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第139回 医療現場に根強い「オンライン診療」への慎重論

第139回 医療現場に根強い「オンライン診療」への慎重論

 2018年度の診療報酬改定で、鳴り物入りで公的医療保険の導入が決まった「オンライン診療」。しかし、同診療への保険適用を申請した医療機関は全体の1%程度にとどまり、厚生労働省は困惑を隠せない。

 20年度の診療報酬改定では規制緩和による適用拡大も検討の俎上に載せる考えだが、医療現場には根強い慎重論がある。

 タブレット端末、スマートフォンのカメラや通信技術を使い、遠隔地の患者を診察するのがオンライン診療だ。過疎地での医師不足解消策などとして、18年度診療報酬改定で初導入された。医療機関が再診に利用した場合、月に700円、患者を指導した場合は1000円の身入りとなる。

 ただし、対象となるのは患者の個人情報流出の防止など一定の基準を満たし、厚労省に届け出をした医療機関のみ。今年3月時点で1187施設(全体の約1%)と、発足当初からほとんど増えていない。

 オンライン診療は「対面診療を補完する」という位置付けである。従って、「初診は対面」「初診から6カ月は同一医師が毎月対面診療を実施」「緊急時は概ね30分以内に対面診療可能な体制」などの要件が課されており、医師、患者双方の負担軽減に繋がっていないことが普及しない原因とされる。

 また、保険算定できる疾患が生活習慣病(糖尿病含む)など一部に限られている点も一因だ。

 一方で、NTTドコモや無料通信アプリのLINEなどの情報技術・通信関連企業は「商機」と捉えて、相次いでオンライン診療に参入してきている。

 経団連や政府の規制改革推進会議は、「治療と職業の両立支援」などを理由に対象疾病の拡大を要望。これを受け、厚労省の検討会は、初診時に対面診療をしなくてもいい治療の増加や、在宅診療の場合に同一医師の規定を外すことなどを検討課題に据えている。

 9月11日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会。普及しないオンライン診療に対し、健康保険組合連合会の幸野庄司理事は「(今の制度への)評価は時期尚早」としつつ、「普及を阻んでいる理由を検証すべき」と発言した。

 ただ、日本医師会は中医協で、「利便性」ではなく、「対面診療との同等性の立証」を重視するよう指摘している。現場の医師からも「スマホを使えない高齢者には無理」との批判が出ている。

 神奈川県保険医協会は、届け出をした医療機関の6割にオンライン診療の実績がない、などの調査結果をまとめている。

 川崎市で開業している桑島政臣・同協会政策部長は「『対面診療の補完』をなし崩し解釈をし、例外利用を『日常利用』へ変転させている」「医学的蓄積もないままの緩和は本末転倒」との見解を示している。

 とはいえ、患者の利便性を重視し緩和を求める医師もいる。国家戦略特区ではオンラインによる服薬指導も始まった。

 自民党の作業グループは対象疾患の拡大などを求めており、厚労省幹部は「20年度診療報酬改定の焦点の1つになる。賛否両論あり、胃が痛い問題だ」と話している。

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