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未来の会

医師として政治の世界で存在感を発揮   ~文部科学分野、厚生労働分野で政策実現を目指す~

医師として政治の世界で存在感を発揮   ~文部科学分野、厚生労働分野で政策実現を目指す~
冨岡 勉(とみおか・つとむ)1948年福岡県生まれ。76年長崎大学医学部卒業。80年同大大学院修了(第一病理・医学博士)、同大第2外科入局。88年米ネブラスカ大学エプリー癌研究所留学(2年間)。96年長崎大医学部第2外科助教授。97年長崎大医療技術短期大学部教授。99年長崎県議。2005年衆院選で初当選(現在4期目)。13〜14年文部科学大臣政務官。14年自民党文部科学部会長。15年文部科学副大臣兼内閣府副大臣。17年衆院文部科学委員会委員長。18年衆院厚生労働委員会委員長。著書に『海のシルクロード ベトナムと日本に架ける今昔の夢』など。NPO法人長崎ベトナム友好協会理事長。

外科医として歩んできた医学の道から政治の世界に入り、既に20年になる。これまでは文部科学副大臣、衆議院文部科学委員会委員長など、文部科学行政に関係する役職が多かったが、2018年、衆議院厚生労働委員会委員長に就任した。この分野での医師としての経験を生かした活躍が期待される冨岡勉氏に、日本の医療・介護に関わる幅広い問題について語っていただいた。

——妊婦加算が凍結されることになりましたが。

冨岡 医学的に言えば、妊婦加算という考え方は正しいと思います。というのも、我々医師は妊娠初期にいろいろな薬を使った場合、問題が起きることがあるということをよく知っています。先天異常が生じることがあるし、それに近いような不都合が生じることもあります。だから、患者さんが妊婦だった場合には、慎重に診療に当たる必要があります。そういうことを徹底するためにも、加算は一つの方法だと思います。ところが、一般の方達の中には、妊婦に問題が起きやすいことをよくご存じない方もいます。それで、妊婦さんが医療を受ける時に余計に医療費を取られるのはおかしい、という方向の話だけになってしまったのでしょう。ただ、妊婦さんが医療行為を受けるといっても、コンタクトレンズの処方を受けるのにも妊婦加算が付いてしまうのはおかしいのでは、という話があります。これは素朴な疑問で、確かにおかしいと言わざるを得ません。

——医療の内容に応じて妊婦加算を付けるべき?

冨岡 そうでしょうね。これは加算を付けるべき、これは必要ない、というように決めていく。そういうことについて、慎重に審議されたのかなという疑念はあります。一概にいいとか悪いとかを決めるのではなく、もう一度差し戻すというのが妥当な方法ではないか、というのが現在の私の考えです。一つひとつについて細かく検討せず、妊婦ならみんな一律加算とやってしまったのが、齟齬が生じた原因ではないかと思います。

介護人材は親日国から受け入れる
——外国人労働者が今後増えていくわけですが、医療・介護の分野ではどうでしょうか。

冨岡 日本では現在のところ医師も看護師も不足していますが、今から10年間くらいが医療需要のピークですから、それ以降は余り始めることになって、大変な時代になると思います。従って、医療従事者を全て外国から入れる必要があるかといえば、その必要性は低いわけです。特に医師、歯科医師、薬剤師は全体数を増やすことより、偏在の是正を考えるべきです。数については、むしろ抑制に入るべきだろうと見ています。ただし、介護人材に関しては、諸外国から受け入れる必要があります。現在、日本には外国人が約260万人住んでいて、そのうちの半数以上が就労しています。今後、14の職種で外国人労働者を入れていくといわれていますが、医師や歯科医師などは基本的には入れなくてもいいと思います。むしろ数を減らしていくべき状況にあります。

——介護の人材は海外に頼る必要があるのですね。

冨岡 介護については明らかに足りていません。現在、約190万人が働いていますが、どんどん足りなくなってきています。介護人材を海外から受け入れることに関しては、母国に帰ってその仕事ができるような職種なので、うまくいくと思います。日本で介護の仕事に従事することで技能を身に付け、その技能を持って母国に帰れば、いずれ始まる少子高齢化時代に役立てられるはずです。時代の先兵となって日本で働いてもらうことで、その技能を母国のために生かすことができますから、非常に理にっています。こういったことをうまく進めるためには、まず親日国から始めるのがいいだろうと思います。

——親日国というと?

冨岡 親日国の定義はいくつかありますが、国民の80%以上が日本を好きだと答える、という定義があります。これに当てはまるのは、インドネシア、ベトナム、フィリピン、タイ、マレーシア、台湾の6カ国です。これらの国から来てもらうことが、介護人材の受け入れをスムーズに進めるための重要なポイントになると思います。

——先生の選挙区の長崎は、ベトナムと親交が深いそうでね。

冨岡 そう、ベトナムと長崎は400年以上も前から親交があります。朱印船貿易を行っていた長崎の貿易商人・荒木宗太郎は、ベトナムの王家の一つであったグエン家の王女と結婚し、アニオー姫を長崎に迎えているのです。当時は長崎から多くの貿易商人が海のシルクロードと呼ばれる東シナ海へと乗り出し、東南アジアの国々と盛んに交易していたわけです。ベトナムから日本に嫁いだアニオー姫は、長崎ではアニオーさんと呼ばれて親しまれたそうですが、日本が鎖国を始めたため、里帰りもできぬまま日本で亡くなります。そのお墓が長崎にあるんです。そういった歴史を持っていることも関係して、長崎とベトナムは深い親交で結ばれていて、今でもたくさんのベトナムの方達が長崎で働いています。私は長崎ベトナム友好協会の理事長を務めているんですよ。

医学部不正入試は情報の未開示が問題
——医学部不正入試事件は、どこに問題があったのでしょうか。

冨岡 不正があったとして名前を挙げられた大学が、ペナルティーを課せられるのは当然でしょう。受験生を同等に扱うということで募集しておきながら、同等に扱わずにでたらめをやっていたというのは許されません。問題はそこにあるわけです。同等に扱わないのであれば、最初からそう明記しておけばよかった。例えば地域枠などがまさにそうですが、これくらいの枠で、ある地域から採りますと明記してあれば、何のお咎めもないわけです。極端なことを言えば、東京女子医科大学は女子しか採りませんが、募集要項に最初からそう明記されているから問題になりません。全ての受験生を同等に扱わないのに、そういった情報が未開示だったことが問題にされているわけです。問題はそこだけだと思います。

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