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美と医の融合が生み出す癒やしの場
259 徳島大学病院(徳島県徳島市)
徳島大学医学部の前身、県立徳島医学専門学校が設立されたのは1943年2月。 附属病院はその2カ月後 に発足した 。以来、県の医療の中核を担い続けて来た徳島大学病院は、現在、隣接する県立中央病院と連絡橋で結ばれ、地域医療の再生と県民医療の発展を図る為の「総合メディカルゾーン」を形成している。
病院でホスピタルアートの取り組みが始まったのは2008年。救急治療やリハビリテーションの拡充を図る 「西病棟」の着工が切っ掛けとなり、武蔵野美術大学と共同で「ホスピタルギャラリーbe(ビ・イ)」を同病棟1階ロビーに開設する事にした。「be」は美(b)と医(e)のコラボレーションを意味し、 設置以来、基礎デザイン学科の学生や県内の作家の作品を4カ月毎に入れ替えながら展示している。
ギャラリーを企画したのは、日本を代表するプロダクトデザイナーで同大学の教授だった深澤直人氏(現・多摩美術大学副学長)。「病院の待合室で不安な気持ちでいる人に、デザインは何が出来るのか」との思いからギャラリーの設置を思い付いたという。一方、当時の香川征院長にも「これ迄の様な医療提供側から見た合理的な設備配置から、今後は患者や見舞い客らが居心地良く過ごせる環境に変えて行きたい」との考えが有り、ホスピタルアートの取り組みが動き出した。
学生の作品は、大学の基礎デザイン学科の「形態論」の授業の中で課題として制作される。形態論とは「形」が持つ意味や本質を追究する学問で、学生らは日頃目にする日用品等の形を基に、新たな形や機能を生み出す為の作品作りに取り組んでいる。
学生の作品の中には、定規の様にメモリが付いた蚊取り線香や手を象った紙粘土製のクリームパン等ユニークな作品も有る。そうした若々しい感性の作品に加え、県内作家の手による様々な作品が患者や家族らの目を楽しませ、知的好奇心を刺激している。
又、西病棟3階の小児医療センターには「プレイルームbe(ビ・イ)」が設けられ、入院中の子供達が少しでも楽しい時間を過ごせる様、アートと触れ合える機会が提供されている。これ迄に、徳島県を拠点に全国各地の幼稚園・保育園・児童館・図書館等で上演活動を行う劇団による影絵芝居や、手品やジャグリング、絵本の読み聞かせ等が開催されて来た。中でも子供達に人気のイベントの1つが、昨年10月にも開催されたバルーンアートだ。風船を使って動物や花、食べ物が次々と形になり、実際に自分達で製作にも挑戦する。この時はハロウィンに合わせて病室に飾るオブジェ作りに取り組んだ。これらの活動は、病院外部のボランティア団体からの申し出によるもので、病院と地域の繋がりを深める役割も果たしている。
他にも、病院を訪れる人々の心を癒やし、安らぎの場を提供する事を目的に、中央診療棟1階には市民ギャラリーが設けられ、無料で作品を展示出来る様になっている。病院の「美と医の融合」で結集した人々の思いは、患者や家族への応援歌を奏でながら、病院を包み込んでいる。
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