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第117回 ゾフルーザで肺炎・重篤不整脈

第117回 ゾフルーザで肺炎・重篤不整脈

 ゾフルーザ(バロキサビル)の臨床的効果はタミフル(オセルタミビル)などノイラミニダーゼ阻害剤と実質的に差はなく、免疫の抑制はタミフルよりも強いことや出血の危険性について筆者は警告してきた。

 しかし、1回服用するだけでウイルスが早く消失することが強調され、2018/19シーズンは抗インフルエンザウイルス剤が処方された人の約4割がゾフルーザであった(前半47%、後半37%)。2018/19シーズンの経験から、高い耐性率と細菌性肺炎合併率、致死性不整脈や出血に関して特に注目されたため、薬のチェックは86号(2019年11月発行)1)で警告した。その概要を報告する。  

73%の異常な耐性率と細菌性肺炎の高い罹患率

  国立感染症研究所は2019年3月、ゾフルーザ服用者中73%に耐性が確認されたと報告した。臨床試験時の検出率(12.1%)に比べて20倍(オッズ比で)である(p<0.00001)。

 タミフルと異なり、ゾフルーザ耐性では極端に治癒が遅れる。実際、2018/19シーズンの救急患者の分析から、二次性細菌性肺炎の罹患率は、オセルタミビル群が2.0%に対し、ゾフルーザ群が33.3%と有意差を認めたと報告された2)。ゾフルーザで細菌性肺炎に罹る危険度はタミフルに比し約25倍(オッズ比)である(P<0.0001)。

 タミフルもヒトのノイラミニダーゼを阻害してサイトカインの誘導を抑制し他の感染症に罹りやすくするが、ゾフルーザはそのタミフルよりもはるかに細菌性肺炎に罹りやすくすることを示している。

突然死の可能性:抗不整脈剤使用者は厳禁  

 ゾフルーザとその活性代謝物はCYP3Aなどで代謝され、アミオダロンやシベンゾリンなど、抗不整脈剤の多くもCYP3Aで代謝されるため、これら抗不整脈剤を使用中の患者がゾフルーザを服用すると、抗不整脈剤の血中濃度が高まり、QT延長を起こし、Torsades de pointesなど致死性不整脈を起こし突然死する危険性がある。

 実際、一命をとりとめたがゾフルーザを服用後にショックに陥り救急受診したとの情報を個人的に受けた。詳細は紹介できないが、服用中の抗不整脈剤の血中濃度が高まったものと推察する。

虚血性大腸炎やメレナの危険が極めて大

 出血に関して医薬品医療機器総合機構(PMDA)のデータベース(JADER)を利用して解析をしたところ、ゾフルーザは全薬剤に比較してPRRで、虚血性大腸炎が66倍、メレナ(下血)が24倍(いずれもp<0.00001)と、消化管系の出血の危険度が特に高かった。

 ザナミビルを除いてオセルタミビルなどノイラミニダーゼ阻害剤は、全薬剤に比較して虚血性大腸炎の危険度がPRRで5.5〜8.6倍であった。タミフルは全薬剤に比較してメレナの危険度がPRRで11倍であった。ゾフルーザは、ノイラミニダーゼ阻害剤に比較して、虚血性大腸炎の危険度がRORで10.8倍、メレナの危険度がRORで7.8倍であった。ノイラミニダーゼ阻害剤も、虚血性大腸炎やメレナなど、出血性の害反応を起こすが、ゾフルーザによる消化管出血の害は、さらに多いといえる。

結論:インフルエンザにゾフルーザは使うべきでない。


参考文献
1)浜六郎、薬のチェック、2019:19(86):133
2)山岸利暢(日経メディカル電子版2019.10.4より)

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