SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

第17回勉強会

第77回 偽善の臭い漂う「タケダ・グローバル行動規準」

第77回 偽善の臭い漂う「タケダ・グローバル行動規準」
虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
偽善臭い「タグロバル行動規準」

 企業や法人には個人と同様、建前と本音があるのが普通だ。誰しもきれい事だけで生きているわけではないが、この建前と本音の差が開きすぎると、偽善の臭いが漂う。さしずめその典型は、武田薬品の「タケダ・グローバル行動規準」なる文書だろう。

 またもや、武田会長・長谷川閑史好みの「グローバル」とやらが登場するだけでうさん臭く感じられるが、「私たちが高い倫理観に従ってなすべきことを正しく行うことができるように、タケダイズムの精神に基づき定められたもの」とかで、「タケダグループのすべての役員および従業員に適用され」るという。同時に、これを元に各国別の「ローカル行動規準」が作成されている。

 その「日本版」の文面だけ読むと、自分たちこそは、よほど高尚な存在であると言わんばかりだが、実際にこれまで武田がやってきたことと照合すれば、噴飯もののきれい事の羅列と見なされても抗弁はできまい。

 例えば、「誠実・公正な事業活動」という項目の「宣伝・プロモーション」では、「私たちは、プロモーション活動および宣伝に関する法令および業界団体の規準を遵守し、これらの活動を適切かつ倫理的に実施します」とある。

 だが、こんなことを恥ずかしげもなく堂々とうたわれれば、戦後の薬品業界史に残る一大スキャンダルとなった、昨年の武田の高血圧症薬「ブロプレス」に関する臨床試験「CASE‐J」をめぐる不正疑惑はどうなのかと、誰しも突っ込みを入れたくなるだろう。

 何しろ武田はこの薬で国内だけで年1000億円も荒稼ぎしながら、昨年、自社の宣伝パンフレット用に、2008年に医学誌で発表された論文のグラフを偽造し、ありもしない「ブロプレス」の他社に対する「優位性」を示す「試験データ」をでっちあげていたのだ。こんなことをやらかしておいて、どこが「適切かつ倫理的」なのか。

政治献金と多額のパーティー券購入
 そもそも、この「行動規準」に「個人情報の保護」だの「インサイダー取引の防止」だの、はたまた「従業員の健康と安全」などと、当たり前すぎることを羅列して、「グローバル」も「ローカル」もあったものではないが、その「日本向け追加基準」に、「政治・行政との健全・公正な関係」なる項目がある。

 読めば、「当社は、政党、政治家、政治団体等および行政機関、行政担当者との健全かつ公正な関係を維持し、癒着を疑われるような行為を行いません。……政党、政治家、政治団体等への金銭の支払い等を行う場合でも、これを公正に行い」云々となっている。

 なぜこんなことが、「日本向け」にわざわざ書き加えられているのか。どの国だろうが、「適切かつ倫理的に実施」せねばならない「規準」のはずだ。うがった見方をすれば不正広告同様、「日本」でしきりにこれと逆のことをやっているからこそ、アリバイ的に最初から考慮するつもりなど毛頭ない「倫理」でカムフラージュしたのではないかと考えてしまう。

 第一、「政党、政治家、政治団体等および行政機関、行政担当者」と武田が「癒着」するつもりなどないならば、最初から「政治団体等への金銭の支払い」など無用のはずだ。この類いの「金銭」など、どう言い繕おうが賄賂でしかないのは自明の理で、それを「公正」がどうのこうのと言うこと自体、偽善そのものだ。

 こんな「行動規準」を作らせた長谷川自身、武田を慈善事業団体か何かだと見なしているのか。利益の見返りが期待できない限り、企業がカネなど出すはずもない。そのくせ「健全かつ公正」などときれい事で取り繕おうとするから、話がうさん臭くなる。それとも長谷川は、この世に「倫理観に従って」贈られる賄賂が存在するとでも考えているのだろうか。

製薬業界と自民党に癒着の構造
 15年の数字では、武田は自民党への献金用組織である「(財)国民政治協会」に1331万円献金している。この額は、薬品業界でトップだ。ちなみに10年は940万円だから、5年後には約400万円もの上積みとなった計算だ。

 また、武田が加盟している「日本製薬団体連合会」(会長=多田正世・大日本住友製薬社長)は、「製薬産業政治連盟」(代表=野木森雅郁・アステラス製薬会長)という政治団体から、12年から14年にかけ、パーティー券を計1億5164万円購入している。

 さらに「製薬産業政治連盟」はこれを原資にして、今度は自民党の国会議員を始めとした政治家のパーティー券を逆に計1億3288万円分購入しているのだ。要するに武田を始め製薬業界各社は、迂回して政治資金という名の賄賂を自民党の国会議員に渡している。同期間のその額のうち、首相の安倍晋三が390万円、製薬業界の主管官庁である厚生労働省の大臣・塩崎恭久が590万円だから、これこそ正真正銘の賄賂に他ならない。

 おそらく、武田が期待する見返りは限られたものではないはずだ。租税特別措置に、悪名高い研究開発減税がある。本来、国庫に入るべき税金を、一部の企業に対しては減税するもので、一種の補助金と見なしていい。

 以前から不公平税制の最たるものとしてやり玉に挙がっているが、それを適用されている企業の中で減税額が多い企業10社中、中央大学の富岡幸雄名誉教授の試算によれば、武田はトヨタに次いで堂々の2位だ。こんなおいしい思いができるなら、長谷川武田にとっては1331万円など安いものではあるまいか。

 また、武田が業界他社も含めて恩恵を受けているものに、政府・厚生労働省による高薬価の維持政策が挙げられる。昨年度の薬価の国際比較調査で見ると、日本は英国、フランスの約2倍、ドイツの約1・5倍だ。だが、医療費の抑制と患者の自己負担の引き上げが近年相次いで実施されながら、医療費を押し上げている要因の薬剤費の高止まりが一向に是正されない。この現状が、武田を筆頭とした「実弾投入」と無縁だと思っている業界人は、果たしているだろうか。

 長谷川は「グローバル」だの「ローカル」だの、はたまた「倫理」だのと口にする以前に、賄賂がいかに「行政機関、行政担当者」を腐らせ、政治をダメにするかという、当たり前の常識に立ち返った方が良さそうだ。(敬称略)

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top