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第60回 厚労省人事ウォッチング しばしば不当に介入される厚生労働省人事

第60回 厚労省人事ウォッチング しばしば不当に介入される厚生労働省人事

 中央省庁の幹部人事は、官房副長官をトップとする内閣人事局で一元的に決められている。というのは建前で、実際は権限の無い「時の権力者」から横槍を入れられるケースは多い。今回は厚生労働省で嘗て有った幹部人事への「介入」を振り返りたい。

 厚労省幹部の間で一時、引き継がれていたのは、ある首相補佐官による「介入」疑惑だ。お気に入りの女性職員を昇格させようと、幹部を呼び出して「もう少し何とかならないのか」と迫ったという。

 首相補佐官は文字通り首相を補佐する立場で、その職務は内閣法に規定されている。各省庁の人事や所管以外の政策に口を出す権限は無く、介入は逸脱した行為と言える。当時、この女性職員は前年の人事で昇格したばかり。仕事はテキパキとこなすものの、更に昇進させるのは「時期尚早だった」(ある幹部)という。

 特に幹部の間で首相補佐官のこうした強引なやり方に反発が広がり、結局、首相補佐官による要求は実現しなかった。ただ、一連のやり取りは省内の極一部で共有されていたと見られる。

 首相補佐官は介入する意図は無かったと釈明している様だが、大手紙記者は「他省庁にもこうした『介入』を繰り返しており常習犯だ」と明かす。有識者の間でも「仮に介入が事実だとすれば問題だ」と指摘する声も有るという。

 二川一男・元事務次官が留任した2016年の幹部人事は大物政治家からの「介入」が有ったとされる。15年は労働者派遣法改正案の審議等が長引き、通常国会の閉幕が9月末にずれ込んだ影響で発令が遅れ、10月に事務次官に就任した二川氏。16年の幹部人事は6月に行われた事から、退任すれば僅か8カ月で退任する羽目に。

 こうした事情を鑑み、官房長時代から二川氏を可愛がっていた伊吹文明・元衆院議長が「このまま退任したら可哀そうじゃないか」と助け舟を出した。これが決定打となり、二川氏の留任が決まったという。

 又、旧労働省出身で2000年代前半頃に事務次官を務めた元事務次官も労働官僚の人事に大きな影響力を行使したとされる。ある労働官僚OBは「今は殆ど無いが、嘗ては課長級ぐらい迄の人事に力を持っていた」と証言する。この元事務次官は各部局に直接電話をしたり、中堅若手職員を呼んで囲む会を開いたりしていたという。退官した幹部の再就職先を斡旋していた事も有ると噂されている。

 日本医師会など厚労省に絶大な影響力を持つ業界団体も人事で無視は出来ない。中川俊男氏が日医会長に就任した際、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室の迫井正深現室長が医政局長に充てられたのも「うるさ型の中川対策の為」とされた。嘗ては医系技官人事にも影響力を持っていたものの、中川氏以降、厚労省への影響力は急落している。

 官邸のアキレス腱ともなり兼ねない厚労省の人事。様々「介入」され易い状況が続く。昨今は首相官邸の影響力が強くなっており、内閣人事局主導の人事が続いていると見られるが、いつ再び不当な「介入」が生じるかは予断を許さない。

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