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第166回 政界サーチ 内閣改造で旧統一教会色一掃?

第166回 政界サーチ 内閣改造で旧統一教会色一掃?

安倍晋三・元首相の殺害事件が政界に思わぬ余波を広げている。政治、取り分け、選挙と宗教の不透明な関係である。憲法が保障する「信教の自由」とも関わるデリケートな内容も孕み、多くの人が疑問を抱きながら、放置されて来た積年の課題だ。安倍元首相を殺害した山上徹也容疑者=鑑定留置中=の供述から浮上した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員との関係を起点に政治と宗教との関わり方が改めて問い直されている。

 「何だか、変な展開になって来たな」

 7月末、連日報道される自民党国会議員らと旧統一教会やその派生団体とのニュースに自民党幹部は渋い顔を見せた。半分は予想された事だった。

 「容疑者が旧統一教会に恨みを抱いていたという報道の直後から、ある程度、火の粉が掛かる事は想像出来ていた。関連団体の国際勝共連合(勝共連合)は安倍さんの祖父・岸信介元首相と懇意だったし、自民党右派の支持勢力だからね」

 予想外だったのはSNSだという。

〝組織としては関係無い〟の虚実  

 「何で微妙な会合をいちいちアップするのかね、最近の奴らは。ポチッと検索すれば次から次へと画像が出て来て、瞬く間にメディアの餌食になるのに。疚しい関係では無いと説明する前に国民の間に悪いイメージばかりが広がってしまう。選挙前だったら、致命傷に成り兼ねない話だ」

 国会議員や地方議員と旧統一教会との関係が次々に明らかになり、国民に疑心が芽生えたのを察知した自民党は茂木敏充・幹事長が記者会見で「自民党として組織的関係が無い事をしっかりと確認している。党としては一切関係無い」と断言。沈静化を図ったものの、SNS上には「組織的には無いというのは、派閥や個人は関係有るという事だな」「まるで信用出来ない」等のコメントが上がり、国民の疑心に火を付ける様なものだった。

 問題の本質を逸らし、ごまかそうという腹が見え見えだったから、言わば当然の成り行きだった。というのも、自民党は伝統的に宗教団体と関わりが深いからだ。党組織と直接結び付いてはいないが、派閥毎に懇意の宗教団体が有り、票の奪い合いを避ける為、棲み分け迄している。「組織的には無い」は事実だが、実態を隠す様な虚ろな表現だった。

 無論、宗教団体が政党を支持しても憲法上、何の問題も無い。憲法は「信教の自由」を保障しているからだ。それは一言で言えば、国家権力が特定の宗教を優遇したり、国民に信仰を強要したりする事が有ってはならないという事だ。これに反しない限り、宗教団体がどの政党を支持しようと、手弁当で選挙応援しようと、何ら問題は無い。

 但し、宗教団体の中身は問題になる。教義内容の事ではない。宗教団体の活動実態が問われるのだ。反社会的な活動内容であれば、政治との結び付きは厳しく指弾される。それは、暴力団と政治家が結び付いてはいけないのと同様である。

 旧統一教会は巧みな言葉で勧誘し、高額商品を売り付けて生活を破綻に迄追い込む霊感商法等で数十年前から問題が指摘されて来た団体である。組織として結び付いていなくても、派閥や要職に在る議員個人が支援を受けていれば、責めを負うのは当然だろう。

 細田博之・衆院議長、磯崎仁彦・官房副長官ら国会、内閣の要職者が旧統一協会関連の会合に出席していた映像がワイドショーで繰り返し流され、国民の間には自民党への不信感が渦巻いている。旧統一教会との関係を党の責任でつまびらかにし、説明責任を果たさなければ不信が確信になる事もあり得る。安倍元首相の殺害事件は自民党に自浄を突き付けていると言って良い。

 「茂木幹事長の言う様に党とは関係無い。それは例えば、与党協力で票をもらっている創価学会とは全く違う」

 自民党中堅は少し言い澱んでから続けた。

 「自民党に限らず、政党には新たな党員獲得のノルマが課せられる。年間1000人だけど、簡単ではない。数を確保するには団体を口説くのが効率的だが、有力な宗教団体は既に手が付いている事が多い。『結婚の聖性』を尊重し、日本の伝統的な家族観に親和性の有る旧統一教会には手が出易い」

 党員獲得のツールだとの説明はその通りだが、留意しなければいけないのは旧統一教会もメリットが無ければ動かないという事。そのメリットとは、政権与党である自民党の国会議員を自らの信用供与のツールに出来る事に有る。元首相や閣僚、衆院議長、官房副長官と日本の中枢に居る要人との親密ぶりをSNS等でアピールして自らの正当性をアピールし、〝迷える子羊〟を霊感商法に誘うのである。つまり、〝お互い様〟の関係なのだ。

便宜供与なら大スキャンダルに

旧統一教会による被害者が後を絶たない理由の1つに挙げられているのは、2015年の「世界平和統一家庭連合」への名称変更を文部科学省が認めた事だ。宗教法人として国がお墨付きを与えた様な物だからだ。

 名称変更の申請は1997年から有ったが、宗教法人所管の文化庁宗務課は受理しなかった。しかし、2015年に突如、名称変更が認められる。安倍元首相の側近だった下村博文・文部科学相の時代だった。突然の名称変更申請受理に関し、文部科学省の前川喜平・元事務次官は「宗務課長時代に申請が有ったが、受理しなかった。90年代から統一教会の被害が明らかになっており、文科省が批判されると思ったからだ。これが、15年に突然、受理される。何らかの政治的な意図を感じた」と発言している。

 前例踏襲を基本とする役人の世界で、しかも、反社会的勢力の疑いが有る団体の申請を易々と受け入れるのは考えにくい。前川氏と言えば、忖度官僚ばかりが目立った安倍政権下で、公然と官邸に異論を唱えた人物であり、その発言は信憑性が高いと見て良いだろう。事実として解明されれば、特定の宗教団体に国家権力が便宜を図った事になり、大スキャンダルになるのは必至だ。

 記者会見で事の顛末を問われた末松信介・文部科学相は「申請内容が法令の要件を備えている事を確認して認証を行った。現時点で特定の政治家からの働き掛けが有った物ではないと聞いている」と名称変更には問題無いとの認識を示した。後段部分の歯切れの悪さが苦境を物語っている様だった。末松文科相は旧統一教会にパーティー券を購入してもらっていた事実が判明しており、野党は「許認可を持つ省のトップとして、ただでは済まされない」と標的に据えている。ただし、過去の「モリ・カケ問題」と同様、真相をつまびらかにするのは簡単ではない。文科省幹部の「忖度」で終わらないよう、薄皮1枚を剥がす様な卓越したメス捌きが問われそうだ。

 じわじわと暗雲が広がる中、岸田文雄・首相は8月10日、電撃的な内閣改造・党役員人事に踏み切った。安倍元首相の急死で変化した自民党内のパワーバランスの調整と、旧統一教会問題との関連を認めた閣僚7人を引っ込め、矛先をかわすのが狙いだ。

 「宗教問題は国会でじっくりやればいい。内閣は新型コロナや物価高など重要案件に専念するために体制を刷新する。ちゃんと名目が立つ。いい手だな。なんせ、大きな国政選挙はしばらく無いからな」

 自民党幹部は楽観的だが、元首相殺害事件の衝撃と共に浮上した旧統一教会問題の火種はそう簡単に消えそうにない。

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