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第118回 抗精神病剤は神経毒:脳を萎縮 

第118回 抗精神病剤は神経毒:脳を萎縮 

 抗精神病剤が、ハロペリドールなど定型抗精神病剤や、リスペリドンなど非定型抗精神病剤を問わず、統合失調症だけでなく、認知症や自閉症、注意欠如・多動性障害(AD・HD)の興奮時や、入院患者の不眠や興奮などにも、適応外で気軽に使用されている。さらには、うつ病にも使用されている。しかしながら、文献検索の結果、抗精神病剤は神経毒であり、ニューロンを壊死させ、脳を不可逆的に傷害・萎縮させることが判明した。この事実が日本では全く指摘されていないが、海外では、証拠が揃ってきている。薬のチェック86号(2019年11月発行)1)で扱ったので、概略を紹介する。

症例:69歳男性Aさんは、吃逆のために適応外のプロクロルペラジン(商品名ノバミン)が処方された。開始約1週間でパーキンソン症状が出現したにもかかわらず約3か月間継続され、パーキンソン症状が進行し、中止後も回復せず2.1年後に死亡。剖検で脳に多発性の萎縮を認めた。

抗精神病剤は脳に不可逆的損傷を起こす 

 抗精神病剤が神経毒であり脳を萎縮させることは、以下のように証明されている。

(1)サルの脳が萎縮:サルではハロペリドールやオランザピンの臨床用量を約2年間投与すると、対照と比較して、脳容積が8〜11%減少した。前頭葉や頭頂葉、側頭葉、後頭葉、小脳など主要部位に萎縮が観察され、灰白質も白質も萎縮した。

(2)ヒトの脳が萎縮:MRIにより脳萎縮との関連を調べた縦断研究30件の結果をメタ解析した研究で、抗精神病剤曝露量、罹病期間、重症度の3因子で相互に調整した結果、灰白質容積の減少は、抗精神病剤の累積暴露量とだけ有意で、罹病期間や重症度とは関連がなかった。

(3)機序も解明済み:ハロペリドールやオランザピンをラットに1回だけ用いてカタレプシーを生ぜしめて回復後、線条体と黒質のアポトーシスが用量依存性に増加し、神経細胞の損傷を示す小グリア細胞の増生を認めた。主な機序は、抗精神病剤はドパミン拮抗作用を示す一方、ドパミンやグルタミン酸を産生、活性酸素種(reactive oxygen species) を誘導し、ミトコンドリア呼吸鎖を傷害、細胞の生存に必須のタンパク質を変性させ、DNA断片化や樹状微小管の損傷、神経細胞の細胞死/アポトーシスを招き、組織学的に小グリア反応(炎症反応)を起こすなどである。

死因はパーキンソン病などでは説明不可能

 日本のパーキンソン病患者の生存率は、発症15年間は、一般人口と差がない。多系統萎縮症の患者の発症後2年以内の死亡は極めてまれである。従って、Aさんは自然発症のパーキンソン病や多系統萎縮症ではない。

認知症、自閉症、うつ病には使うべきでない

 統合失調症に対する抗精神病剤の数少ないプラセボ対照試験の結果は、プラセボの方が予後が良かった。統合失調症への使用も再考を要する。

 認知症に抗精神病剤を使用すると寿命を短縮するので使うべきでない。認知症には、患者への接し方が重要である2)。認知症、自閉症スぺクトラムの小児や成人、うつ病などへの使用は、脳を萎縮させかえって症状を悪化させ、寿命短縮の原因となり得るので、禁忌とすべきである。


参考文献
1)浜六郎、薬のチェック、2019:19(86):132-134
2)編集委員会、薬のチェック、2019:19(82):34-38

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