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未来の会

第143回 「自立」と「助け合い」を都合良く使い分ける年金改革案

第143回 「自立」と「助け合い」を都合良く使い分ける年金改革案

 厚生労働省は「次の次」以降の年金改革案として、厚生年金と国民年金(基礎年金)の財布と言える「勘定」の間で資金を融通させる仕組みを検討し始めた。財政が厳しい国民年金に対し、比較的余裕のある厚生年金の資金を回す事実上の国民年金救済策だ。しかし、厚生年金の目減りは確実とあって、加入者の大企業労使からは早くも反発が起きている。

 「今後水準の低下が著しい国民年金の底上げ策に欠いている。公的年金最大の懸案なのに」。厚労省幹部は、厚生年金の適用拡大等を柱とした、今国会に提出する年金改革関連法案についてそう語る。その「最大の懸案」を緩和する手立てとして浮上してきたのが、厚生年金(加入者約4358万人、積立金約157兆円)のカネで国民年金(同1505万人、同約9兆円)を救う財政調整案だ。

 公的年金は、全国民共通の基礎年金(1階部分)の上に厚生年金の報酬比例部分が乗る2階建て。財政の管理は別々で、1階部分の給付に必要な財源は厚生年金と国民年金双方の勘定から拠出されている。基礎年金の給付に必要な総額をそれぞれ保険料納付者の頭数で割って算出し、共通の「基礎年金勘定」に支出している。

 ただ、少子高齢化に伴い、年金はこれから30年の間に給付水準が低下していく。厚生年金の報酬比例部分は約3%減。これに対し、定額の基礎年金部分は28%減と格差が生じる。国民年金は本来自営業者らの制度だが、加入者には失業者や非正規労働者が増えており、大幅にカットしないと制度が立ち行かなくなるためだ。

 基礎年金への拠出金は、頭割りで「公平」な仕組みとなっている。それを改め、国民年金側の拠出を抑えてその分厚生年金側が余分に負担する構想が財政調整案だ。厚生・国民両年金には基礎年金拠出額と同額の国庫負担がなされているが、この税金の配分を国民年金側に手厚くする案もある。

 医療保険では、健康保険組合等、現役世代の保険料から後期高齢者医療制度等に拠出している。だが、現金給付の年金での財政調整は、厚労省内で長く「禁じ手」とされてきた。それでも、国民年金加入者に非正規労働者らが増えている中、「頭割りで、高給の厚生年金加入者と一律に同じ拠出を求めるのはどうか」(厚労省幹部)との声も強まりつつある。

 とはいえ、同じパイを分け合う手法では当然、厚生年金側に痛みが生じる。現役時代に多く保険料を払い、報酬比例部分が高額な人ほど全体の給付額が目減りする。厚生年金は労使折半で保険料を負担しており、昨年末の社会保障審議会年金部会では、連合、経団連双方の委員から慎重論が飛び出した。

 国民・厚生年金間の財政調整案は、負担増に直結しない苦肉の策でもある。厚労省幹部は「年金でも所得再配分機能を高めるべきだ」と言う。しかし、かつて基礎年金を全額税で賄う「税方式」導入論が浮上した際、同省は「年金の自立自助の仕組みを損なう」と主張した。「自立」と「助け合い」を都合よく使い分ける姿勢がどこまで国民の理解を得られるかは未知数だ。

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