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未来の会

雇用は一段と悪化、「コロナ不況」は長引く気配

雇用は一段と悪化、「コロナ不況」は長引く気配
秋以降の「第2波」で〝反転攻勢〟は不透明に

新型コロナウイルス感染症の影響で、雇用が一段と悪化している。緊急事態宣言が延長された5月は、完全失業率は上昇し、有効求人倍率は大幅に下落した。6月の全国企業短期経済観測調査(短観)も11年ぶりの低水準となった。今後も改善の兆しは乏しく、失業者が増える可能性が高い。政府の打つ手も限られている中、「コロナ不況」は長引きそうな気配が漂い始めた。

 7月に閣議決定した骨太方針は国内の経済状況について「我が国経済は総じてみれば極めて厳しい状況にある。個人消費は大きく落ち込んだ後、このところ持ち直しの動きが見られるものの、輸出や生産の水準が低迷したままであり、企業収益は大幅に減少している」と分析している。

 更に、今後の先行きを「極めて厳しい状況から持ち直しに向かうことが期待されるが、感染リスクがゼロにならない以上、直ちに経済や社会が元の姿に戻るというわけではなく、緊急事態宣言が発出されていた4月5月を底として、経済を内需主導で成長軌道に戻していくことができるよう、経済の下支えを行いながら、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図っていく」と記している。

 これらの記述を裏付けているのが各種雇用統計だ。5月の完全失業率は2・9%と前月に比べて0・3ポイント悪化し、完全失業者は197万人と19万人増え、200万人が目前となっている。4月に600万人近くまで膨らんだ休業者の約7%が5月に失業したという。潜在的な失業リスクを抱えた休業者は423万人と依然として高水準だ。

中小企業と非正規への影響が顕著

 厚生労働省幹部は「緊急事態宣言が2カ月目に入り、資金が潤沢ではない中小企業で雇用が著しく悪化し始めている。そうした影響が出ているのだろう」と分析する。

 一方で、就業者は前年同月比で76万人減っており、「宿泊業・飲食サービス業」で38万人、「卸売業・小売業」で29万人、「生活関連サービス・娯楽」で29万人とそれぞれ緊急事態宣言による休業要請の影響を直接的に受けた業界で顕著となっている。

 雇用の「調整弁」にされやすい非正規労働者への影響は顕著で、前年同月に比べて61万人減少した。パート労働者が37万人、アルバイト従業員が31万人減っている。いわゆる「雇い止め」も多発しており、契約期間は3カ月単位ということも多く、労働相談窓口には「6月末で派遣を切られた」という相談が相次いでいるという。

 職探しをしない非労働力人口は37万人増えている。特に、65歳以上の高齢者で20万人増えた。高齢者から仕事を切られたり、自ら働くのを止めたりした人もいるとみられる。子どもが通う学校が休校した影響で、女性も増えているという。正規雇用にも影響は及び始めており、8カ月ぶりに1万人減少した。

 5月の有効求人倍率も前月より0・12ポイント低くなり、1・2倍まで落ち込んだ。企業の求人意欲が戻らない事の証左であり、4年10カ月ぶりの低水準。第1次オイルショック後の1974年1月に0・2ポイント低下した時に次ぐ過去2番目の下げ幅を記録。有効求人数は8・6%減少し、有効求職者は0・7%増えた。自粛していた求職活動が活発になった影響もあるとみられる。

 労組関係者は「今は少ない求人を奪い合う状況だ。日々の暮らしに困る人も出てきており、生活を維持しながら求職活動が出来る仕組みを早く整えるべきだ」と訴える。

 7月1日に公表した日銀短観も大企業製造業の景況感を示す業況判断指数はマイナス34で、リーマンショック後の2009年6月以来、11年ぶりの低水準を記録した。3月の調査から26ポイントの落ち込みで、悪化幅は過去2番目の大きさとなった。非製造業はマイナス17で25ポイント悪化し、こちらは過去最大の悪化幅。大企業の中では小売りだけが改善したものの、「宿泊・飲食サービス」はマイナス91だ。

感染者増でも緊急事態宣言は出せず

 集計の時期はずれるものの、4月の生活保護申請件数が2万1486件で、前年同月と比べると24・8%も増えた。厚労省もコロナの影響によるものとみており、「今後増加する可能性がある」とする。生活不安が国民を直撃しており、こうした状況が、首都圏で感染者が増加しても再び緊急事態宣言に踏み切れない事情となっている。政府高官の一人は「緊急事態宣言を再び出したくないというのが本音だ」と漏らす。

 こうした状況にもかかわらず、政策的な支援は心許ない。厚労省は従業員に休業手当を払った企業に費用を助成する「雇用調整助成金」を大幅に拡充し、感染予防や利便性を考慮し、5月20日からオンライン申請を導入して手続きを加速させようとした。しかし、同時刻に登録した複数の企業に同じIDが交付され、互いの個人情報が見られるトラブルが起き、スタートからわずか2時間で停止し、再開しようとした6月5日も3時間で停止する等トラブルが続いた。加藤勝信・厚労相は謝罪に追い込まれ、復旧に相当な時間を要する結果となっている。

 背景にあるのは、政府の「焦り」だ。悪化する一方の経済を好転させようと、官邸からオンライン申請を一刻も早く導入するよう指示を受けたという。ある厚労省職員は「官邸から相当なプレッシャーがあった」と明かす。システムの開発は富士通に約1億円で随意契約で委託し、それを富士通マーケティング、インフォテック、ペガジャパンに再委託した。約1000万円でソフトの開発を担ったのが、ペガジャパンだ。

 関係者によると、厚労省は1カ月程度でシステム構築を富士通に求め、富士通側も了承したという。しかし、不具合が続出したため外部監査を行ったところ、「本来なら7カ月程度かかる」と診断されたという。関係者は「官邸からの圧力があったから急いだ節がある」と釈明する。

 こうした事情とは裏腹に、安倍晋三首相は7月8日に開かれた経済財政諮問会議で「今年の骨太は新型ウイルス感染症の流行により、世界的な時代の転換点にあり、この数年間で思い切った社会変革を実行していくか否かが、我が国の未来を左右するとの切迫した危機感に基づいた原案となっている。今年は異例な局面にあり、メッセージ性の強い形でとりまとめていきたい」と意気込んでいるが、言葉だけが空回りしている感は否めない。

 アメリカは失業率が2カ月連続で改善する等、世界の一部には景気の底打ち感が出始めている。ただ、秋以降には感染拡大の「第2波」も予想され、安倍政権への求心力も乏しくなっている。こうした中、政府の思惑通りに4月5月を「底」にし、日本も反転攻勢してアメリカ等世界の動きに追随出来るかは甚だ不透明だ。

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