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第17回【イギリス】オックスフォード大学

第17回【イギリス】オックスフォード大学

オックスフォードとオックスフォード大学
 オックスフォードは人口約15万人 (2011年)で、オックスフォード大学を中心とする大学都市である。オックスフォード大学の創立年は諸説あるが1167年が有力で、現存する大学としては世界で3番目に古く、英語圏では最古の大学である。また、ハーバード大学、スタンフォード大学、ケンブリッジ大学などと並び、各種の世界大学ランキングで常にトップレベルの優秀な大学として評価される世界有数の名門大学である。

 イギリス伝統のカレッジ制を特徴とする大学で、39のカレッジがある。カレッジ制の大学の運営は、学科(department) とカレッジ(college) が並列に行っている。生徒はカレッジに所属するために、大学への入学はカレッジに認められなければならず、授与される学位も学科での審査とカレッジの認証によって大学から与えられる。

 カレッジは学生を学科に送って講義を受けさせる一方で、3人以下の少人数制の個別指導や4〜15人程度の中規模のクラス を主催し、専門性が強くなると学科に委託する。医学部においても同様で、カレッジごとに医学部の学生がいることになる。

 デーヴィッド・キャメロン前首相、トニー・ブレア元首相、マーガレット・サッチャー元首相など26人のイギリス首相を輩出し、ケンブリッジ大学が科学に強いのに対し、オックスフォード大学は文科系に強いともいわれる。

 ただ街は、歴史を感じさせるが、あまりきれいではなかった。

AIの論文でも有名
 最近のオックスフォード大学の話題では、人工知能(AI)についての論文がある。マイケル・オズボーン準教授は、2014年に『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか』という論文を発表し、米国労働省が定めた702の職業をクリエイティビティ、社会性、知覚、細かい動きといった項目ごとに分析し、10年後の消滅率を仔細に試算した。その論文では、702の職業のうち47%が10〜20年後には機械によって代わられるとされたが、さらに野村総合研究所との共同研究で10年〜20年後に、今日本で働いている人の49%の職業が、機械や人工知能によって代替することが可能だとする分析結果を発表した。

オックスフォード大学医学部
 今回はNuffield Department of Clinical Medi-cine(ナフィールド医学部:NDM)を訪問した。医学部は1学年に160人と英国では最小の規模で、カレッジ制をとっているので、3年間は各カレッジで他の学問の専攻者と交じり合いながら学ぶ仕組みである。6年間であるのは、最初の3年間で基礎的な部分を研究も含め充実させているからという。
 160人のうち30人は理科系の他学部の卒業生になる。ただし、医療関連ではこのカレッジに入ることができるのは医学部のみ(看護や薬学は別)なので、チーム医療の素地を養成するには至っていない。

 英国の医学部は日本と異なり5年制だが、ここは6年制である。教育年限が異なったりするのも、英国の場合には国が決めた国家試験がないからである。従って、大学はMBBS(Bachelor of Medicine, Bachelor of surgery)という称号は付与するが、卒業後、1年間のインターンを経てGMC(general medical council)への登録で初めて医師として認められる仕組みである。GMCに登録後は1年間(現在は2年間)の基礎的な研修を経て、専門の勉強を行っていく。

 大学病院に雇用されている医師と国民保健サービス(NHS)に雇用されている医師の両方が医学部付属病院には存在する。付属病院は四つあり、その一つがナフィールドである。他の二つの大学病院(ジョンラドクリフとチャーチル)もオックスフォードにある。専門科目が分かれ、PFI(公共施設の整備に民間の資金や技術力、経営能力を活用する手法)で造られており、総計1800床を有する。

バイオバンク
 オックスフォード大学も取り組んでいるデータベース構想がバイオバンクである。バイオバンクでは、同意の下で提供いただく生体試料(血液など)を診療情報と合わせてできるだけ多く集積し、「匿名化」などの作業を施した上で研究用に保管している。

 英国のバイオバンク構想は06年から始まっており、10年7月までに40〜69歳の50万人の男女を登録して始められたプロジェクトである。画像診断なども取り入れられており、今後30年間にわたり行われるが、がん、血管系の疾患、糖尿病、骨粗しょう症、うつ病、認知症などの疾患が対象である。NHSは患者をIDで管理しているので、追跡調査が容易である。無料とはいえ、任意の登録制のものなので、健康意識が高い人の登録が多く、バイアスがかかる可能性は指摘されているが、この規模の追跡調査は世界でも行われていない。ただ、検診が制度化されていない英国では2%くらいの人に重篤な疾患の可能性が見つかり、そのうちの3分の2に実際の疾患が見つかったという。

参考文献
http://www.ox.ac.uk/
http://www.ukbiobank.ac.uk/

 

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