地域医療への思いを「大地の恵み」に託す
238 相模原協同病院 (神奈川県相模原市)
終戦間近の1945年8月、相模原協同病院の前身である神奈川県農業会相模原病院は、無医村地区の解消を目的に地域の農業団体が中心となって開設された。戦後は神奈川県厚生農業協同組合連合会(JA神奈川県厚生連)に運営が引き継がれ、今も「地域医療を守る」という精神の下、相模原北部の医療の中核を担っている。
開設当初は診療科5科、僅か20床の小さな病院だったが、地域の期待に応える為に総合病院へと発展。一方で施設の老朽化が進み、3キロ離れた緑豊かな郊外に新築移転する事になった。2021年1月に診療を開始した新病院は2階建ての外来棟と6階建ての入院病棟からなり、35診療科400床。新たに脳卒中センターや救急科を新設したのを始め、循環器センター不整脈部門を強化する等して医療の充実を図った。両センターは24時間365日、専門医が常駐し、緊急時にも対応。これ迄、東京都内の病院に搬送する事が多かった脳卒中の救急患者の受け入れが可能になる等、地域の医療体制の強化に貢献している。
がん診療連携拠点病院として厚生労働大臣の承認も受けており、高精度放射線治療装置等の新しい機器も導入した。外来で化学治療を受ける患者の為の通院治療センターも設備を充実させ、各診療科と協力して質の高い医療を提供している。
新病院の開設に当たり、運営母体がJAグループという事もあって院内のデザインには神奈川で収穫される野菜や果物を取り入れた。これには、人の命と健康を育む野菜や果物に「地域の元気を見守りたい」との思いが託されていると共に、子供達に食への関心を持ってもらい、食育に繋げてほしいという願いが込められている。
各フロアの表示等はそれぞれイメージカラーで統一されているが、採用された色は野菜にちなんだ「ファームカラー」となっている。1階の総合受付はレタスの黄緑、外来エリアは診療科毎にトマトの赤やカボチャの黄色、ナスの紫、入院フロアはマスカットの緑に、巨峰の薄紫という具合だ。壁にも丸や四角、三角の形をした木材を貼り付け、野菜や果物を象ったデザインを施したが、職員が木材の色付けを行う等制作に関わっている。
小さな子供を育てている職員をサポートする為に、24時間子供を預けられ、夜勤の時も安心して働ける院内保育所を設置している他、市民も利用する事が出来る、軽症の病気の子供を預かる病児保育室「みどりっこ」も設置している。
新型コロナ感染症が拡大して行く中での新築移転となった為、工期が遅れ、病院も新型コロナ患者の治療に当たりながらの準備となったが、混乱を最小限に抑えながら診療態勢を安定させる事が出来た。ようやく新型コロナ感染症対策も落ち着きを見せる中、今後は感染症対策や救急医療だけでなく、地域医療支援病院や災害拠点病院としての役割も一層求められて行く事になる。
238_相模原協同病院
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