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未来の会

「がんゲノム医療」に国を挙げて取り組む ~新しい時代を迎えたがん医療を推進するために~

「がんゲノム医療」に国を挙げて取り組む ~新しい時代を迎えたがん医療を推進するために~
中釡 斉(なかがま・ひとし)1956年鹿児島県生まれ。82年東京大学医学部卒業。同大学医学部附属病院内科医員。90年同大学医学部助手。91年米国マサチューセッツ工科大学がん研究センター研究員。95年以降国立がんセンター研究所発がん研究部室長、生化学部長、副所長、所長を歴任。2016年より現職。ヒト発がんの環境要因、及び遺伝的要因の解析とその分子機構に関する研究に従事してきた。分子腫瘍学、がんゲノム、環境発がんが専門。

がん医療は新しい時代を迎えようとしている。がんを臓器別に分類して治療してきた時代から、がんのゲノム情報を解析し、それに応じて一人ひとりに最適の治療薬を選択するゲノム医療の時代へと移行していくことになる。国立がん研究センターは、100余りの遺伝子を検査対象とした「NCCオンコパネル」を開発し、2019年度に日本初の薬事承認と保険収載を目指している。がんゲノム医療が大きく進みそうだ。

現在の日本のがん医療はどのような状況にあるのでしょうか。

中釡 国が定めた基本計画として、2017年から第3期がん対策推進基本計画が始まっていますが、そこに向こう6年間のがん医療の大きな方向性が示されています。三つの柱があり、一つ目は「がん予防」、二つ目は「がん医療の充実」、三つ目は「がんとの共生」となっています。そして、これらを支える基盤として「がん研究」「人材育成」「がん教育、普及啓発」がある、という構造になっています。基本計画にも書かれていますが、現在のがん医療は非常に高度化して複雑化しています。その大きな理由が、同じがん種であっても、一人ひとりの患者さんのがんの本態が異なっているためです。例えば同じ肺がんであっても、遺伝子の変異によって、効果的な治療薬が違ってきます。従って、最適の治療を行うためには、同じ肺がんであったとしても、どのような特徴があるのかを調べることが必要になってきたわけです。

ゲノム医療が必要になったのですね。

中釡 がんを調べると、変化しているゲノムは一人ひとり違います。そのため、より効果的で効率的な治療のためには、がんの患者さんの層別化が必要になります。ゲノムにどういった特徴があるかを調べ、層別化することが重要になっているのです。ゲノムだけではなくて、「オプジーボ」のような免疫チェックポイント阻害剤でも、効果がある人と、そうでない人がいるということが分かってきました。そこで、一人ひとりに対し、何が最適の治療であるかを調べながら治療を進めていく必要があります。そういう意味で、がん医療は複雑化し、高度化してきたと言えるでしょう。こうした医療を実現するために、第3期がん対策推進基本計画の骨格が作られているのです。2本目の柱の「がん医療の充実」の中には、「がんゲノム医療」という言葉も入っています。

遺伝子変異を調べて治療する時代へ

がん医療は新しい時代に入ったのですか。

中釡 これまではがんというと、胃がん、肺がん、前立腺がんというように、臓器別の分類になっていましたし、がん医療を提供する病院の診療科も臓器別の構造になっています。がん医療にゲノムが入ってきたことで、臓器横断的な視点が求められるようになってきました。そういう意味では確かに新しい時代になりつつあるわけで、それを現在の医療提供体制の中でどのように実現させていくのかは、大きなテーマだと言えます。当センターはそれを具体的に実施することで、一つのモデルとして提示していく必要があると思います。こうやるといいという仕組みを、国と連携しながら作り上げていくのです。例えば、ゲノム医療に関しては、C-CAT(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics=がんゲノム情報管理センター)を2018年6月に開設しました。がんのゲノム情報を集める仕組みの中で、C-CATが中心的な役割を果たし、これらの情報を活用してall Japanで今後の医療を変えていかなければいけません。そのようにして、新しいがん医療を全国に広めていく役割を担っていると思っています。

ゲノム医療の現状は?

中釡 肺がんでは2002年にEGFR阻害剤が世界に先駆けて承認され、治療に使われてきました。よく効く人とそうでない人がいたのですが、最初はその理由は分かっていませんでした。2004年になって、この薬は、がん細胞のEGFR遺伝子に変異がある場合によく効く、ということが明らかになりました。その後、EGFR以外にも、がんの発生や増殖に関係する遺伝子変異が見つかり、肺がんの治療では、ゲノムを調べ、ある変異があった場合に、それに対応する薬剤が使われるようになっています。このようにゲノムを調べ、その結果に適した治療薬を使うことで、これまでにない治療効果が期待できることがあります。これがゲノム医療です。肺がんで特に進んでいるのですが、現在は他のがんにも広がっています。

遺伝子パネル検査の保険収載を目指す

ゲノムを調べる遺伝子パネル検査とはどのようなものですか。

中釡 これまでは遺伝子変異の有無を一つひとつ調べていました。肺がんであれば、まずEGFRの変異を調べ、変異がなければ、次の遺伝子を調べるといった具合です。近年、遺伝子のDNAを高速で読み出せる装置「次世代シークエンサー」が登場し、多数の遺伝子変異を短時間で検出することが可能になっています。これを使用し、がんに関連する多数の遺伝子変異を調べるのがパネル検査です。

「NCC(National Cancer Center)オンコパネル」の現状は?

中釡 NCCオンコパネルは、当センターが開発したパネル検査で、114個の遺伝子について調べることができます。薬事承認を目指して、2018年4月から先進医療B(未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴う医療技術)として行われています。350例を上限に症例を集めることになっているのですが、順調に集まっています。予定より早く進んでいて、当センターの中央病院(東京・中央区)では既に登録終了になっているほどです。このパネル

検査については、2015年から本格的に有用性について調べていて、ある一定の割合で重要な情報が得られることを示してきました。それを先進医療という枠組みの中で実際に結果を出せるかどうか、ということです。薬事承認を得て、保険収載されることを目指していますが、有用性については自信を持っています。


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