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未来の会

第92回 アベノミクスと民主党政権はどっちがひどい?

 「安倍首相は戦後レジームからの脱却などといいながら、その象徴たる沖縄の米軍基地問題に背を向け、とんずらした。安倍政権のいいかげんさを如実に示している」

 総務省などによると、参院選では1968年、当時の公選法で定められた選挙期間より1日伸ばされた事例がある。それでも、半世紀前の事例を

ほじくり返した今回の変更は、「党利党略」としかいいようがない。

 「うーん、田中角栄元首相なら沖縄でやったかもね。小泉純一郎元首相もあるかな、でも、その2人ぐらいでしょ。彼らは『死中に活を求める』タイプ。安倍さんは案外手堅いからね」。自民党のベテランスタッフは言葉を選びながら、仕方のないことだと説明した。

「保守」を標榜する民進党の思惑 熱のない参院選だが、若干妙味のある発言も耳にする。民進党の枝野幸男幹事長の演説もその一つだ。

 「安倍政治を支えている人たちは、安倍自民党が『保守』だと勘違いしている。ここを引きはがさなければ(野党は)勝てない。我々こそが保守なんだと言わないと勝てません」

 安倍首相が保守の概念を逸脱した政治家だというのは、保守の論客らがたびたび指摘してきた。保守とは単純化すれば、伝統を尊ぶ勢力のことだ。伝統的な保守層からみれば、戦後の秩序に否定的な安倍首相のスタンスは「右派の改革派」と映るのだ。

 「聖徳太子の『十七条憲法』になんて書いてあったか。『和をもって貴(とうと)しとなす』。日本の歴史に残っている最も古い政治指針は『話し合いで円満に物事を治めましょう』ということだ。この指針のもとで日本は1500年の歴史を歩いてきた」。枝野幹事長は古代政治まで持ち出して「数の力で押し切ったり、他の国と武力を使って物事を解決しようだなんていう、安倍自民党は保守でも何でもない。『私たちこそ保守だ!』『安倍は保守ではない!』」と強調している。共産党と組んでいるのだから、「保守」を強調する手法には矛盾がある。ただ、憲法に基づく平和主義という戦後の価値観を重んじているという文脈でたどれば、案外、的を射た主張かもしれない。

 安倍首相はというと、イデオロギー的な発言は控え、「アベノミクスをもう一段ギアアップして、デフレから脱出していく速度を得なければならない」と経済中心の論陣を張っている。ただ、大企業がもうけ、下請け・地方に恩恵がめぐるというトリクルダウン(したたり落ちる)方式は、この3年間、機能していないのも事実だ。金融政策で株価を支え、日銀が国債を購入し、結果として国の借金が減るという「イリュージョンのような経済政策」(野党幹部)の限界も指摘され、旗色は芳しくない。

 そこで、民主党政権との対比で国民の目先を変えようという毎度おなじみの戦術を多用し始めている。

 「野党はいつも批判ばかり。私は、子供のころ、母から『晋三、人の悪口言っちゃ駄目だよ』と言われたから、批判ばかりはしません。しかし、民主党政権時代と比べた方が分かりやすい から、説明をさせてもらう」と前置きしながら、経済数値を並べ立て、民主(進)党批判を繰り返している。「民主党政権よりはまし」という言い訳がましい話だが、有権者の脳裏には「最悪だった民主党政権」が喚起され、二の足を踏んでしまう。「アベノミクスと民主党政権の信用比べとなれば、答えは自明だ。だってアベノミクスは、まだ結果が出てないんだから」(自民党幹部)。なんとも、情けない状況だ。

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