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第151回 浜六郎の臨床副作用ノート バラシクロビルの害と用量設定

第151回 浜六郎の臨床副作用ノート バラシクロビルの害と用量設定

SARS-CoV-2ワクチン接種で帯状疱疹が増加すると報告されている。帯状疱疹の治療に用いられるバラシクロビルは、消化管から吸収されアシクロビルとして効果を発揮する。アシクロビルそのものよりもよく吸収され1日2〜3回の服用でよいことから多用されている。しかし、添付文書の用量でも、腎、脳、血液系に中毒を引き起こしやすい薬剤である。用量設定の問題点を、薬のチェック103号1)で検討したので、その概要を紹介する。

害反応報告はアシクロビルの10倍

2021年度までの5年間で医薬品医療機器総合機構(PMDA)への急性腎障害(腎機能障害を含む)や脳症(中毒性脳症を含む)の報告は、アシクロビル(経口と注射剤)ではそれぞれ82件、84件、バラシクロビルでは1桁多い681件、841件である。

1000mgはアシクロビル376mg注に相当

アシクロビルの、消化管からの吸収はわずか10〜20%。バラシクロビルは1000mgがアシクロビル694mgに相当し、平均でその54.2%(信頼区間42-73%)、すなわち376mgの注射剤アシクロビル相当量が体内を循環することになる。

症例:85歳、身長137.5cm、体重38.6kg、クレアチニン値(Cr)0.5mg/dLの女性が帯状疱疹で1000mg1日2回を処方された。NSAIDsは処方されていない。7日間服用後、倦怠感などの訴えで第9病日に再診。両下肢に中等度の圧痕性浮腫を認め、BUN70mg/dL、Cr3.6mg/dL、血清カリウム値6.0mEq/Lであったため入院。精神症状はなかったが、第12〜13病日に38℃の発熱を伴う無顆粒球症(104/μL)をはじめ汎血球減少症を認めたが、薬剤中止などにより腎機能・血液障害とも回復した。

Cr0.5mg/dLからCockcroft-Gault法でクレアチニン・クリアランス(CCr)は50.2mL/分。この場合、添付文書上は1000mgを1日3回であったが、腎障害ありとして1日2000mgの使用に留めていた。それにもかかわらず、高度な腎障害と血液障害を来した理由は何であったのか。

CCrの計算に身長が考慮されていない

添付文書には、CCrによる用量調節方法が書かれているが具体的なCCrの計算方法が書かれておらず、女性のCockcroft-GaultによるCCr(mL/分)=((140−年齢)×体重kg×0.85/(72×Cr値mg/dL)が一般的である。45.5+0.9×(身長−152)で計算した理想体重(女性)または実体重のうち低い方を用いたCCrの方が正確である。これだと42.1 L/分となる。

注射剤と同様、体重を考慮すべき

注射剤のアシクロビルは体重あたり1回5mg/kgとされているが、バラシクロビルは体重が考慮されていない。症例の場合、注射剤のアシクロビルなら1回193mgでよく、バラシクロビルなら1回量は510mgでよい。体表面積を考慮した場合でも、3分の2の660mgでよいことになる。なお、痛みで食事摂取が低下して脱水となるが帯状疱疹の神経原性疼痛にNSAIDsは無効であり、腎機能をさらに悪化させ、排泄が障害されて血中濃度が高まるため使用しない方がよい。

身長を考慮してCCrを計算し、1回量は15mg/kgに

以上を勘案し、薬のチェック誌では、CCrの計算には身長を考慮すること、バラシクロビル製剤の1回用量は15mg/kg(50%顆粒で0.03g/kg)と設定すること、NSAIDsは禁忌とすることを推奨する。

参考文献

1)薬のチェック2022:22(103):116-118 

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