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未来の会

医療費抑制で医療関係者が出来る事

医療費抑制で医療関係者が出来る事

2022年度に、75歳以上の高齢者医療の自己負担が現行の1割から2割に引き上げられる、という案が現実化してきた。

 具体的なプランが作られるのは来年半ばになりそうだが、「全世代型社会保障検討会議」が2019年12月中にまとめる中間報告にも、何らかの提言が盛り込まれると考えられる。

 厚生労働省の試算によると、高齢者の窓口負担が2割になれば、年間8500億円の医療費削減に繋がるという。

 2022年には、いわゆる団塊の世代が75歳を迎え、医療費の増加が加速すると考えられる。政府としては、国の借金が増えたり、現役世代の保険料負担が重くなり過ぎたりして世代間の不公平感が広がらないように、と今回の提案に踏み切ったといわれる。

 現在70歳から74歳についても医療費の窓口負担は2割だ。もし75歳以上の負担増となっても一定額以下の所得者については1割に据え置く考えのようだが、実質的には「高齢者の医療費は1割」とされた時代は終わるということだろう。

 日本の医療費の窓口負担は、医療格差大国のアメリカを除けば、決して小さくはないといわれている。北欧のほとんどは患者負担がゼロ。イギリスでも医療費は無料だ。

 ただ、イギリスではどんな症状でもまず「かかりつけ医」を受診することが義務化されており、風邪症状であっても受診できるまで2週間待たされる、ということもザラのようだ。

 特に日本では、少子高齢化が予想よりも急激に進んでおり、収入が見込める若い世代が増えないまま、医療費がよりかかる高齢者のみが増加すると、医療保険財政が破綻することも考えられる。

 我が国が世界に誇る国民皆保険制度を維持するためにも、何らかの措置を講じることが必要なのは言うまでもない。

「私は○○病」のアイデンティティを崩す

 とはいえ、今70代となり2割の窓口負担を払って医療を受けている人達や家族は、「75歳になっても2割のままなのか」とショックを受けているのではないか。

 また、その下の世代も、加齢に伴い医療を受ける機会が増える中、「収入がなくなるのに、医療費を支払えるだろうか」と不安を感じているだろう。

 増え続ける医療費を抑制するためには、本当にこの「高齢者の窓口負担増」という対策しかないのだろうか。私達医療関係者に何か出来ることはないか、知恵を出し合って考える必要があるはずだ。

 やや大きな話になってしまうが、私は、特に高齢者に「私は病気の人」というアイデンティティから脱してもらうことがまず大切なのではないか、と考えている。「健康な自分」がどんな時もベースにあり、病気はその都度「一過性のもの」と認識してもらうのだ。

 精神医療の場合、年齢に関係なく患者さんはどうしても長期間通院することになりがちで、いつの間にか「私は通院中の人」というのが、その人のベースになってしまうことがある。

 もちろん、中には統合失調症などで定期通院や服薬が欠かせない疾患もあるが、適応障害やストレス性のうつ病などでは、「そろそろ通院を終了できるのではないか」というまでに寛解することも少なくない。

 私は、そういう人には「あなたはもう病気じゃないから、通院も一旦やめましょうか」と提案することにしている。

 忙しい外来診療の中では、「じゃ、次は」と電子カルテで習慣的に次の予約を取って診療終了、とした方が時間はかからないのだが、そこで次のような話をするのはほんの数分の手間だ。

 「もうかなり回復しましたし、あと1〜2回お顔を見たら、一旦卒業ということにしましょうかね」

 そこで「本当ですか!」と喜ぶ人もいるが、多くは「大丈夫なんでしょうか」と心配そうな顔をする。「大丈夫ですよ。もちろん、まだ浮き沈みはあるでしょうが、それは一般の人も経験するものです。そこから大きく調子を崩すという心配はまずないはずですよ」。そうやって伝えて1〜2カ月考えてもらい、可能なら医療から“足を洗って”もらうことにしている。

 こうして、半ば惰性で来院し続ける人をなるべく減らすようにして、「私は病気の人」というアイデンティティから脱出してもらうことを心掛けている。

 高齢者も同様ではないだろうか。特に日本では、高齢者といえば「体のどこかに持病を抱え、何らかの医療を受けている人」というイメージがある。

 同窓会ではそれぞれが自分の病気の自己紹介になることもある、と聞く。高齢者自身も「私は何々病の人」というのがアイデンティティになっているのだ。

 もちろん、疾病の中にはいくら「一過性」と考えようとしても、慢性的に症状が続いたり障害として固定化したりするものもある。そういう人に「自分は病気だということは忘れるように」と言っても、やや無理がある。

患者に「元気なあなた」のイメージ作りを

 それでも、少しでも病気であること、通院中であることを忘れ、「(ある程度は)健康な自分」というのを基本にして、どうしても不調の時や突発的に症状が出た時、どうしても必要な降圧剤などの薬がなくなった時に受診する、ということにする。

 こうやって考えを変えるだけでも「まずは病院に行かなければ」というライフスタイルから脱することが出来、結果的には医療費抑制にも繋がっていくのではないか。

 どうだろう。内科や整形外科の先生達も、「あなたには確かに高血圧症はありますが、基本は自分を元気な人と考えていいですよ」「腰痛症で大変ですが、他の部分は健康ですから、そっちをメインに考えましょう」と、高齢者達に“元気なあなた”というイメージを与えることに力を貸していただけないだろうか。

 批判も含めて意見などがあったら、ぜひ寄せてほしい。

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