ。「現役並み所得」の有る人は75歳以上でも3割負担だが、全体の約7%、130万人程度に過ぎない。

厚労省のある幹部は「ギリギリの落とし所だった」と言いながら、忸怩たる思いも抱えている。これまで負担増を迫る財務省に対し、厚労省は「高齢者の負担増は受診抑制に繋がり、病状を悪化させて却って医療費ひっ迫を招く」等と反論して来た。更にこの幹部は、安易な自己負担増は長い目で見ると公的保険制度の崩壊にも繋がりかねないと考えて来た。病気や怪我への備えとして高い保険料を払っているのに、いざという時に迄高負担を迫られるなら「保険の意味が無い」と考える人が増える恐れが有るからだ。それだけに「必要な負担増とは言え、野党にそこを突かれたら、内心困っちゃうよね」と漏らす。

10月からは、紹介状無しに大病院を受診した場合の上乗せ料金も引き上げられた。同省内では、介護保険の自己負担増の議論も始まった。少子化に歯止めは掛からず、給付と負担のバランスを取るのはますます難しくなる。

高齢化に医療の高度化も相俟って、今後とも医療費自体が大きく減る事は無いだろう。制度存続に向け財源確保は不可欠になる。厚労省の中堅官僚は「(75歳以上の)2割負担の対象者も好むと好まざるとに拘わらず徐々に範囲を広げて行かざるを得ないのかな」と言い、苦い顔をした。

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