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未来の会

コロナ禍契機に変わりゆく「震源地・中国」の現状

コロナ禍契機に変わりゆく「震源地・中国」の現状
記事やツイッター、中国人への取材から探る

新型コロナウイルスの発生当初は、国民からも批判を受けた中国共産党政府だが、現在は感染を抑え込み、「労働節(メーデー)」が始まった5月1日からは規制を緩和、各地で経済活動が活発化し、国民の日常生活が戻ってきている。中国メディアの記事や中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」、中国人への取材から中国の現状を報告する。まず、国民の政府に対する評価の変化を振り返った。

●初期/12月末発生当初の情報隠蔽に対する憤慨。

●中期/都市封鎖や隔離所の設立等の試行錯誤中に浮上した封鎖令の出し方、封鎖後の生活の不便、赤十字の支援物資の着服、ネットでの言論統制等の諸問題を厳しく批判。

●現在/諸外国の感染爆発の様子を見て、国民の間では、中国政府の都市封鎖対策は経済より人命最優先の方策である、強権主義のお陰で諸外国より効率よく感染を抑えたと肯定的な評価が増えている。一方、関税引き上げや損害賠償金請求などの報復措置を検討しているトランプ米大統領に対して、批判や団結した対応を呼び掛ける声が高まっている。

ネットユーザーが言論統制の変化促す

 政府の言論統制とネットユーザーの反応も変化していく。

●初期/政府は新型コロナに関する情報を全て抹消。最初にSNSで原因不明の肺炎の存在をいち早く警告した武漢中心病院の李文亮医師ら8人の医療関係者に「デマを流した」として同市の警察当局が訓戒処分を下した。「新型コロナウイルス肺炎」という語句が「敏感詞」(ネット使用禁止語句)となり、その語句が入っている文章は全てネット上に投稿が出来なかった。

●中期/当局の情報統制及び言論統制に世論が反発。特に若い世代のネットユーザーの政府批判がウェイボーを通じて噴き出す。同時に、自ら取り組む「自助活動」をネットで展開。その効果は甚大で、政府活動の至らない所の穴埋めとなったり、問題点を迅速に反映したり、有効なネットワークとなった。

 次第に政府もそのネットワークを利用するようになり、情報統制や言論統制が緩和。代表例は李文亮医師が死去後、中国国家衛生健康委員会等に「新型コロナウイルス防疫業務の先進的グループまたは人物」として称号を与えられた事である。また、最初の頃、ウェイボー上に「検査してもらえなかった」「病床待ちで入院出来ない」等、個々人の投稿が削除されていたが、その後、政府は助けを求める声を削除せず、関連部門が逐一確認して解決していく姿勢も見せた。

●現在/感染の収束を迎え、ネット上は政府賛歌に一変。反省点や問題点の文章が大幅に減り、強権主義の正当化、医療関係者や自宅隔離を乗り越えた全国民への賛歌、外国の厳しい現状の報道、中国の諸外国への物資支援等がメインのトピックとなった。

 この一連の動きから、政府は情報統制を状況によって強めたり弱めたりして世論操作の手腕が一層上がったように見える。

「外国に謝るべきか」国民の内心の葛藤

 中国人が野生動物を食し、疫病の発源地となり、しかも初期に旅行したり、医療サービスを求め海外に渡航したりした感染者もいたので、諸外国に謝るべき。しかし、発源地は本当に中国なのか、アメリカの陰謀ではないかという説もある。また、中国は巨大な経済的な犠牲を払って、ウイルスをある程度自国内に封じ込めた。そのお陰で諸外国は2カ月間の猶予があったはず。しかし、中国の情報やデータを疑い、猶予期間を有効利用出来ず、今の事態に発展させた米国や欧州は傲慢過ぎで自己責任を負うべき。従って、謝る必要はないという意見もある。このテーマに関してネット上の論議はまだ続いている。

「本当に終息したのか」 

 中国における感染拡大は3月10日に峠を越し、中国国家衛生健康委員会は19日、武漢で初めて新たな感染者数は0と発表。その後、武漢を含む湖北省での感染者はほぼ毎日ゼロという状態を見せ始めた。死者を供養する「清明節」の4月4日、全国のコロナ死者への追悼式が行われ、4月8日、武漢の封鎖が解除され、各地も収束モードに入った。ところが、海外における感染状況が激しいため、今度は海外にいる中国人が中国本土に戻ろうとした。感染者もいる事から、中国ではこの現象を「ウイルスの逆輸入」と表現している。逆輸入患者のほとんどがロシアから黒竜江省に入っている。

デジタル資源の活用 

●健康コード格付けシステム(写真①)
 中国のモバイル決済サービス「アリペイ」は2月16日、健康・旅行情報に基づいた自己検疫を行うための、「全国版健康コード格付けシステム(全国版健康碼)」の開発サポートを提供すると発表した。杭州は2月11日、全国に先駆けて健康コードを打ち出し、赤・黄・緑の3色のQRコードを利用して個人の健康状態を証明するデジタル証明書とし、新型コロナウイルス肺炎対策を後押しする事になった。杭州で健康コードが開通して以来、1日当たりの訪問件数は1000万件を超えた。この格付けシステムに対応するには、市民は名前・公民番号・電話番号・詳細な健康及び旅行情報を提供する必要がある。緑のコードを授与した市民は自由に街を移動してよく、黄色は7日間の自己検疫を要請され、赤はさらに14日の自己検疫を必要とする。杭州市の市民は、学校や複合ビル、スーパーマーケット、道路等の公共の場でコードのスキャンを求められる。

 杭州の健康コード開通から1週間で、全国100以上の都市へ広がった。健康コードは開放的なシステムで、各地の感染対策ニーズに合わせた急速な展開が可能だった。

●監視カメラやICチップ入り身分証の活用
 「濃厚接触者を正確に掌握している」というのが中国の特徴だ。例えば、確定患者及びその患者と接触したAさんが、その後どこでどういう行動をしたかに関する追跡は、中国にとっては「お手の物」だ。3億台近い監視カメラが全国に張り巡らされ、14億人の全ての人民に身分証番号があり、顔認識カメラのレンズが顔を捉えさえすれば身分証番号が出て来る。番号を入力(あるいはパソコン画面に現れた番号をクリック)しさえすれば、何年何月何日どこで生まれたかに始まり、両親の名前や職業、財産(持ち家の有り無し、貯金残高、借金、車の有無と種類・プレートナンバー等)、犯罪歴や、本人の学歴、職歴、趣味、電話番号、交流関係、購買動向等、全ての個人情報が一瞬でパソコン画面上に提示される。患者を特定すれば、その身分証番号との濃厚接触者を見つける事が出来、今度はその複数の濃厚接触者を監視カメラが徹底して追跡する。こうして割り出した濃厚接触者を犯人捜査のように追跡して「捕まえ」、検査を強行する。その中に「無症状だけど、陽性」という人達が出て来る。

 問題は、検出した無症状感染者をどのように扱うのかだ。まず一人残らず「施設」に入れて14日間「隔離」し観察する。14日経っても症状が出ず、かつPCR検査で陰性になれば、そこから24時間後に再度検査し、それでも陰性であるならば、晴れて「無罪放免」となり隔離を解除する。14日後に相変わらず陽性で症状が出ない者は隔離を続ける。陽性で症状が出れば、当然「患者」となるので、治療病棟に入院させる。隔離先も入院先も基本的には中国感染病学第一人者の鍾南山医師の提案で突貫工事により建てられた方艙医院(コンテナ病院、写真②)だ。今では使命を果たし閉鎖されてしまったが、武漢だけでも6万床あったので、既存の病院と合わせれば医療崩壊を起こさず受け入れる事が出来た。

●オンライン教育
 中国・教育部は新型コロナウイルスによる肺炎の拡大により、2020年春季の授業開始を遅らせると発表した。また、各地に対し課外教育を暫時停止させた上で、インターネットを利用した情報化教育を学生らに提供し、「授業は中止、勉強は中止せず」としている。対象は、中央政府の直属大学、地方政府の所属大学、高校、中学校、小学校、幼稚園で、新学期の開始を適宜延期するように求めている。現在、中国の学校に在籍する児童・生徒・学生は約2億7000万人いる。億を超える子どもらがオンライン教育に殺到する状況は、政府や教育企業、教師にとっても、保護者や子供らにとっても大きな挑戦のようだ。

●サービス業界のデジタル化
 食事のネット注文、オンライン問診、遠距離授業等、中国では新型コロナウイルスの流行による「副作用」で、サービス業界のデジタル化が加速した。新型ウイルスの流行は、あらゆる産業に衝撃を与えた。しかし同時に、デジタル化でもたらされる新しいチャンスも認識し始めた。フードデリバリー、アプリでの食事注文、無接触配達等の新しいサービスモデルは、人々の生活を保障するだけでなく、多くのサービス産業が発展を遂げる機会となった。ケータリング企業へ食材の農産品を供給する「美菜網(Meicai)」は、レストランや食堂からのキャンセルで大きな打撃を受けた。そのため1月末、個人・家庭向けにターゲットを転換。アリペイのサービスを利用する事で、わずか1週間で80以上の都市で80万人以上の利用者を獲得、リピーター率は40%に達した。美菜網を含むアリペイのトップ10の食品ショッピングアプリで、1日当たりの平均取引金額は流行前の約3倍となった。中国人民大学労働人事学院の呉清軍教授は、将来の生活サービス産業が「巨大プラットホーム+全業界チェーンのデジタル化」という発展モデルを形成すると分析。経済全体のデジタル化が、生活サービス産業を向上させる推進力になると考えている。

武漢封鎖で悲惨な状況に陥った市民達

 武漢の都市封鎖が瞬時に発令されたため、仕事・帰省・医療・旅行等の理由で滞在中の旅客は市内から出られず、所持金を使い果たし、路頭に迷う人もいた。そういう人の中には、トイレや水道、電源が使える地下駐車場で暮らしていた人がいた。また市外では、武漢出身の人は武漢に帰れず、健康の身でもホテル等の施設から宿泊を断られ、武漢ナンバーの車を運転するだけで当地の人に排除され、路頭に迷っていた。中には、2週間以上、高速道路上にトラックを止めて生活していた運転士もいた。

 悲惨な話はいくつもある。感染確認後、病床が足りないため病院に入院出来ず、家族にうつす事を心配して自宅にも帰れず、高架橋から飛び降り自殺をした中年男性がいた。火葬場に両親の遺灰をもらいに行く小学生の男の子がいた。自宅隔離中に祖父が感染して亡くなり、その遺体と1週間一緒に過ごした6歳の子どもがいた(両親は出稼ぎ者で武漢にいない)。そのような悲惨な写真が目撃者の投稿によりネットで流れ、しかしすぐに当局により削除され閲覧不能となるが、ネットユーザーの間で大きな波紋を巻き起こした。

 武漢のほとんどの病院は通常の外来診察をやめ、新型コロナの治療を最優先せざるを得なかった。このため、新型コロナ以外の患者は治療してもらえない事態に陥った。その結果、人工透析が必要とされる人や治療中のがん患者、持病がある人々が自宅で苦しみながら亡くなった。また封鎖により、北京や上海の病院に通っていた難病患者も病院に行けなくなったり、薬を切らしたりして、途方に暮れていた。また、全国各地から医療支援部隊の約3・5万人が武漢に派遣されたため、上海等の大都市の医療機関も人手不足により一時、外来を停止せざるを得なかった。ようやく再開した日、人々が冷たい雨の中、病院の玄関から延々と長い列をなしている写真がSNSに投稿された。まさに2次災害だ。

ボランティア活動の拡大 

 武漢の若者がウェイボーで、封鎖された武漢の日々を映像に記録、YouTubeに「武漢封城日記」としてアップした。また、公共交通が止まって移動手段を失った医師や看護師を、マイカーで病院まで乗せるボランティア活動等を紹介した。コロナ禍を契機に、こうした武漢市民による自発的なボランティアのネットワークが増え、市民生活に大きな役割を果たした。彼らはスマホのオンラインチャットを活用し、毎日、マイカーで医師や看護師を病院に送り、救助物質を各病院に運び、温かいご飯と料理を作り、お弁当を病院に宅配する等、様々な活動で現地の救助活動を支えた。感染が起きた初期の頃、市内の病院は準備不足で医師や看護師はとても苦労した。政府の対策の遅さや足りない部分を、市民ボランティアが補った。2月の時点で4万〜5万人の武漢市民がボランティア活動に参加していたという。

コロナ離婚 

 新型コロナウイルスの感染抑え込みが進み、各地の政府機関で業務再開が本格化している中国で、離婚届の手続きの予約が殺到していると話題になっている。3月の離婚率が激増し、家庭内暴力の件数も増加しているという。窓口の休止期間中、手続き出来なかった人達が殺到したのが一因とみられるが、長期間の自宅隔離や在宅勤務で家庭内でのストレスが溜まり、夫婦喧嘩やすれ違いが増えているとの指摘も出ている。自宅待機の時期にある国々には、この傾向は不吉な警告となるかもしれない。上海の離婚問題専門の弁護士は、3月中旬に上海で外出禁止が解かれて以降、扱う離婚案件が25%増加したと話した。

企業への影響、経済へのダメージ 

 中国国家統計局が4月17日に発表した2020年1〜3月の国内総生産(GDP)は物価変動を除いた実質で前年同期比6・8%減となった。四半期の成長率としては記録がある1992年以降で初めてのマイナスとなった。2月の失業率は過去最高水準の6・2%となった。大企業の倒産から始まったリーマンショックと違い、今回の“コロナショック”では中小企業に倒産が広がっているのが特徴だ。3カ月間で5000件余りの映像関連会社、1万2000軒の塾・予備校・企業の研修施設、1万1000件の旅行会社、5万軒の飲食店が倒産した。

 政府は法人税率の引き下げを加速する他、解雇が少ないか全くしていない中小企業を対象に、昨年支払った失業保険料を最大100%払い戻す。大学卒業生を1年以上の契約で雇用する小企業に助成金を出す。また、製造業と建設業、物流、公共サービスを中心に主要な企業の経営や計画の再開を加速する。その他、出稼ぎ労働者の就職を支援し、柔軟な雇用態勢を支持する。露天商やその他の商業の許可も増やすという。

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